特命ミッション
食事を終えたオレたち。
「では、本当にありがとうございました」
ハーピィの皆に見送られながら、オレは一人ずつパーティメンバーを2号のところにワープさせた。
「さって、帰りますか?」
ステラの宮殿に戻ったら、皆、シャワーを浴びて身支度するということで、姫とオレ二人で部屋に入ったのだが、アレ?
学園長、ギルマス、ルルの父、王様まで加わって談笑しているではないか!
「このところの変事、私も聞いておきたいからな。夕食の時に詳しく教えてもらうが、しばらくゆっくりしてきなさい」
まぁ、なんていうかさぁ〜 ワープで物理的な距離が無に等しくなるというのは、移動時間がなくなりタイパがいい。物事がとても効率的に進む、反面、なんだか忙しない。
「姫、今夜のミーティングが終わったら、一日でいいので休暇をとりましょう」
「是非、そうしましょう。クリティも感じてた? 何か追い立てられているようだものね」
《追い立てているの、実は神様、かな?》
《確かに、トントン拍子に物事が進むのはよいことじゃが、神がここまで急ぐ理由が見えん。少々不自然じゃのぉ〜 》
《嫌な予感?》
《うむ》
ということがあって、ベッドルームで姫とお茶を飲んでいたら、すぐに日暮れ時となった。隣の会議室には夕食の準備も整い、皆が集まって来たようだ。
フルシュ王・アグスチヌス、メディス学園長・アミーナ、ネルヴェ冒険者ギルドマスター・リムゲイム、そして、オレたちパーティの五人、これがフルメンバー、Board meetingということかな。
夕食はスズキ科淡水魚、ペルシュのムニエル、基本ベジタリアンのエルフも川魚は食べるようだ。淡白な味わいの白身魚で、付け合わせはラクレット、茹でたジャガイモの上に溶かしたチーズをかけて食す。パン、スープ、サラダはいつものヤツかな。
「僭越ながら、私から、いいでしょうか?」
まず、リムゲイムが口火を切った。
「ルルメリア姫様には昇格していただきたく思います。みなさんのお力からすれば、シルバーというのは早くも不自然になってきました。ひとまず、姫に代表してプラチナクラスになってもらおうと思います」
「え! そんな、私なんかまだ駆け出しですし。て、ああ、クリティの隠れ蓑ということかしら? じゃじゃ馬姫が権力で上位クラスにお手盛り昇進、と周りに思わせるにはいいかもね」
「確かにクリティさんの力は腕自慢などという域を遥かに超え、一国の軍をも殲滅する力をお持ちです。明かしてしまえば、国家同士の陰謀に巻き込まれるやも知れません。目立つのは避けるべきだとは思います。ですが」
オレを見て、すまなさそうな顔をしたギルマスは、姫を真っ直ぐに見て、こう言った。
「姫様については、むしろ逆です。この認識票は姫君がただのお遊びで冒険者になったのではない、と知らしめてくれるでしょう。高難易度のクエストを堂々と受注できる、パーティ全体の権威、と考えていただきたく思います」
「リムゲイムさんが、いろいろ便宜を図ってくれる、建前も立つと」
「いやいや、クリティさん鋭い。偉そうな事をいいましたが、ギルド内もいろいろありまして」
「ま、このリムゲイム、さんと言うべきでしょうか、私よりずっと年上ですから……。長い付き合いですが、ギルド内の権力争いに嫌気がさして……」
「アミーナ殿、そのお話は、ちょっと……」
「いいではないですか。みなさん、ギルドの内情も知っておいた方がよいと思いますよ」
まぁ、旧地球の日本を知るオレには特段の驚きもないが、冒険者ギルドのように、国家に並び立つ巨大な組織ともなれば、どうしても官僚化が進んでしまう。
本来あるべきギルドの使命など、どこかに置き去りになって、つまらぬ派閥の論理が幅を利かせてくる、ということだ。
冒険者としての実績は十分なリムゲイム、世界ギルド代表、会社の言い方だと代表取締役、あるいは、CEOの地位も狙える立場にあったようだが、ドロドロの権力争いを嫌い、敢えて片田舎のギルドマスターを志願したのだという。
とはいえ、とても有能な彼、フルシュ王、アミーナ学園長と連携し、「宝珠盗難事件解決と世界異変への対応」を全世界冒険者ギルドからの特命ミッションとし、オレたちのパーティが受注した、という建前を、ギルド上層部に捩じ込んだらしい。
なので、姫の昇格は、全世界的ミッションを受注するに相応しい「権威あるパーティ」という体裁を、後付けで整えたってことになるようだ。
《なぁ、ディア、これ、神の深謀遠慮なんじゃないか?》
《うん?》
《オレたちが、「パーティとして」盗難事件解決や世界異変の対応をする、すなわち、本件は姫からの命令ではなく、オレを含むメンバーに与えらたミッションである、ってことになるよな》
《なるほど! このような「建前」ならとても有用じゃ、確かに、姫がなんらかの「特別オプション」を付与しなければ、彼女の天寿をいただく必要はあるまい》
《ハーピィの件も、学園長からの「依頼」だもんな》
《うむ、神、いけすかないヤツではあるが、心配りは褒めてやってもよさそうじゃのぉ〜》
「ま、ま、私の話はこれくらいにして、このところの魔獣の異変、人族の宝珠が奪われ世界のバランスが崩れた、ということには違いありますまい」
長過ぎる解説に気を使ったのか、ギルマスは早口で話題を変えた。




