トラムキリア
翌日は真の意味での完全休養日、朝寝をして、ゆっくりブランチを食べ、森林浴をする。アカゲラだろうか、チュンチュンという鳴き声をとドラミング、木を突く音が聞こえてくる。
今日は、姫、ドロシー、オレで三人行動だ。エリナはジャンに付き合ってもらって、弓の練習をしているらしい。いつの間にやら、仲良くなった二人? なのかな。
そしてその翌日、いよいよドワーフ族が住むナルシュリア共和国、その首都トラムキリアに向け2号発進!
ドワーフ族、リムゲイムがそうなのだが、人族より身長が低めで男は濃い髭を蓄えているのが常だそうだ。パッと見、小さめの人という感じで、RPGなどの基本設定と同じように神が創った? いや、コレ、因果関係が逆じゃない?
RPGって人がゼロから思いついたのではなく、J・R・R・トールキンが神からの啓示を受けて指輪物語を創作し、そこから神の誘導で発展したと考えられるよな? 前、言ったっけ??
ああ、話が逸れた。。。って、オレ、司馬遼太郎じゃないんだから。
いずれにせよ、ナルシュリアは高い工業技術、魔道具技術という表現の方がいいだろうか、による工業と周辺にある鉱山を利用した鉱業、二つの「こうぎょう」で成り立っている国だ。
すなわち、ドワーフは職人か鉱夫であるといっても過言ではない。ドワーフ族は豊かな経済力を持つ故か、五種族の中ではもっとも民主的で、君主を置かず国民投票で元首を選ぶ共和国制を敷いている。
オレたちは五度ほど飛び石ワープをして、首都トラムキリア近郊に着陸した。ここからは例によってドロシーに交代、街に向けて2号を進めた。
多数の煙突が立ち並ぶ工業都市を想像していたのだが、トラムキリアは、存外、普通の大都市だった。城壁などはなく碁盤の目状に整備され、ゴシック風の建物が整然と並んでいる。やはりここは富める国なのだろう、一つ一つの建造物がとても立派だ。
道路も綺麗に舗装されている。おそらく何かの魔法だろう、正確過ぎる正方形にカットされた敷石がびっしりと敷き詰められたメインストリートの幅員は四車線、馬車四台分もの広さがある。
左右には歩道も整備され、街路樹が規則正しく植わっている。一際、目を引くのはボダイジュの巨木だ。
トラムキリアは大きな森を切り開いて開発された街なのだそうで、その名残ということかもしれない。他にも銀杏、ポプラ、アカシアと広葉樹が多く、秋の紅葉が美しい。
こちら、馬車は右側通行、中央分離帯に近い車線は、高速馬車用となっているようだ。これもドワーフの技術力ということだろう、人族の街ではあまりお目にかからない、魔石動力で動く馬なし馬車も多数走っている。
いやぁ〜 オレたち、ここじゃ目立たなくていいな。
「ドロシー、この道幅なら、少しばかり飛ばしても問題ないようだね」
「うん、なんだか、気持ちいいね」
ドロシーは時速四十キロくらいまで加速した、馬車の窓を少し開けると秋の風が心地よい。そうなんだよな! 排ガスとは無縁の魔石エネルギー、二酸化炭素だって出さないし、究極のエコエンジンってことになる。
歩道を行く人を見るとドワーフ族に混じって、人族、エルフ、獣人族などなど、多種多様な種族が歩いている。オープンで民主的なドワーフ族、移民の受け入れも積極的に行なっているようだ。
ただ、この世界では、移民といっても、前世のように難民や不法移民により、受け入れ国にデメリットが生じるなどということない。総人口が五千万しかいないわけで、問題となるほどの数が来てしまうには至らないということだ。
そもそも、この世界、魔法文明により、ドワーフはもちろん、全種族に「余裕」がある。
経済力>人口
だから、比較的、平和なのだ。多分、これは、神による人口調整じゃないか?
思いを巡らせ周りを見てなかったし、ドロシーも飛ばし過ぎだ、街をゆっくり見学する間もなく、2号は街の中央付近にある冒険者ギルドに到着した。
剣と弓がクロスしたデザインの青い看板は全世界共通らしいが、こちらの建物はネルヴェに比べ随分と立派だ。三階建ビル一階の黒っぽいオーク材製ドアを開けて中に入る。
さすが大都市、規模が違う、まさにゲーム世界まんまが広がっていた。まんまじゃないな、一般的なネトゲのギルドより遥かに大きいと思う。
奥に十を超える受付カウンターが並んでおり、掲示板には数々のクエストが所狭しと張り出されている。
右から三番目の空いていた受付を選び、リムゲイムの紹介状を姫が代表して渡した。
常に人目を引く人外の美麗、美し過ぎるエルフに付き従うは、正体不明感が半端ないメイド服姿でシルバーブロンドに赤目の女、多分、こいつ人外。さらに、黒髪の子供と見えるが、強烈な力のオーラを発散している、ミニチャイナドレスの少女、多分、こいつも人外。
まともな人族はジャンとエリナだけというパーティなわけで、ドワーフ族の受付嬢は、最初、胡乱な顔をしていたが、紹介状を見た瞬間、態度が一変した。
「こ、これは、あなた様方こそが、噂に高いドラゴンスレイヤーパーティなのですね!」
その二つ名、国境を超えてるわけ? 受付嬢が大きな声を出したものだから、ギルド内の冒険者が一斉にこっちを向いた。
ああ、この表情、敬意というより畏怖、「コイツらヤベーヤツ」って感じかな? 声を掛けてくる者はおらず、皆、顔を見合わせ、ヒソヒソ声で話し合っている。




