レベルとは
エリナは女性だから、すぐに人の胸元を見ることはない、ということかな。てか、そういえば、あのバカ息子、気付いてなかったのか?
「まったく、あのピス殿下、命があっただけ儲け物ってことよね? 私なら、これを見ただけで逃げ出すわ。勇気というより蛮勇は誉めてあげてもいいかしら? とこで、クリティって、どんな魔法を使うの?」
ゲ! 妙な話になっちまった。なんか、うまい言い訳できないか?
「申し訳ございませんが、それを申し上げることはできません。私は姫の護衛です。軽々に自らの能力を語ってしまうと、姫に敵対する者が、何らかの対策を取る可能性があるからです。ああ、いえ、エリナ様を信じないなどということでは、ありませんが」
「カッコイイ! プロ中のプロなのね! ああ、私のことは、呼び捨てで」
「あ、はい」
「さ、言い出したのは、クリティですよ。貴女も椅子に座りなさい。女子会、リスタートしましょう」
「では、紅茶を入れ直しましょう。クッキーもどうぞ」
「そう、このバタークッキー、フルシュの名産なの、よかったら、どうぞ」
「美味しい! なに、コレ? 蕩けるよう舌触り、口に広がるバターの風味が絶品だわ、シンプルなクッキーなのに癖になりそう! でも羨ましいわ、ルルのお父様、王様なのに娘のことちゃんと気遣ってくれて」
エリナは、エルパニア辺境伯に六人いる子弟の末娘、この世界の貴族にも味噌っ滓ってあるのだろうか?
三人の息子は次期当主争い、二人の姉は政略結婚を済ませている、という状況の中の放任、という言い方は聞こえがいいが、学費は出すからあとは知らん、というような扱いだと語った。
「あら、お話に夢中になっていて、もうこんな時間、今夜は、これにて失礼しますわ、また、お邪魔します」
「ええ、是非」「おやすなさい」
エリナは部屋に引き上げていった。
「ありがと、クリティ」
「いえ、本来は社交的な姫様、ただ、人への気遣い、過ぎたるは及ばざるがごとし、になっているな、と」
「ねぇ、どうして、そんなに、私の気持ちが分かるの?」
「え?」
「前世の何かかな? ならば、今生の私、とっても幸せってことよね?」
「そのような、お考えをお持ちいただいているというのは、私にとって無常の喜びです」
「まったく! コイツ!!」
「あっ、乱暴はおやめください❤︎」
「と、言いながら誘ってるでしょうが!」
それから、度々、部屋を訪れてくれるようになった、エリナ。
「コレ、領地の魔道具屋に作らせたものなのですが、よろしかったら、どうぞ」
燕脂のリボンを姫に渡した。何気に高価な魔道具だと思う、結ぶと、リボンが記憶している形状に髪をまとめてくれるという代物だ。エリナのハーフアップが、いつもキッチリ決まっているのは、この魔道具のお陰だったようだ。
「ありがとう、では、早速」
おおお! いつものストレートロングもいいけれど、ちょっと捻ったハーフアップ、ソードア●ト・オンラインでもお馴染みだしな。
見れば、二人、お揃いのリボンで並ぶと姉妹のよう。アレ、オレ、ちょっと嫉妬してる? なんか、男の時には、感じたこともないような、微妙な感覚だ。
ということもあったので、オレはエリナという人をちゃんと認識するようになった。実技見学の際よく観察してみると、彼女、弓術については非凡な才能があるようだ。
ちなみに、っていうのはさ、全部ディア知識なんだけどね。
「この世界はゲームではない!」
RPG風にレベル、ステータスという考え方はあるが、この測定は前世でいうところの血液検査に近い。たとえて言えば、魔道具を使ってγ‐GTP、HbA1cなどの値を計測しているようなものだ。
この計測値のことをステータスと呼んでいる。このステータスを経験則上の上限値で割り算した、値がレベル計算の基礎値となる。
測定値÷上限値×99
という意味だ。
ステータスについては、STR、VIT、DEX、AGI、INT、MND、CHR、LUKと、なぜだろうね? RPGっぽい八種類だが、この八つをそれぞれ、上記の式でレベル換算し、単純平均したものが、その人のレベルになる。
(STR÷STR上限値×99+VIT÷VIT上限値×99+……+LUK÷LUK上限値×99)÷8=その人のレベル
で、分かるよな? 結構、レベルっていい加減なものだってこと。
まず第一に単純平均であること。たとえば、ルル姫のように回復魔法に非凡な才があり、MNDはとてつもなく高いが、他の値がそれほどでもない場合、当人のレベルはまだまだ半人前のLv.29になってしまう。
ギルドなどで規約制定する場合には、いたしかたない面もあるのだろうが、それぞれのクラスに応じた加重平均にするとか、なんかあるだろ?
第二、エリナのようなケースは最悪、弓の命中率をドンピシャに表すステータスなどない。測定可能な値が存在しないということだ。若干DEXは高めだが、あんなに上手なのにレベルで評価されることはない。




