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ホームシック

作者: 秋暁秋季

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。

夢見るように街を歩いた。

ただただ暑かった。

ある時、巨大な石段と出くわした。

懐かしい社が私のことを覚えていて、暖かく迎え入れてくれた。

麓にあった甘味処のかき氷を食べた。冷たい緑の小山だった。

あぁ、また夏が去っていく。さよなら、私の幻想。


私はホームのベンチに腰掛けて、イヤホンを耳に差していた。耳から流れてくるのは夏歌。どうにもこの歌詞が私と重なって、あの夏の光景が忘れられない。

何処までも続くコンクリの一本道。数珠でも作るようにバスが通っていた。そこに地元で結構有名な社があって、どんなに暑くてもそこだけは涼しかった。麓の甘味処は夏限定で舟盛りのかき氷を出してくれた。茹だるような暑さの中で、本当に格別だった。店員さんは気配りの出来る方で凄く優しかった。でもかき氷を頼んだ時にも絶えず水を注いくれたので体が冷えた。外に出た時の暑さが今だけは心地良かった。

どうにもホームシックであるらしい。彼処は故郷でも何でもなく、ただ一時居座っただけの仮初の土地だと言うのに。

電車が来た。銀の鉄の塊が嘶き声を上げて目の前を滑った。これに乗ればきっと今日という一日が終わる。虚しいだけの午後が待ってる。誰も居ない部屋の中、ただ幻想に縋って思いを馳せることしか出来やしない。あぁ、あの場所に帰りたくて仕方がないよ。ただ一時その場に居着いた関係なのに。

気が付いたら走り出していた。銀の車体から目を逸らし、一気に階段を駆け上がった。下る時はあんなにも重たかった足取りが、今は羽のように軽い。□番線のホームまで辿り着くと、私は携帯を取り出した。

「ねぇ、今暇? あぁ、本当。いや、今から行くからさぁ、かき氷食いに行こうや」

明日がどうなるかなんて分かりゃしない。判を押したような仕事を熟す日々が待ってる。でも、今だけは気持ちを曲に乗せて、故郷を満喫しよう。

好きな甘味屋さん、夏限定で舟盛りのかき氷出してくれるんですよ。

で、山の部分だけ食べて満足するという。

そして店員さんが、にこにこの笑顔で

「暑かったでしょう?」

と言いながら水注いでくれるんですよ。

後は寒さとの戦いという。

食べ終わって店出ると、本当に涼しくて居心地良かったあの時。


この間ちょろっと覗いたら定休日でした。

長く続いて欲しいです。

またかき氷頼んで、冷水飲んで、夏の暑さに浸りたいです。

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