少女の殺し屋
よし! オレは続けて。
パチン、パチン
脳を揺らすKOパンチ魔法、え! 効いてない? なんで??
いずれにせよ、こいつら、ナイフを持っていたのだから、刺客であることに間違いはないだろう。殺してしまうのは簡単、だが、それはダメだ、腕の一本でももぎ取るか? うーーん、どうすれば?
オレはPKを使って二人を高空に放り上げた。二つの物体を同時に操るの、実は初めてだったのだが、なんとかなってよかった。
そのまま二人を自由落下させ、地上十センチで止める。さすがに、コレで気絶? しない!!!
再び体勢を立て直して襲いくる二人、オレは加速モードを維持しつつ、つま先で立って、アウトボクサースタイル。
左の男に右ストレート、間髪の入れず、右にショートアッパーを食らわせた。見事なクロスカウンターが決まり、二人は尻餅を付く。
が、うん? 昏倒した様子がない、しかも、なんだ、この手応え、人の顔ではない何か、木? 硬いものを叩いたような感触だ。
《もしかして?》
《そうじゃな、こいつら傀儡じゃ! ならば遠慮はいらぬ、頭を潰せ!》
あの感触から、こいつらが人ではないことは確かだ。傀儡は無生物なのだから、気配を感じなかったこととも符合する。
だが、人の形をしたものの頭を吹っ飛ばすのは、精神的にキツイ。でも、この際、そんなこと言ってられん。オレは勇を鼓して。
パチン、パチン
二体の傀儡の頭が消えた。ふぅ、傀儡といえど、頭を潰されたらさすがに動けなくなるようだ。
《あの少女が、パペッティアか?》
《そのようじゃな》
《いや、まぁ、オレなんかがラブレター、変だと思ってたがな》
謎の少女、逃げるかと思ったら、窮鼠猫を嚙む勢いで襲いかかってきた。140センチのオレより、10センチばかり小さく、子供にしか見えないが、マジモンのアサシンかもしれない。暗殺に失敗したら、戦って死ね、と叩き込まれてるんじゃないかな。
武器は持っていない。右ストレートが顔面にきた。え! 何かの魔法だろう、物理法則に反したとんでもない「質量」が乗っている。まともに貰えば頭蓋骨が砕けるだろう。
だが、当たらなければどうという事はない。軽いサイドステップを踏んで躱したオレ。空振りした勢いで、目深に被っていた少女のフードが捲れた。頭には角? 鬼のような二本角がある。なんだかこの子、訳ありだな。
「しばらく静かにしていてくれるかな」
オレはKOパンチ魔法を使って彼女を昏倒させ拘束した。拘束方法は簡単、エプロンのポケットにいつも入れている紐を使って、両手の親指を縛る。
軽く蝶結びにしたのち、空間操作で紐を重ね合わせてしまう。こうなるとナイフで紐を切らない限り、拘束は解けないはずだ。
PKで彼女を持ち上げて部屋に運んだ。気絶したままなので、キョンシーみたいな歩き方になるが、ま、夜だし人もいないし。
「ただいまぁ」
「遅かったわね。って、その子、何?」
「いやぁ〜 とんだヤンデレに告られたようで、後から刺されそうになりました」
「あれ、この子、角がある? 魔族? いや、顔の感じから、人族とオーガの混血じゃないかしら?」
「パペッティアらしいのですが、こんなに幼い子なのに、殺し屋だと思います」
「あ! 聞いたことがあるわ。ドルトニア国の話、孤児院と称して小さな子供を集め、実は殺し屋を養成しているのだと。さすがに根も葉もない噂だと思っていたけど」
まった、ドルトニア? あの、クソ王が関与している?
「そろそろ、起きると思うから、聞いてみましょう」
「く、くそ! かくなる上は!」
「あっ、舌噛んだ!」
「任せて!」
これはオレ知ってたよ? ドラマなどで舌を噛んでの自殺というシーンもあるが、舌が千切れただけで人は死なない。
舌を噛んで死ぬというのは、窒息死、噛んだことにより舌の筋肉が痙攣を起こして収縮、喉が詰まってしまうからだ。この場合は、治癒魔法で舌を治せば元通り。
「ゲホ、ゲホ、殺せ! 殺せぇぇぇ!!!」
《主様、ここは妾の出番じゃな、少し体を貸してもらえるかのぅ?》
《え?》
魔族を統べる王たる存在のディアボロス、魔族全ての血、そのDNAに深く刻まれた悪魔の記憶がある、というのだが、体を貸しちまって大丈夫か?
《大丈夫じゃ、魂の出し入れは、主様でなければできぬじゃろ?》
《分かった、信じよう、ま、もう、ずいぶん長く付き合っているようにも思うしな》
「魔族の血を引く者よ、ならば、分かるじゃろ? 妾のことが!」
「え! 貴女様は、もしや、閣下!!!!!!」
マジかっ!! 少女の表情が豹変した。
「如何にも、今は、このクリティの中に居候しておるのじゃがな」
「ぼ、俺は、恐れ多くも、ディアボロス様を殺めようとしたのですか? ならば、なおのこと、万死に値する失態!」
「待て、待て、また舌を噛んでも死ねぬであろう?」
「うっ、僕が、この僕が、生き恥をさらすとは……」
「ま、そう肩肘張るでない。どうじゃ、妾に、このクリティに、寝返らぬか? お主、雇い主に育ててもらった恩義でも感じておるのか? 飯を食わせてもらっただけじゃろ?」
ああ、なるほどなぁ〜 孤児院に収容された子供、飢え死にするのを助けてもらったと、恩義を感じるのかもしれない。無垢な子供の想いを利用するとか、許しがたい行為だろう。
「それだけのことで、刺客たることを強要されたのじゃろ? そんな主人が忠義を尽くすべき相手か?」
「そ、それは……」




