森狼
ギルマスの解説によると、問題の魔獣は森狼と呼び習わされおり、狼に一本角を付けたような姿だが、一般の狼よりも小ぶりで中型犬くらいのサイズだ。
普段は森のネズミやウサギを食しているが、なぜか凶暴化して集団で荷馬車隊を襲うようになったらしい。
「ボスが一匹いるようで、随分と統率のとれた行動をするのが、とても厄介なのです」
討伐のため、何度か軍隊も出動しているようなのだが、ボスが聡いということだろう、軍の接近を事前に察知して森の奥に隠れてしまうらしい。
「少人数の冒険者で行って、敢えて襲撃を受け、倒すしかないと?」
「です」
「ボスには何か目印があるんっすか?」
おおお、ボス担当は任せろ! って気合いかな? ジャン、やる気満々だ。
「白い毛並みで、一際大きいですから、すぐ分かると思います。ま、ボスを倒してしまえば、あとは烏合の衆、片っ端から蹴散らせばよいかと」
「って、あのーー、烏合の衆さん、何匹くらい、いらっしゃるのでしょか?」
「だんだん増えておりますが、現段階で、五百匹ほど」
「大丈夫です! そこは、アーチャーにお任せを」
「私も、久々に、ニードルを使うことになるかしら?」
あ、姫のレイピア、そういう名前だったのね。確かに、針のように細いけど。
「では、リムゲイムさんをギルドに送ったら、早々、出発しましょう!」
さって、行くぞ! 国際救助隊! って、まんまの設定になってきたな。
オレはギルマスを送った後、みんなが準備してくれていた2号の御者台に上がった。な! 馬車ってだけじゃ味気ないだろ? こう命名したんだ。ついでに、車体をモスグリーンに塗り替えてもらうか? いや、あの色、ちょっとダサイな。
モルド街道は初めて行く場所なので飛び石ワープだったが、昼前には到着できた。用意してきたサンドイッチを早めの昼食にいただいて、ナルシュリア方向に街道をハーフ(約1時時間)ほど2号で進む。
「あっ、引っ掛かったかな?」
「OK!!」
全員、2号のドアを開け、得物を抱えて飛び出して行く、その機敏な動きは対テロ特殊部隊のようだ。いいねぇ〜 ドロシーは速攻魔法を唱え、傀儡、シャドーナイトを人サイズにした。
「ジャンとシャドーナイトでボスを狙い、残りのメンバーは降りかかる火の粉を払う感じで」
き、キタ━(゜∀゜)━! いや、賢いな、このボス、群れをグループ分けして、四方向から囲まれたみたいだ。お、左の森の奥に、チラと白い影が見える。
「ジャン!」「了解」
ジャンが森に飛び込み、シャドーナイトがこれを追う。と、同時に、森狼たち、残りの四人に襲いかかって来た。
「前と左の二グループはエリナと姫で、後ろと右は私……」
「大丈夫! 傀儡を操作しながらでも、戦えるよ!」
マルチコアだと! す、すごいな、ドロシー、ってか、姫も回復しながら、レイピア振るってし。でも、やっぱり、こういう戦闘では、エリナの弓が絶大な威力を発揮する。
ちなみに、魔法の箙は、魔石の力で三本ずつ矢が供給される仕組みで、魔石の魔力が尽きるまで千本ほどの矢を射ることができる。エリナは同時に三本ずつ、迫り来る森狼にヘッドショットを決めている。
前方から左、百八十度をお願いしたつもりだったが、二百七十度分くらいの敵を殲滅しているようだ。
「ドロシーって、拳術の才も大したものだね」
「多分これ、オーガの力かな。昔からパンチには自信があったのだけど、強すぎて手を骨折しちゃうの。お姉ちゃんに貰ったグローブは、すごくありがたい」
と喋りながら、ドロシーは右フックを飛びかかってくる森狼にお見舞いした。
キャン!
「ねじり込むように打つべし」いわゆるコークスクリュー・ブローは、見事に魔獣の頭蓋骨を砕いだようだ。犬のような悲鳴を上げて森狼は絶命した。
そうか、ドロシー、この間の喧嘩で足を使ったのは、殺さないよう手加減したってことか! さすがだ。
オレは、相変わらずミョルニルハンマー(改)、軽く森狼さんの脳天を砕いていく。加速モードを使いつつ、三百六十度でもカバーするつもりだったが、そんな心配は不要だったようだ。
と、突然、森狼の群れの動きに変化が生じた。襲いかかってくるのは同じだが、動きに統率性がなくなってきている。ジャンがボスを片付けたのだろう。
「ジャン、見事、ボスを串刺しにしたみたい」
「よっし! 残りを掃討しちゃいましょう!」
なんて、気楽に言うけど、数が多い、多い、、、、、全部片付けるのに、ハーフ(約1時間)も掛かってしまった。
「ふぅ」
「いい汗、かきましたね」
「ジャン、私の腕前、見ていたでしょ? ボス討伐に夢中だったなんて、言い訳なしですわ」
「はい、はい、分かりましたよ、お嬢様」
「もぅ、なんだか引っかかる言種ね!」
いまひとつ、ジャンの返答に引っ掛かりを感じるエリナのようだが……。




