修学キャンプ
数々のイベントや事件も、オレたち、とても濃厚な学園生活を送れていると思う。だが季節は巡る、冬が去り春が来た。学園の庭に植えられた、山桜は、今、満開となっている。
ちなみに、こちらの桜にソメイヨシノっぽいものはない。ピンク色の花で開花後は大きな桜桃が実る品種のみだ。日本のサクラ、先史時代の八千年の間に絶滅したんだろうな。
という話はさておき、夏になれば、オレたちは二年の全課程を終え、この学園を卒業する。で、この学校、修学旅行はないが、実技実習を兼ねた卒業キャンプというのものがある。
学園が所有する近隣の森にあるバンガローに一泊してくるだけなのだが、森には魔獣がいる。もちろん、魔獣といっても、それほど凶悪なものはおらず、武に優れた職員が同行、いざというときの備えもある。
オレたちの学年は五十名いるが、これを十組の班に分けてからの肝試しスタイル、クオーターおきにスタートして、徒歩2フルタイム(約4時間)のバンガローを目指す。
仲の良い者同士が集まるような班編成で、オレ、姫、エリナは同じ班になった。ああ、あの、アードルフ君、別の班で助かったよ。
学園の森は山岳に続く四方四キロメートルくらいの大きさがある。主に広葉樹、ブナ中心の森林だが、この地方に春を告げる花、ミモザも混じり、黄色い花を咲かせていた。
男子生徒はもちろん、女生徒もチュニックにパンツという動きやすいスタイルだ。オレは相変わらずメイド服なんだけどね、さすがに不釣り合いといえばそう。
時折、ウサギ型やリス型魔獣、臆病で襲ってはこないレベルのものが顔を出す。一応、魔獣ハントも実習の内なのだが、臆病な魔獣であるが故、狩るのはなかなか難しい。
だが、エリナの矢はすごいな! 遁走されても確実に狙った獲物、その急所を射抜いている。
バンガローに到着するまで、他の生徒は一匹か二匹を狩るのがせいぜいだったが、エリナはなんと十二匹、加えて姫の剣技もなかなかのもので戦果は六匹だった。
オレ? いやぁ〜 魔法を使うのもなんだし、例のミョルニルハンマー(改)でね、二匹ほどね。アレ、なかなか使い勝手がいいということも分かった、魔獣を狩る際、剛体、すなわち骨だけをバラバラに砕いて仕留める方式だから、穴を開けない分、大きな魔石が取れるんだよね。
演習があるとはいえ、このキャンプはちょっとしたお遊び、卒業記念的な位置付けの強いイベントだ。バンガローに到着したら、職員総出で準備してくれていたバーベキューパーティが始まった。
お酒は二十歳になってからなどというルールはないこの世界、そもそもエルフってどこから成人か分からんけど。
なんだけどね、やっぱり、学生の飲酒は禁止のようだ。職員も付き合ってくれて、葡萄やオレンジジュースを飲みつつ、お肉、お野菜をいただく。
いいなぁ〜 こういうの、前世では味わえなかった気分だなぁ。雲ひとつない夜空を見上げれば、今日も月が綺麗ですね……。漱石かよ、って、うん?
外見は一応、人のようだが人じゃない、オレの視力だから見えたのだろう、遠く東の空から何か来る、ちょ! とんでもない巨大なヤツだと思うが。
《なんだと思う? 魔獣かな》
《魔獣は、魔獣じゃが、大きいのぅ、前に倒したドラゴンよりも、大きいようじゃ》
《って、ヤバくね? てか、もしかして、もしかして、アレ、オレを目指して飛んで来てるんじゃね?》
次第にその魔獣の外形が露わになってきた。東洋系ドラゴンと表現すればいいだろうか?
青っぽい鱗に覆われた大蛇のような体に四肢が付いている、二本の角があり、顔は長く、口辺に長いひげ、ここまでは竜まんまだが、大きな翼があり、羽ばたいて空を飛んでいるようだ。
ここまで近づいて来ると学生や職員の皆も気付いたようだ。
「は、早く、バンガローに避難を!」
「クリティ、どうする?」
姫、さすがですな、冷静だ。
「多分、火とか、吐くよね? 接近されたら、全員を守りきれないと思う」
オレの常軌を逸した力、十分に意識して、目立つことを避けているのは、周知の通り。だが、今回ばかりは、そうも言ってはおれないだろう。幸い、皆、避難に気を取られている。
「行って来る!」
オレはその場から空に飛び立った。真っ直ぐに竜を目指して飛ぶ。竜はオレを視認したのだろう、案の定、火を噴いてきた。あっさり、ブラックホール魔法に飲み込ませ、無効にしたのだが。
《蛇の心臓って、どこ?》
《何を言っておる! このような大魔獣とて骨はある、木っ端微塵に粉砕されれば、死ぬわ!》
おお、その手があった! オレは咄嗟の判断で竜の真上にワープした。突然、目標を見失った竜、キョロキョロと周りを見渡し、その場にホバリングした。
チャンス! 異世界の「黒い悪魔」とはオレのことだ! メッサーシュミットBf109Gもかくや、急降下したオレはミョルニルハンマー(改)を思いっきり、竜の頭に叩きつけた。
ギャウン!!!!
断末魔の悲鳴をあげて、全長十メートルはあろうかという巨大な竜は、森を目掛け真っ逆さまに落下した。
バキバキバキ ズトーーン!!
竜は木々を薙ぎ倒し、夜の森に大音響を響かせ地に落ちた。
チチチチーー ギャギャギャ
鳥か魔獣かは分からぬが、森の小動物が落下音に驚いて逃げていく。




