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Sirius~黒鉄と白銀の旅人~  作者: めらんこりぃ
第二章 螺旋の再生
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星を墜とす(1)


 「さあ行くわよ! 今日こそは全部解決して大団円で終わるんだから! 」


 早朝、ハイテンションの魔法使いが此処に一人。

 この人はいつでも変わらないのだろうな、とシオンは思うが、その感想自体、昨日も思考していたような。

 このような不思議な気分を味わっているのも、きっと昨日と同じ状況だからであろう。

 例えば、早朝。

 例えば、森の前。


 違うことと言えば、二つだけ。

 一つは、仲間。今日は新しく加わった仲間がいる。それはこの街の領主にして、今まで戦闘してきた中で最強の剣士、ダリアである。

 戦闘を行ったシオンとアイナからすると頼もしい限りである。

 もう一つは、目的。昨日の目的は、リンの母親探しを手助けすること。でも、今日のそれは違う。

 今日やるべきことは、魔道具を破壊して、森の異常を正すことだ。


「――よし! 気合入った! こっちはいつでも大丈夫だ」


 頬を叩いて目を覚ますと共に気合を入れるシオン。

 その言葉に続くようにアイナとリンは宣言する。


「こちらも準備万端です! いつでも作戦開始できます! 」

「わ、わたしも大丈夫です! 」


 これで四人。

 そして、最後の一人に視線が集まる。


「……私も大丈夫よ。睡眠も取ったから体調もバッチリだわ」


 その言葉にカトレアは満足げに頷くと、昨日夜に練り上げた作戦を確認する。

 この場に居る全員が自分の役割を再確認したところで、カトレアが森に向かって大きな声で宣言した。


「見てなさい霧の森! 今日こそは絶対に攻略してやるわ! ――それじゃあ、作戦開始よ! 」


 そうして、五人は霧の中へ突き進むのだった。






 暫くして。

 霧中に蠢く影が三つ。

 一つは黒衣の剣士、改め魔術師。その黒は真っ白の世界で一際存在感を放っていて。

 一つは白銀の騎士。その白はどれだけ周りが白くあろうと一層輝く純白で。

 そして、一つは茶髪の魔導士見習い。その色は今にも消えそうなほどに弱弱しく、それでいて確かにそこに在る。


「二人とも体力は大丈夫か? 結構走ったから、少しだけ休憩しよう」


 シオンがそのように声を掛け、二人の方を見る。

 アイナは汗の一つも浮かべず、涼しい顔でついてきている。

 しかし、リンは少し厳しそう。今にも倒れそうな勢いだ。


「リンさんのペースを考えずに走ってしまいました。申し訳ありません! 五分だけでも休んでください」

「ごめんなさい……私、足手纏いだ」


 珍しくリンから出た弱音。

 それだけ、彼女が追い詰められているということだろうか。


「そんなことないさ。むしろ、この作戦はリンが居なきゃ成り立たない。だから、もっと自信を持って」

「そうです! 今は劣っていると感じるかもしれませんが、ここは私達の役割です。貴方の役割は別にあります。そのときは貴方の力で私達を支えてください! 」


 リンを目的の場所へと送り届ける。

 これは確かにシオンとアイナが果たすべき役割だ。リンにはリンの役割が別にある。

 そもそも、この作戦は誰かが欠けたら成立しないもの。

 足手纏いなど端から存在しないのである。


 暫しの休憩を取り、三人はまた走り出す。

 霧の中で互いを見失わないよう手を取って。

 出来るだけ高い場所を目指す。

 三人が条件を満たす場所に届いたのは、それから数回転移をしたときだった。




 「――確かに。言われてみれば魔力が何処かに流れてるわ」


 そう呟いたのは花の魔法使いだった。

 彼女は今、真っ赤なドレスの令嬢と共に行動している。

 二人の役割は、出来るだけ多くの再生体を殺すこと。

 その役割に則って、森に侵入してからというもの、再生体を見かけた端から倒していく。


 だが、肝心なのはダリアの魔剣で倒すこと。

 なので、カトレアはその補助だが、ダリアは危なげなく倒していくため、彼女が無双する様子を見ているしかない。

 というわけで、先程の呟きも、その結果である。

 ダリアが魔剣で魔獣を倒す度、霧に流れて魔力が何処かに消えている。

 具体的な場所が何処かはっきりしないが、それは確かだった。


「でも、私にはここまでしかわからないわね」

「そこから先は彼女の仕事よ。私達は私達のやることをやるだけ」


 ダリアの言葉に、それもそうね、と納得して二人は進み出す。

 そんな彼女たちの前に現れたのは、巨大な魔物だった。

 皮膚には鱗を纏い、背には巨大な翼、そして、強靭な二本の足。

 その姿はまさに。


「ワイバーンよ! まさかこんなものまで現れるなんて――ダリア、どうする? 」

「どうするも何も殺すに決まってる。貴方がアイツを墜として。私が斬る」


 言葉にしたのはそれだけ。

 だが、彼女らにはそれで十分だった。


「――――〝花よ、舞い散れ"」


 カトレアが魔法を行使する。

 それは彼女が自然に対して発揮する絶対的な『命令』だ。


 その『命令』によって地面に咲き乱れた花たちが、ひらりと舞い上がる。

 舞い上がった花びらが魔力を纏い、鋭利な刃となってワイバーンの翼を傷つける。

 ワイバーンも翼で風を起こし抵抗するが、花びらの勢いは止まらない。

 十数秒の抵抗空しく、ワイバーンは墜落する。


 瞬間、神速の赤が駆ける。

 色に違わぬ鮮烈な軌跡を以て、ワイバーンを斬り伏せた。

 まさに一刀両断。

 今度は抵抗すら出来ず、ワイバーンは消滅する。


「これだけの大物を倒せば十分よ。――来るわ! 早くこっちに! 」


 カトレアが目標の達成を宣言する。

 それと共に彼女が展開したのは、四方に聳える樹木の壁で。

 二人がその内側へと避難する。


 瞬間、空には極光の軌跡が走る。


 そして、軌跡は二人の上空にて何かに衝突し、爆発した。






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