宝珠奪還
いつの間にか、オレ、深い眠りに落ちていたようだ。気が付けばもう朝、隣には裸のルル姫が心地良さそうに寝息を立てている。しばしギリシャ彫刻のような美麗を見つめていたら、姫が目を開けた。
「さ、姫、コーヒーでも飲んで、行きますか!」
「OK! 頼んだわよ。クリティ」
オレたちは、コーヒーとパンの軽い朝食を済ませ宿を後にした。今日は快晴、早朝でまだ人通りの少ないメインストーリーをクオーター(約30分)ほど歩くと、王宮の入り口に到着した。
王宮は差し渡し十メートルほどの堀に囲まれ、その先に高さ五メートルほどの城壁がある。街全体を囲むものと合わせ、二重の守りということだろう。
「姫、どうです? 宝珠の霊力、感じますか?」
「ええ、宿にいたころから、もう既に感じていたわ、間違いない、宝珠はこの城の中よ」
「かしこまりました。では、背中に」
「もう、慣れたの?」
「ああ、昨夜のあれやこれやで」
《ま、あれは、妾にとっても、よいもの、じゃった》
《て、どういう意味よ?》
「あはは! なるほどね」
オレは姫を背負って城門前にワープした。
「な!!!!」
槍を持った門兵が二名、突然の闖入者に驚き、動作が止まって、その場に凍りついている。
パチン
オレの魔法、無詠唱なんだけど、なんとなくカッコイイだろ? 指を鳴らした瞬間、兵士が持っていた槍が消えた。
「うん? え??」
混乱に混乱を重ねている門兵たち。
パチン
二人は気絶しその場に蹲った。
「殺してないわよね?」
「もちろんです。気絶しているだけですから」
これも、前世の知見を元にディアと研究した、ボクシングのKOパンチに相当する技だ。
要はPKで脳を揺らし昏倒させる、変な倒れ方をするとマズイというのは、オレ、例の傷害事件で学んでいるから、再びPKを使い兵士の体を支えつつ蹲る姿勢にしている。
パチン
続いて、オレは兵士の衣服を消した。
「ちょ! 何してるのよ!」
「いや、裸なら、気が付いた時、まず服を探すかと思いまして」
こういうのはオレの喧嘩知識、相手が追ってくるまでの時間を稼ぐ、ちょっとした豆知識だ。
「もしかして、姫様、男の裸、見るのは初めてで?」
「そ、そんなことないわよ。私、多分、前世では男だったんだと思うの、さんざん、自分のを見てたんだから」
「あああ、なぜに、そう思われます?」
「なんだかね。クリティの恥ずかしがり方、誘うような感じ? アレ、絶対、女だと思うの」
「なるほど」
「あら、また赤くなった。可愛い!」
「あ、今、キスは……」
「自分から誘ったくせにぃ」
跳ね橋を兼ねた鉄製の城門、高さ十メートルはあるだろう。
パチン
あっさり城門が消えた。
「く、曲者じゃ、出会え、出会え」
なんじゃ、コレ、時代劇? 多数の衛兵がわらわらと湧いて出るが、オレの指パッチンで、その場に裸で蹲るはめになる。アレ、女兵士? さすがに、下着は残しておいてやった。
中央階段を登り、オレたちは高い尖塔をいだく、王宮正面玄関まで来た。ああ、立派なオーク材の扉だねぇ。
パチン
ちょっと、もったいなかった、かな?
「ああ、忘れておりました」
パチン
オレは背後の階段を消した。
正面玄関を入ると巨大なエントランスが開けていた、豪奢なクリスタル製のシャンデリアがかかっている。二階へ続く階段には、緞子のカーペットが敷き詰められていた。この先が謁見室かな?
制止しようとする、役人、兵士、全てを裸に剥いて気絶させ、オレたちは階段を上る。
謁見の間に到着すると、数名の近衛兵が剣を抜いて王を囲み、威嚇してきた。
パチン
「王様、ベルガリオ・ラクティマイオス十四世さん、私が誰だか分かりますよね? フルシュ王国が王女、ルルメリア・アクティーヌ・ヘリオーティスでございます。本日は、我らの至宝、翡翠の宝珠をお返しいただきたく、参上いたしました」
コイツ、なんだよ? 茫然自失ってことなのか? この期に及んで尊大な態度を改めようとしない。気に入らん、気に入らんぞ!!!
「オラオラオラ! 盗人風情が、玉座にふんぞり返ってるんじゃねぇよ!」
パチン、ドカン!!!
頭に来たオレが椅子を消したので、王は尻から床に落ちた。
「クッソ生意気に、王冠なんぞ被りやがってよぉ!」
パチン
続いてオレは王冠を消し、ついでに、王の髪の毛も一本残らず剥ぎ取ってやった。
「オラ、ハゲ! 今度は、お前の頭を消してやろうか!!」
「誰か、誰か、宝珠を持て!!」
やっと、王様、現状認識ができたのだろう、血相を変えて叫んでいる。
謁見室の扉のあたりから、中の様子を覗き見ていた役人が、どこぞへ走って行った。一応、用件は伝わったようだ。




