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ー 5 ー 一次試験③

挿絵(By みてみん)



ーペンネ②ー




ペンネは先ほどまで座っていた切り株の上に立つと、腰に手を当て周りを見渡した。


樹々を薙ぎ倒す轟音と共に、12匹のアルマジロウスによる土煙が、砂嵐のように迫ってくるのが見える。


しかし、まったく逃げ出す様子はない。

むしろ()()()()()()()()()()()()()ようにすら見える。


クロロがぐぐっと拳を握りしめる。

クロロ「…な、なにか作戦があるかもしれないけど、12匹も相手にする気か、あいつ!やっぱり助けに行こう!コン太」


駆け出そうとするクロロを、コン太が腕で制する。

コン太「…い、いや待て!アルマジロウスたちの動きを見てみろ!」



12匹のアルマジロウスは、ペンネに近づくにつれ、()()()()()()()()()()()()()()ようだ。


そして、1匹、2匹と回転を解き、のそのそと、ペンネの元に向かっていく。


クロロ「どど、どうなってんだ?」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


襲うようなそぶりはなく、切り株から一定の距離を置いて、恭しく地面に伏せっている。

まるで、女王様と家来たちのようだ。


ペンネがサラサラとした黒髪をかきあげる。


ペンネ「…いい子たちね。さあてと、どの子にしようかしら…とはいえ時間も少なくなってきたし…そうね、そこの子、ちょっとおいで」


ペンネは、一番乗りで切り株に辿り着いた、周りより少し小さめのアルマジロウスに手招きをする。

アルマジロウスは弾かれたように4本足で立ち上がると、いそいそとペンネの元に進んだ。


ペンネ「ちょっとごめんね」


ペンネがアルマジロウスの後ろに回り込むと、鎧を1枚、ペリっと剥がす。

アルマジロウスは微動だにしない。


ペンネ「ありがとね」


アルマジロウスの頭をポンポンと叩いた。

アルマジロウスの表情など読み取れるはずもないが、それでもどこか高揚しているように見える。


ペンネ「また時間があるときに遊びましょ。じゃあね」

手をひらひらさせ、アルマジロウスたちに背を向けるとジャングルの奥へと去っていった。



クロロとコン太は、あんぐりと口を開けたままだ。


コン太「どど、どうなってんの…?ま、魔法使い?」

クロロ「あ、ああ…全く何がなんだか…でもっ!」


クロロがぶんぶんと首を横に振り、バシンと両手で顔を叩いた。


もう残り時間が少ない!


クロロ「こうしちゃいられないぜ、コン太!オレたちも行くぞ!」

言うが早いか、クロロが角みたいな岩山を駆け下りる!




ークロロ&コン太、始動!ー




コン太「あっ! く、くっそ〜、知らないぞっ!」


コン太も慌ててクロロを追い、ジャングルへ急行する!


岩山を飛ぶように下り切ったその時!


クロロ「見つけたっ!」


ちょうど目の前の樹木を薙ぎ倒し、アルマジロウスが駆け抜けていくところだった。



間髪入れずに、クロロがすうっと息を深く吸い込み、両手を口元に添えた!


「おーーーーーーーーいっ!」


ジャングル中に響き渡るような大声!!!

振動で周囲の葉がビリビリと震える!


コン太は慌てて両耳を塞ぐ!


コン太「あ、あのバカっ!叫ぶんなら先にそう言えっ!!!」


クロロの大声に反応し、通り過ぎたアルマジロウスが、急旋回する!!!


ギョギョギョギョギョ!!!


樹々を吹き飛ばしながら方向転換をし、音の来た方向に狙いを定める!


クロロ(…ゴクリ)

強大なものに狙われた緊張が身体中を駆け抜ける。


ドドンっ!!!


樹木が弾け飛び、爆発のような噴煙が視線の先で炸裂した!

アルマジロウスがクロロに向かい、一直線にスピードを上げる!


クロロ「…!!! よし、よしっ!!!こいっ!」




コン太「おい、クロロっ!!! どうする気だ!?どんな作戦なんだっ!?」

大ぶりの樹の幹に身を隠しながらコン太が叫ぶ。


クロロ「言ったろ!やってやるさっ!!!()()()()()ってやつを、ぶん殴る!!! 」

クロロの額から冷や汗が流れる。しかし口元には笑みを浮かべている。


巨大な塊はまるで暴走機関車のようだ!!!

轟音と振動が一気に距離を詰めてくる!


クロロ(…とんでもねえデカさだっ!岩山の上から見てたのと面と向かうのとじゃ、迫力が段違いだ…!だけど、あの()()()()もやれた!オレもやってみせるぞ!)


ググっと拳を握りしめ、腰を落とした!


アルマジロウスが眼前に迫り来る!!!クロロが巨大な影に飲み込まれた!!!


あわや衝突の瞬間、大きく横に飛んでかわした!

まさに黒づくめの少年と同じ動きだ!


そのまま空中で体をひねり、拳を突き出した!

クロロ「でやあっ!!!」


しかし…!


クロロ「ぐっ!だめだ!」


寸前のところで腕を引っ込めた!

そのままアルマジロウスがジャングルの奥地へと駆け抜けていく!




ークロロ&コン太、始動!②ー




コン太「く、クロロ!大丈夫か!?」

コン太が樹の陰から飛び出し駆け寄る!


クロロ「ああ!だっ、だけど…速かった〜!あれじゃあちょっと、手が出ねえ…」

クロロが頭を掻きながら言う。


コン太「だから言っただろ!真似しようたってできるもんじゃないだよ!!!」



メキメキメキっ!

背後から重機で樹を押しつぶしたような鈍い音!


クロロ・コン太「!!!」


先ほどのアルマジロウスが再度方向転換をしたようだ!!!


クロロ「…か、完全に怒っちゃったみたいだな…しょうがねえ!リトライだ!!!だが…!」


クロロの脳裏に高速回転するアルマジロウスが蘇る。


「くそっ、もうちょっと回転が緩まれば…!」

拳を握りしめ歯軋りをする。


コン太「!回転が…!?」


ドドドドド!!!!!


アルマジロウスの轟音が迫ってくる!!!


コン太「や、やばいぞ!!!く、くそっ!おい、クロロ、回転が緩まればと言ったな!そうすれば可能性はあるのか!?」


振動が響き、周囲の小石がパラパラと跳ね飛ぶ!


クロロ「あ、ああ!今のまんまだと速すぎてだめだ!だけど、どうやって…!」


コン太が先ほどいた角岩に目をやる!


コン太「くそっ!一か八か!()()B()だっ!クロロ、耳を貸せ!」



ジャングルの上空………


()()()()()()()があった!

モーリーだ!

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


モーリー「ふうむ…クロロさん、惜しかったですが…スキルがまだまだ伴ってないようですね…」

腕組みをしながら呟く。


下界ではクロロとコン太が何やら相談をしているのが見える。


モーリー「別の一手を模索しているようですが…時間的にも次が最後のチャンスでしょう」





巨岩が山を転げ落ちるように、猛烈なスピードでアルマジロウスが2人に迫り来る!!!


コン太「…!きたぞっ!賭けみたいな作戦だけど…!もう何も思い浮かぶものがない!!!」


クロロ「いや、最高だぜっ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」


クロロとコン太が顔を見合わせる。


クロロ「頼んだぜっ!」

コン太の肩をバシン!と叩くと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



残されたコン太の元に、アルマジロウスが真っ直ぐ向かってくる!!!


コン太「う、うぐぐぐ!!!こ、怖い、怖すぎる!!!ぼ、ボクも早く走り出さないと!!!」

気持ちとは裏腹に、体はガタガタと震え出した!


その間にもアルマジロウスがぐんぐんと迫ってくる!


コン太「あ、足が動かない!う、動け!動けっ!」


砂煙が壁のように押し寄せ、巨大な影がコン太を飲み込む!樹木が潰され鈍い音が響き渡る!

アルマジロウスは本当にすぐ目の前だ!


コン太「あわわわわ!」

体中から汗が噴き出る!両手で足をバシバシ叩くが、恐怖でピクリとも動かない!


クロロ「っ!コン太っ!」

振り返ってみたが、噴き上がる砂煙に飲まれ、コン太の様子はすでに見えない!

キキーっとブレーキをかけ走る足を止める。


クロロ「こ、コン太ー!だ、大丈夫かあっ!!!」



ゴオッ!!!

コン太の全身に嵐のような突風が押し寄せ、砂粒や木片が顔と体にぶつかった!!!

少し遅れて獣の生臭い匂いが鼻腔に届く!!!


コン太「し、死んでしまうっ!!!」


その瞬間、コン太がくるっと方向転換し、弾かれたように一気に駆け出した!!!


ズボっと砂煙を飛び出す!!!


クロロ「!!!やった!」


コン太「うわーーーーー!」


アルマジロウスを振り切り、ジャングルの中を弾丸のように駆け抜ける!

試験の冒頭で見せた抜群の逃げ足だ!



クロロ「すげえぞ!コン太!…よし、オレも行くぞっ!」

クロロも再び駆け出し、スピードを上げる!



ジャングルの上空で、モーリーが面白そうに顎を撫でた。


モーリー「…ふふふ、あの二人、さて一体何をどうするつもりなのか…」




ー作戦Bー




コン太「わわわわわ!!!」


風を切り、枝葉を吹き飛ばして逃げるコン太を、アルマジロウスが追って行く!


追跡者を撒こうとしているのか、くねくねと蛇行するが、アルマジロウスは巨体を左右に振りながら、コン太の後を離れようとしない!


いかに逃げ足が速かろうが、人が出せるスピードには限界がある。

まるで人間とダンプカーの競争のように、距離はみるみるうちに縮まり、すぐにでも追いつかれそうだ!


だが、コン太も最後の力を振り絞り、スピードを上げる!


コン太「はあっ!はあっ!!!よ、よしっ!もうすぐだっ!く、クロロはもう到着しているか!?」


コン太が向かう先!さっきまでいた()()だ!


アルマジロウスは真後ろ!岩山はすぐ目の前だ!

灰色のゴツゴツとした岩肌が視界に広がってゆく!


コン太「うおおおおおーーーーー!」


全速力で走る勢いに任せて、岩山の急斜面を、ほとんど飛ぶように一気に駆け上がる!



呼吸おいて…


ズドドン!!!!!!!


凄い轟音だ!!!!!足元がぐらぐら揺れる!


振り返ると、アルマジロウスが岩場の斜面に激突したところだった!!!

振動で大小の岩々がガラガラと斜面を転げ落ちていく。

岩場は衝撃でひび割れ、アルマジロウスも()()()()()()()()()のようにバウンドして跳ね飛ぶ!


コン太「!!!も、もしや、やったか!?」



巨体が岩を砕く音は、ジャングルの上空まで貫いた。


モーリー「!!!なるほど!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな作戦ですか!…しかし…!」



跳ね飛んだアルマジロウスはバランスを崩すことなく、回転を維持したままだ!

地面に着地すると、砂煙を吹き上げ、()()()()()()()()()()!!!


コン太「!!!う、うわー!!!き、きたーーー!!!」



モーリー「…そう、残念ながら、自ら岩にぶつかる程度では目を回さないでしょう…彼らもここまでですか」

腕時計を見つめる。残り時間はわずかだ。



アルマジロウスはコン太のすぐ後ろに迫っている!!!


巨大な回転に飲み込まれる刹那、岩と岩の間の窪みに飛び込み、寸前のところでアルマジロウスをかわした!


ブオオオオオッ!!!

アルマジロウスは、コン太の頭上をダンプカーのような勢いで飛び越え、そのまま岩山を駆け上がっていく!


コン太「クロローーーっ!|()()()()()()()()()()()()()()()()あとは任せたぞ!」



モーリー「…!?狙い通り!?」



アルマジロウスは、()()()()()()()()ことに気づいたのか、急激にスピードを緩めようとしたが、すでに遅かった!!!


そして…


ブオッ!!! 岩のかけらがパラパラと宙を舞う。





突進の勢いのまま()()()()に到達し、そのまま空中に投げ出されたのだ!!!


巨体がスローモーションのように空を漂う! 太陽が遮られ、大きな影が地面を横切った!



その時、岩場の陰からクロロが飛び出した!先回りして岩山に到達していたのだ!!!


クロロ「コン太ーーー!!!サンキュー!!!あとは任せろーーー!!!」

叫びながら、アルマジロウスと同じ軌道で、岩山の頂上から、飛んだ!!!


グオッ!!!


放物線を描いて落ちゆくアルマジロウスは、地面を失い、回転が止まりかけている!


そして、そのさらに上空!!!

クロロが大きく拳を振り上げていた!!!


クロロ「これなら、打ち損じはしねえ!覚悟しろ!」


落下のスピードに体重を乗せて、真下のアルマジロウスに向けて、一気に拳を振り下ろす!!!


ズドン!!!


クロロの強烈な一撃で、アルマジロウスの巨体がジャングルの地面に叩きつけられた!!!

衝撃で砂埃が噴き上がり、嵐のように樹木が揺れる!



モーリー「!!!なんとまあ!!!」

作戦ミスかと思い至った後からの激しい展開に思わず汗を拭った。



風が砂埃をさらう。

地表では、クロロの一撃を受けたアルマジロウスが目を回している。

その衝撃を物語るように、気絶したアルマジロウスを中心に、亀裂が円を描き地面に広がっていた。



コン太「クロロ!!!大丈夫か!」


岩山を降り、コン太が駆けてくる。


クロロは砂まみれの服を払うと、アルマジロウスの上から飛び降りた。

コン太に向かって親指を立て、ニカっと笑う。


二人は気絶したアルマジロウスの脇に立った。そして、鎧のかけらを1枚ずつ剥がすと顔を見合わせた。


クロロ「うっし、これで…」

コン太「そうだな、これで…」

クロロ・コン太「一次試験クリアだぜっ!!!」




クロロの一撃は、砂埃をジャングルの上空まで吹き飛ばしていた。

モーリーは、ハンカチでメガネを磨くと、チャっとかけなおした。



モーリー「…いやはや、突破するとは!すごい少年たちですね。今回は、あの黒づくめの少年をはじめ、末恐ろしいくらいです。この先の試験も楽しみですね。おっと、…そろそろ時間です。戻るとしましょう」


ふわっと風に乗るようにTシャツをはためかせ、ジャングルの奥へと飛んでいった。




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