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Sirius~黒鉄と白銀の旅人~  作者: めらんこりぃ
第二章 螺旋の再生
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孤独な世界


 なんて無力なのだろう。


 それが、この光景を見せられた素直な感想だった。

 赤いドレスの剣士は、卓越した剣技による圧倒的な強さを誇っている。

 その様はまるで芸術のよう。それこそ格好も相まって、貴族の舞踏会のように優雅で、華麗で。

 母親を殺した相手だというのに、こんなものを見せられたら憎しみなんて湧いてこない。

 美しき天災。

 彼女の剣技には、それだけの強さがあった。


 かと言って黒衣の騎士も負けてはいない。

 派手さや美しさこそないけれど、その剣技はとても自由だ。

 だからこそ、剣での戦闘中に魔術なんて折り込むことができるのだろうか。

 彼女は彼のことを魔術使いと評価したけれど、私からしたらとんでもない。彼は、立派な魔術師であり剣士である。

 それこそ、彼の強さは既に証明出来ていると言って良い。

 だって、彼女相手に勝るとも劣らない戦いを繰り広げているのだから。




 「…………わたしには、無理」


 思わず出た独り言。

 数歩引いた位置からのそれは、この戦場に居る誰にも届かない。

 まるで遠い世界の出来事のよう。

 自分と彼らには、それだけの断絶がある。


 魔術を使えるようになった。

 知識もそれなりにある。

 わたしが生きてきた十五年はきっと誰かの役に立てる。

 なんて、最近やっと、そう思うことができるようになったのに。

 それなのに、これはない。

 わたしの拙い魔術では援護どころか彼の邪魔をしてしまう。

 この戦闘には私が何かをできる余地は微塵もない。


 まるで、わたしを否定されたよう。

 今のわたしには土台無理。

 ならば、あと何年努力すれば、あの場所まで行けるのだろう。それとも何十年だろうか。

 そもそも、わたしの道はあの場所へ繋がっているのだろうか。

 もし、繋がっていないなら。

 そう思考した瞬間、誰に言われたわけでもない言葉達が頭を過る。

 お前の頑張りは無駄だった。お前がどれだけ努力しようが結局は才能が全て。だから、お前の十五年間には意味なんてなかった。


「ああ、そうなんだ……これが――――」


 どうしようもなく理解してしまう。

 誰かに言われるなら、どんな悪口だろうと我慢できるし気に留めることはない。

 今までだってそう生きてきたし、これからだってそう生きていくつもりだった。

 でも、自分がそう思ってしまったのだからしようがない。


 自分の中の何かが崩れていく。

 ああ、きっとこういう気持ちのことを言うのだろうか。

――絶望って。


 目の前で黒衣の彼が圧されている。

 このままでは彼が負ける。それは素人から見ても明らかだ。


「……だめ……このままじゃ……」


 助けなきゃ、と手をかざす。

 震える声で詠唱する。

 しかし、その掌からは何も出てはくれない。


「――――なんで――なんで出てくれないの? 」


 何度試しても発現しない。

 わたしにも何かできるかも、なんて希望のような願望すらも形を成さず霧散して。



 また、目の前で人が死ぬ。

 わたしに力が無いばかりに。




――――――デュランダル! 解放!


 何処からともなく聞こえたそれは、閃光と共に。

 その奔流は相対する二人を分かつ。

 そして、現れたのは聖剣を携えし白銀の騎士。


 ああ本当に良かった。これで彼が死ぬことはない。

 その奇跡的な登場にわたしは心底安堵する。


 でも、そっかあ。あなたもそっち側なんだ。

 わかってたけど実際に目にすると実感しちゃうなあ。

 遠い世界にいるのはわたしだけ。


 ああ、わたしは孤独だったんだ。





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