しばしの休暇
なんとなく、場の雰囲気を察知したのだろう。姫がフォローした。
「ジャン、分かっていると思うけど、レベルなんて、その人のほんの一部の力しか測定できないのよ」
《アレ? レベルがいい加減だって話、姫にしたっけ?》
《自ら気づいておったのじゃろう》
「ああ、それは分かるっす、アーチャーの命中率を的確に表すステータスなんて、ないですものね」
ま、恋の駆け引きかどうかは分からないけど、ジャンは笑顔で大人の模範解答をした。
「ありがと、ジャン」
「アハハ」
「それでは、みなさん、暗くなる前に魔石を拾って帰りますか?」
実のところ、このクエストは魔石拾いが一番大変で、倒すより時間がかかった。魔獣の一部は逃げたが、全部で四百個以上はあって草の間に埋もれていたりする。
ボスの魔石がレアだといいなと思ったが、残念ながら一個大きのがあっただけだった。なんとか暗くなる前に回収し終えたオレたちは、まず2号で王宮へ。続いてオレ一人で魔石を持って冒険者ギルドに向かった。
「おおお! 見事、倒されましたか! みなさん、お怪我などありませんでした?」
あ゛この言い方、かなり危ないって知ってたな。学園長もそうだが、まったく、「大人」ってヤツは。
「はい、大丈夫でしたよ。では魔石を」
「お疲れ様でした。今回の報酬、賞金、魔石買取代金、一人当たり金貨十二枚をそれぞれの口座に振り込んでおきます」
「へぇー かなり高額な報酬ですねぇ」
「いやいや、あの街道の経済的価値からすれば、全然、安いですよ。スポンサーのドルトニア王、ケチですから」
ああ、まった、あの禿げか! 確かになぁ、賠償金もケチ臭かったし、いかにもぉ〜 って感じ? まったく、毎度毎度、オレの神経を逆撫でしてくれるヤツだ。
「あっそうだ、失礼しました。朝、渡そうと思って失念しておりました。こちら、みなさんの分のシルバー認識票です」
「ありがとうございます。帰って、みんなに配って来ますね」
「はい! では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「あ! お待ちください。もう一つありました。いやいや、私も歳ですかな、物忘れが多くて困ります」
「なんですか?」
「ひとまず、懸案となっていた高難易度クエストは、これでおしまい。次のが出てくるまで、しばらく休暇をとられてはいかがですか?」
「あ、あのぉ〜 私たち、高難易度クエスト専門でやっているのではないですよ」
「ま、そう仰らず。期待しております故」
「では、改めまして、おやすみなさい」「おやすみなさい」
もう暗くなっているが、夕食には間に合うだろう。オレは新しい認識票を持って、姫のベッドルームにワープした。
「俺、冒険者を始めて、まだ三年ですが、シルバーってねぇ」
「なに、ジャン、私がいきなり、とか文句あるわけ?」
「まぁ、まぁ、悪かったよ、エリナの初期装備が、あまりに可愛いかったからさ」
《ほほー、やりおるのぉ〜 ジャン》
《って、なに、なに、ディア、なんで、そんなに恋のディプロマシーに興味あるわけ? ちゃんとした理由を言え! 素粒子論は聞き飽きた》
《ま、その……、ポッ❤︎》
《なんだよ、そのラブコメの乙女ヒロインみたいな反応わぁ〜 誤魔化されんぞ》
《うう、まぁ、主様との融合が進んだということかのぉ》
なんて、ディアと話していると、お二人はさらに……。
「そんなことより、私の実力、認めてくれたのかしら?」
「まぁな、合格だ」
「って、お二人、なんだか、いい雰囲気ですね」
「姫!!」
「お姉ちゃん、ドロシー、意味分かんない」
「コラ! ドロシー、子供らしく、と、カマトトとは別だからね」
ああ、なんか、いいな、仲間って、姫も楽しそうで何よりだ。ってことは……。あああ、また、ついついなぁ〜
《貧乏性め》
《分かっとるわ!》
「ギルマスより伝言です。しばらく目ぼしいクエストはないので『休んでください』とのこと。エリナも来たばかりですし、こちらの環境に慣れてもらう必要がありますね」
「じゃ、三日ほど休暇ということにしましょう。しばらく、森林浴でも楽しんでくださいな」
「ネルヴェに用のある人は、遠慮なく私に言ってくださいね」
で、しばらくお休み指令が姫から出たわけだが……。夕食を終えてオレは姫と二人、当然のごとくキスが来た。
「ああ、気を失う前に、ちょっとだけ」
なんか、オレ、女の子の仕草が板に付いて来た? 今、誘うような上目遣いをしている気がするんだが、まぁ、いいか。
「ルル姫、今、幸せですか?」
「何を突然、ああー、分かった、何となく……。もちろんよ、でも、私、クリティと一緒なら、なんだっていいわ」
「ありがとうございます」
「嫌な予感があるってこと?」
「はい、また、何か『動き』があるような予感がするのです」
「フラグってヤツでしょ? 本当、心配性なんだから、クリティは。でも、アレ? もしかして、もしかして、今夜、それを忘れさせて欲しいって、おねだりなのかな?」
「え!」
「当然、お誘いには応じるわよ。明日の朝には、全く記憶がないくらいに、して、あ・げ・る❤︎」




