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 食事をはじめてすぐ、森の奥で魔物の異様な雄叫びが聞こえた。瘴気により凶暴化した魔物が、こちらに来るかもと私は杖を取り出し。シシは食事の手を止めて、雄叫びが聞こえた方角をしばらく見ていた。


「パパ、ママ?」

「チェル、大丈夫よ」


「ああ、ママの言う通り大丈夫……いまの雄叫びは瘴気に苦しむ魔物の声だ。ここに力の強いボクがいるから、魔物は来ない」


 そう話したシシは再び、魔物が雄叫びを上げた森の方角を見ている。


(さいきん、森の瘴気が濃くなった事をシシも気付いている。フェンリルのシシは瘴気耐性があり、私は浄化魔法が使えチェルを守れるけど……他の人たちは? ……って、私がここで考えてもなにもできないか)


「シシがいてくれて心強いわ。今日も美味しいお肉をありがとう」

 

「どういたしまして。ところでアーシャ、シシカバの街にはいつ頃行くんだい?」


 シシカバの街?


「素材売りと薬の納品かぁ。そうね。シシがとってきてくれた素材もけっこう集まったし、私も薬とポーションを作ったから……」

 

「だったら、ママ、明日行こう!」

「おお明日か、いいな。アーシャ、明日街に行かないか?」


 あらあら、さっきお風呂場で話し合わせをしたのかな、2人の瞳が輝いている。

 

「フフ、シシとチェルはシシカバにある、ローレルの苺のケーキが食べたいのね?」


「「うっ」」


 当たったらしく、似たもの親子は両手をあげ同じポーズで驚いた。カサロの森近くの街にあるローレルのケーキ屋、そこで売られている、クリームタップリの苺のケーキは2人の大好物だ。


(前に、街へ行ったのは一ヶ月前だから)


「わかった。明日、みんなでシシカバの街に行きましょう」

 

「ヤッタァ! 苺のケーキ!」

「パパ、ボクも苺のケーキ大好き」


「ママも好きよ」


 

 翌日、シシカバの街に向かうというより、私が魔法で街の近くまで転移する。人型となったシシと、チェルは襟に花の刺繍をしたお揃いのシャツと、スラックスに着替えた。私も2人と同じ刺繍をしたワンピースに着替える。


「ママ、準備できたよ」

「アーシャ、どこか変なところはないか?」

「あら、2人ともステキよ。あとコレは私からプレゼント」


 お揃いの革製のカバンを2人に渡す。このカバンは私が空間魔法をかけ家族の刺繍を施した、中にたくさんの物をしまえるマジックバッグだ。


「パパ見て! ここにボクとパパ、ママの刺繍がしてある、可愛いね」

 

「おおこれは、可愛いな」

「ママのバッグは?」

「ママも、みんなとお揃いよ」


 チェルは家族お揃いのカバンを見て、花が咲いたように笑った。そのカバンに作った薬とポーション、シシが集めた素材を入れて、私たちはシシカバの街へ出掛けたのだった。

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