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Sirius~黒鉄と白銀の旅人~  作者: めらんこりぃ
第二章 螺旋の再生
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少女の憧れ


 私の両親は魔導士だった。


 ただ魔術を研鑽するだけの魔術師ではなく。

 魔法を行使するだけの魔法使いでもない。

 その両方を極める魔導士だった。


 今でもその光景を思い出せる。

 父の行使する鮮烈で繊細な魔術を。

 それに折り重なる母の美しく幻想的な魔法を。

 幼い私には、それがとても綺麗なものに映ったのだ。


 だから、魔導士になろうと思った。

 いつか私にも、あんな風に魔術や魔法が使える時が来ると信じて。

 その魔導士達に憧れたのだった。




 それからは必死で魔導を修めようと努力した。

 父には魔術の基礎を教わり、母には魔法とは何かを伝えられた。

 魔力の動かし方から魔導士としての理想まで、ありとあらゆることを教わった。


 でも、私にはどうやら才能が無かったらしい。


 どれだけ魔術を教わっても。

 どれだけ魔法を知っていても。

 それが発現することは一度も無かった。

 父は、まだ習いたてなのだから焦ることはない、って言ってくれたけれども。

 幼い私には、それがとてもショックだった。


 だからと言って、そこで習得を諦めることはなかった。

 むしろ、以前に増して努力したくらい。

 二人から教わったことを何度も復習して。

 早く使えるようになるために何度も練習した。


 それは二人が亡くなってからも一緒。

 もう教えてくれる人が居なくても、書物を頼りに勉強した。

 どうやったら魔術を使えるようになるか、必死で模索した。

 一人では管理仕切れなくなった屋敷を手放すとき、二人との思い出はほとんど手放してしまったけれど、魔導の本だけは持ち出した。

 だから、今の私の部屋には本が壁一面に埋まっている。

 それを見ると、何だか見守られているようで少しだけ嬉しくなる。




 私が魔術を使えるようになったのは、つい最近のことだ。

 それはいつも通りの塔の上。

 私の掌からとても小さな炎が発現したのだ。

 それはもう歓喜したし、感激した。

 感極まってその場で泣き出したくらい。


 十五でようやく魔術を初めて習得した。

 それは魔導士を目指すものとして、とても遅いとしても。

 発現した炎がとても魔術と呼べる代物ではなかったとしても。

 私にも魔術が使えるのだ、という事実がわかっただけでこれ以上ない程嬉しかったのだ。

 だって、それなら、私もいつかは立派な魔導士になることができるのだから。

 たとえそれが、数十年の研鑽の果てであろうとも。誰に認められるわけではなかろうとも。


 私は魔導士を目指し続ける。

 この道に進むと決めたのだから。

 分不相応にも、あの思い出たちに憧れてしまったのだから。

 この選択に後悔なんてありはしない。


――――――ああでも一つだけやり残したことがあるとするなら






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