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班わけと新しい友達



 リオス様の肩に乗っている、赤い火炎トカゲのヴェルメリオが、金色の瞳をくりくりさせて、去っていくリオス様の背中から私たちを見ている。

 聖炎の聖獣ヴェルメリオ。小柄だけれど、あらゆる邪悪を払う激しい炎を燃え上がらせることのできる、とても強い聖獣である。


「……はぁ、素敵でした。リオス様、素敵です、リオス様。年齢を重ねるごとにますます精悍さが増していらっしゃいます。素敵。見てください、シドニーさん。ヴェルメリオも最高に可愛い……!」


「火炎トカゲは美味しそうだよね」


「お、美味しそう……」


「ミルジアナ辺境伯領では、森林大蜥蜴を食べるのだよ。知らなかった? 私もよく、森林蜥蜴を狩りにいく。ね、しらたま」


 シドニーさんの隣に座っている猟犬の聖獣しらたまが、小さく首を縦に振った。

 とても可愛い。


『……ティファナ。君には無理だ。とても期待できない。シドニーに相談することを提案するよ』


 もふまるが私の肩に乗りながら、私の頬をぺちぺち叩いて言った。

 私はもふまるの声を聞こえないふりをした。

 諦めるにはまだ早いと思うの。今日はまだ始まったばかりなのだから。


 私はシドニーさんと一緒に学園の校舎へと向かった。

 女子寮と一緒でやや古めかしい外観の、古城のような校舎である。

 今日は半日のオリエンテーションで、いくつかの班に分かれて上級生の案内で学園内を案内してもらうことになっている。


 班分けは、四人一組。

 私とシドニーさんの他に、商家の出身であるリリムさん、有名服飾家の一族の出身であるエミリオさんが一緒になった。

 担任の眼鏡をかけた少し怖そうな男性教師ストラウス先生が適当に班訳をくじ引きで決めた結果なので、リリムさんともエミリオさんともはじめましてである。


「こんにちは、ティファナ様、シドニー様、エミリオさん、よろしくお願いします……」


 リリムさんは甘栗色のふわふわの髪とアプリコット色の瞳をした可愛らしい女性だ。

 おずおずと挨拶をしてくれる様は、小動物を思わせる。

 もしかして、私のことが怖いのではないかしらと不安に思いながら、私は怖くないという気持ちを込めて笑顔を浮かべた。

 私は人見知りというわけでもなければ社交的というわけでもない、中の中をいくど真ん中の人間なので、普通に挨拶もできるし気を遣って微笑むこともできる。

 リオス様がいない時だけに限ったことではあるのだけれど。

 リオス様がいるとだめだ。緊張のあまり表情筋が死ぬ。

 なんとなく今日は大丈夫かなって、根拠のない自信があったのだけれど、朝ももれなく死んでいたので、そんなことはなかった。


「はじめまして、ティファナ様、シドニー様、リリムちゃん。あたしのことは、エミリーって呼んでね」


 長身の美形ではあるものの、群青色からグラデーションのように毛先に向かってピンク色になっている、びっくりするほど派手な髪色をした極楽鳥のような男性であるエミリオさんが、片目を瞑りながら言った。

 エミリオさん。

 エミリーさん。

 エミリオさんは男性に見えるけれど、本当は女性なのかもしれないわね。


「エミリー、リリム。私のことは、シドニーと。学園内では身分に差はないという決まりだし、私は堅苦しいのは苦手なんだ」


 シドニーさんが爽やかに言った。

 私もやや慌てて、その後を続ける。


「わ、私のこともティファナと! 私も、ティファナちゃんと呼んでもらいたいです、エミリーさん……!」


 そのほうがお友達という感じがする。


「オーケイ、それじゃティファナちゃんに、シドニーちゃんね」


「……私も、いいんですか?」


 リリムさんが遠慮がちに尋ねてきたので、私とシドニーさんは大きく頷いた。

 私は学園に入るのをずっと楽しみにしていたのだ。

 勿論、リオス様のおそばで合法的にリオス様を観察できるというのは一番の理由だけれど。

 でも、同い年のお友達というのは公爵家で暮らしているときはシドニーさんぐらいしかいなかった。

 晩餐会などでは貴族の方々とお話しすることはあるけれど、あまりお友達という感じはしなかったし。

 私のそばには大抵お兄様とシドニーさんがいて、他の方々と語り合うということもあまりなかった。


 王国の滅亡は勿論気になるけれど、できればお友達と楽しく学園生活を送りたい。

 王都のアイスクリーム屋さんとかで、アイスクリームを食べたりしてみたい。

 お祭りとかにも行ったり、文化祭を楽しんだり、体育祭を楽しんだりしてみたい。


 これらはお母様やお兄様から聞いたことだ。

 お兄様も、リオス様と同じ歳の三年生。学園のことは色々と教えてもらっている。


「こんにちは、一年生。今日は僕と殿下が、君たちを案内するよ」


 教室の中で班わけされた人たちと共にご挨拶を済ませていたら、明るい声が聞こえた。

 私たちの目の前には、今まさに思い出していた私のお兄様と、リオス殿下が立っていた。




お読みくださりありがとうございました!

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