ー 32 ー ポルフィディオ盗賊団編⑥
カルーアの体の光が和らいでいく…!
そして──
!!!
「な、なんだありゃ?」
「…ギター!?」
カルーアの体から、玉虫色に輝くエレキギターが出現した!
光が波紋のように表面を滑り、見る角度によって赤にも青にも変わる──妖しく、神々しく、そしてどこか禍々しい。
「ストラトキャスター、カルーアモデルよ。どう?かっこいいでしょ?」
カルーアは陶酔したようにギターのネックを撫でた。
「さてと、リリアン。最初にあんたに一曲、贈るよ」
右腕が振り下ろされ──
ジャァァァァァンッ!!!
空間を切り裂くような重低音が走り抜ける。
「餞のヘヴィ・ロック・バラードさ!」
「──!まずいっ!」
リリアンは反射的に耳を塞いだ!
音の能力!
こいつの本領は…これか!
経験上、音を使う能力者は音速の波動で攻撃を仕掛ける!遮断しなければ!
ジャアアアアア…! ジャジャァァァァン!!!
スローテンポのどっしりとした音の層が空間を埋め尽くしていく!
泣いているような、叫んでいるような、重い音の連なりがビリビリと体を震わす!
最後の重低音が鳴り止むと、カルーアは吐息混じりに「いい音だ」と呟き、唇を舐めた──
リリアンは音が止むと同時に、素早く全身にオーラを巡らせチェックした。
(…無傷…? いや、時間差での攻撃か…!
…分からない!けど、体は動きそうだ。だったら、やることは一つ!)
リリアンが洋式古式銃を構える!
「お前をぶっ倒す!」
ドンっ!!!
赤黒いオーラ弾か放たれる!!!
「…だよね。そう来るよな」
カルーアはニヤリと笑い、悠々とオーラ弾をかわした!
「!?なっ!あ、あいつ!どうなってんだ?」
クロロが叫ぶ!
まるで撃つ前から、避ける動作に入っていたかのように!
一体これはー?
「……!!!」
リリアンのこめかみから冷や汗が伝う。
(おかしい…!これは…どういうこと!?わ、私の体が…!!)
「ふふふ。わかるよ。嫌な感じなんだよな」
カルーアが妖しく笑みを浮かべながら、ギターを撫でる。
「だけど、もう遅い」
カルーアが手のひらを掲げる。
ゴゴゴゴゴゴゴ…!!!
禍々しいオーラの光が渦を巻く…!
「寝てな。目覚めた時は──天国さ」
ドンっ!!!!!
カルーアの手から、特大のオーラ弾が放たれた!
「リリアンっ!避けろっ!」
クロロが絶叫する!
「ぐっ──!!!」
リリアンの体に特大のオーラ弾が迫り来る!
だ、だめだ!
もうとっくに!とっくに避けてるのに!!!
なぜ体が動かない!?
ドゴォォォォォンッ!!!
黒い爆炎が炸裂し、衝撃波が空間を揺るがす!!
「リリアンーーーっ!!!」
リリアンの体が煙に包まれ、地上へと落下していく──!
眼下には、巨大な自然公園が広がっている。
大きな川に沿うように、芝生とパークゴルフ場、グランピングエリアが備わっているようだ。
クロロが急降下してリリアンを受け止め、芝生の真ん中に着地する!
「り、リリアン!大丈夫か?」
オーラ弾により黒い着物はボロボロになり、体中が傷だらけだ。
「あ、ありがと…な、なんとか生きてるけど…き、きついわね…」
トンっ!
!!!
カルーアが上空からふわりと降下し、2人の前に立ちはだかった!
「へえ〜!まだ生きてんの!?しぶといねえ」
「て、てめえ!」
クロロが怒りに満ちた表情で睨み付ける!
「く、クロロ…!気をつけて…!あ、あいつのギター…!あの音を聴いちゃ…だめ…!」
リリアンが震える手でクロロの肩を掴む!
「ぎ、ギターの音?も、もう聴いちまってるけど…」
さっきのカルーアの演奏か?
リリアンの体には何か尋常じゃない異変が起きているようだが、クロロにはまだ影響がないように見える…
「き、きっと、作用するトリガーがあるはず…とにかく…き、聴いてしまうと…動作がズレるの…い、今話している言葉だって…おかしい…」
リリアンは、極度のダメージによって意識が朦朧としているようだ。
「ズレる?どういうことだ?」
あのオーラ弾を食らっちまったのも、それが原因ってことか?
「ほー、もうあたしの能力に気付きはじめてるのか?さすがだね!けど」
カルーアがギターを構える。
「クロロ、あんたにも曲を贈ろう!とびきりスローな、ダウナー・バラードをね!」
!!!
ジャアァァァァン…!!!
6つの弦が織りなす重奏が空気を震わせる!
やべっ!!!
クロロが慌てて耳に手を当てるが、フルボリュームの音速の波が巨大な山脈のように連なり、クロロを飲み込んでいく!
耳を塞いでも、手の隙間から流砂のように重低音が流れ込んでいく…!
…!
「…だ、だめだ!こんなの…!どうやっても耳の中に入り込んじまう!」
「く、クロロ…」
くっ…カルーア…やつの能力はかなりの脅威だわ…。
大ボリュームで鳴り響く音を遮断することは不可能…。
クロロもカルーアの能力に捕まった!
べ、ベネットとコン太にも、あいつの能力を伝えないと…
リリアンが手首のスマートウォッチを操作しようした瞬間、ボンっと端末から火花が上がった!
「…ふふん。残念だけと、今日の公演はソールドアウトよ」
カルーアがニヤリと笑い、指先から立ち上るオーラの光をフッと振り払う。
「くそっ…」連絡ツールを壊された…!これではベネットたちと連絡が取れない…!
状況はかなりまずいわ…
「てめえっ!リリアンに何をしやがる!」
クロロが地面を蹴り、カルーアに突撃しようとする!
しかし!!!
ー!!!
か、体がおかしい!!!
思った通りに動かない!?な、何でだ!
脚で地面を蹴り、飛び上がろうと自分の体に命令したはずが、体が動いてくれない!!!
(こ、これがあいつの能力…!?)
そして、ワンテンポ遅れてクロロの右足が地面を蹴り込んだ。
(な、何だこれは!?お、遅れて体が動く!?
これがリリアンの言ってた、ズレるってことか!?)
この遅れた動作の間に、クロロは反射的に体勢を立て直そうと、宙に留まる動きを思い描く!
(ああっ!そ、そうじゃねえ!この動きじゃねえ!こ、ここで止まってしまうと…!)
頭ではそう意識が働くのだが、体が付いていかない!
!!!
その間に、カルーアが距離を詰め、クロロの眼前に躍り出た!
「びっくりするよねー!あんたの体はスローテンポでしか動かないよ!なんてったって、あたしのスローバラードを聴いてしまったからね!」
!!!な、何だって!?
カルーアが、空中に留まるクロロの顔面を狙い、オーラを凝縮させた足を振り上げた!
「ぐぐぐうっ!!!」
頭の中ではとっくに避けているが、体は数秒前に命令した移動の動作に入ろうとしている!
(くっ!くそっ!避けられねえっ!!!)
そのまま、渾身の蹴りをノーガードで引き受ける!!!
バゴォォォンッ!!!
「うわあっ!!!」
ズザザザザ…!
芝生を削りながら吹き飛んだ!!
「う、ぐぐ…!」
こ、こいつはやべえ…!体の動きが全く付いていかねえ…!む、無茶苦茶だ!
お、遅れて体が動くから、受け身すらまともに取ることができねえ…!
カルーアがギターを掲げ、高らかに叫ぶ!
「…ふふ。あんたたちには最上級のロック・バラードを捧げた!
めちゃラッキーだよ?あたしが書き下ろしで楽曲を提供することなんて、ないんだから!
だけど…あたし自身もノらないと、グルーヴ感でないよね」
「な、なにっ!?」
あいつ自身も…って!?
「あたしには、疾走感MAXの16ビートのドライブナンバーだっ!」
ジャジャジャジャッ!!!
真夏のハイウェイを駆け抜けるような渇いたビートが空気を貫く!
「最高っ!イカすぜえええ!!!」
ドドォォォォンッ!!!
…
カルーアの体から、灼熱のようなオーラが燃え上がる!!
ゴゴゴゴゴーーー!!!
嵐のような空気の圧が走り抜け、公園の樹々が薙ぎ倒されるかのようにしなる。
「ぐうっ!!」
クロロが思わず顔を覆う。
ブオオオオオオオ……!!!
空気が唸り、地鳴りのように大地を揺らす。
「す、すげえオーラだ…!」
リリアンの目が見開かれる!
「…あ、あいつ…!音で自分を強化してるってこと!?」
カルーアはギターをかき鳴らしながら、恍惚の笑みを浮かべる。
「ふふっ。ご名答!」
リリアンが歯を食いしばる。
(でも…まだおかしい…!わたしたちの動きはテンポがズレたまま!
そ、そうか。カルーアは──演奏の前に誰のための曲かを指定していた…!
だから効果を限定できるんだ!!!)
「いいね、いいね!痺れるビートだっ!!!」
カルーアがギターを掲げ、指先を弦へ叩きつける!
「テンポ上げていくよォォォ!!!」
ドンッ!!!
爆音が炸裂した瞬間──カルーアの体が弾丸のように加速した!!!
………
……
…
その頃… ベネットとコン太はーーー
グオオオっ!!!
リオネが体を屈め、弾丸のようにベネットとコン太に突っ込んでいく!
「なかなか速いな…だが!」
バジっ!!!
ベネットが掌からオーラの雷を放射する!!!
しかし、雷が直撃する瞬間、リオネがビョーン!と大ジャンプをした!!!
「!!!なんというジャンプ力だ!20メートルは飛んだぞ!」
リオネは宙に浮かびながらベネットとコン太を見下ろすと、掌から3つの火の玉を放った!
「!!!あっ!あの技っ!チャンスだ!」
コン太がすかさず飛び上がる!
火の玉を躱しつつリオネの眼前に跳び出すと――
「でやあっ!」
バキン!!!
右脚を3頭身の巨大な頭部に叩き込んだ!
ドゴン!!!
リオネが吸い込まれるように、石畳のステージに激突する!
「やった!」
ーーガラリ。
衝突で砕けた床の岩を押し除け、リオネがゆっくりと立ち上がる。
外見や動きにダメージの痕跡は見られないが、脇に浮かぶダメージメーターが53%から70%に切り替わった。
(く、クリーンヒットの一撃でダメージ17%…!こ、これは思った以上に頑丈だぞ…!)
「コン太、よくやった。だが、チャンスと言ったのは何なんだ?」ベネットがリオネから目を逸らさずに尋ねる。
「ゲームキャラの特性です!あのキャラは空中からでも攻撃することができますが、攻撃した後は、それ以上のアクションができないんです!つまりは隙だらけになる…ゲームの仕様と全く同じです!」
なるほど…ラフロイグの言う通り、あくまでゲームの動きを踏襲して楽しんでるわけか…。だが…。
「俺たちにゲームを楽しんでる時間はない…。とにかく遠くまでぶっとばせばいいんだったな。急いでケリをつけるぞ!」
ベネットがふわりと浮き上がると、石畳を滑るように飛び出した!
左手を大きく掲げると、スパークが弾けて集まり、弓の形を作り出した!!!
右手にも同様に、矢の形のスパークが輝いている!
「くらえっ!」
ベネットが電気の矢を放った!!!
バシュン!!!!!
《ふっ!そう来ると思ったよ!》
リオネが蹲るように体を丸めると、体全体が巨大なガラス玉のような膜に覆われた!
!!?
ビシャン!!!
電撃の矢はリオネを覆う膜の表面を滑り、背後に抜けていった!
(何っ!?バリアみたいなものか!?)
電撃が通り過ぎた瞬間、リオネがバリアを解き、猛烈なスピードでベネットの正面に飛び込んだ!
《はははっ!!!》
ラフロイグの笑い声が響く中、巨大な拳がベネットを捉える!!!
「ぐっ!」
とっさに腕を十字にしガードするも、パアン!と後方に跳ね飛ばされた!
(ちいっ!ゲームキャラのくせに、かなり重い攻撃をしやがる…!)
「べ、ベネットさん!危ない!」
「!?」
グオオ!!!
足元から燃えるような熱風が吹き上げる!
「これは!?」
石畳のステージの一部が砕け、間欠泉のようにマグマが噴出する!!!
「ぐうっ!」
空中で体を捻り、ギリギリでマグマを躱す!
(これは、このステージのギミックってやつか! はっ!?)
いつの間にか、ベネットの真上にリオネが浮かんでいた!
右腕をぐるぐると振り回している!
「なっ!今のマグマの影に隠れて飛び上がっていたのか!?」
ギュンっ!!!
振り回した腕を勢いよくベネットに叩きつけた!!!
ドッゴン!!!!!
強烈な一撃!!!
あっという間に石畳のステージに突っ込んでいった!
「うぐわっ!」
「べ、ベネットさん!よ、よくもっ!」
くそっ!
空中で攻撃したから、あいつは今隙だらけのはずだ!渾身の正拳突きを喰らわしてやる!
コン太が飛び上がろうと腰を落とすがーー
《コン太さん、今来ると危ないよ?》
!?
ヒュゴー!!!
先ほど噴き上がったマグマが滝のように降ってきた!
(そ、そうだった!このステージのギミックは二段構えなんだ!べ、ベネットさんを引き離さないと!)
マグマは石畳に横たわるベネットに向かって降り注いで行く!
コン太はベネットの腕を取り、間一髪でマグマの直撃を回避した!
ゴゴゴゴゴ…!
…!ら、ラフロイグ…!これはとんでもない強敵だ!
キャラの特性だけじゃなく、このギミックのタイミングや位置もすべて把握している!
こ、これが世界ナンバーワンのプレイヤーか!
《あはは!いいねいいね!すごい楽しいよ!》
無邪気な笑い声がステージに響き渡る。
「こ、コン太、すまない。助かった…!」」
ベネットがよろけながら体を起こす。
「ベネットさん、あいつはこのゲームを完全に熟知しています!せ、正攻法じゃ勝てない!」
コン太の額から冷汗が流れる。
「…ああ。よく分かった。ところで、コン太。あいつは宙に浮いてられるのか?」
「え?ちゅ、宙に?…い、いえ。一部のキャラはそういった特性を持ってますが、リオネにはないですね」
「そうか。こっちもギミックを仕掛けてやるか。コン太、お前は飛行の状態を維持しておいてくれ」
ベネットの人差し指からスパークが弾ける。
《ん?なになに?何か新しい作戦かな…ドキドキ》
「ふん。余裕こいてるのも今のうちだぜ…!コン太!飛べ!」
「は、はいっ!」
コン太が上空に飛び上がる!
「はあっ!」
ベネットが両手を石畳に押し当てると、青白いスパークが円形のステージ全てに走り抜けた!
バジジ!!!
ステージ上にいたリオネに電流が貫き、ダメージメーターが加算された!95%!
《おおっ!な、何これ!?新しい!》
ベネットは石畳のステージの隅々まで、超高圧電流を張り巡らせたのだ!
「…地面に立ってたら、電撃の餌食になるぜ」
《…な、なるほど!》
す、すごい!ハウスのリーダーってすごい!この短期間でリオネの特性も掴んで対応してくるなんて!
確かに、リオネは宙に浮いてられることはできないし、空中で何かしらのアクションをしたら最後、隙を晒すことになる…
そうすると、ベネットさんの上で待機しているコン太さんに攻撃されてしまう…!
ワオ!ピンチじゃん!
バジ!バジジっ!!!
「どうした、突っ立てるだけでもどんどんダメージを負ってるようだぜ」
リオネのダメージメーターは130%を超えていた。
《確かに、このままだとやばいね。じゃあっ!》
ドンっ!
リオネがベネットに向かって突撃する!
「べ、ベネットさん!あいつにはかなりのダメージが蓄積されています!一撃食わらせれば、吹き飛ばせます!」
「よし!」
ベネットが拳にオーラを集中させる!
(…だが俺も油断はせんぞ!確実に一撃を当ててやる!)
ベネットの瞳がギラリと輝く!
ゴゴゴゴゴ!
リオネが射程圏内に入る!
「吹き飛べっ!!!」
ベネットの拳がリオネの胴体に入った!!!完璧なクリーンヒットだ!
しかし…!!!
《ざんねーん!》
リオネは微動だにしない!
隙ができたベネットに対して、リオネの強打が炸裂する!
ドゴン!!!
「ぐわっ!!!」
ベネットがステージの端まで殴り飛ばされる!!!
同時に、石畳を覆っていた電流も消えてしまった…!
《ふふふ。いいね!すごくいい!楽しい戦いだよ!》
「な、なんでだ!?いまベネットさんの攻撃は完全にヒットしただろう!こ、こんなの!ゲーム通りじゃないぞ!」
《…コン太さん、それは心外だよ。僕はあくまでゲームの仕様からは逸脱していないよ》
対戦格闘ゲームの多くは、攻撃を受けたキャラに一定の無敵時間が設けられている。
スマクラも同様だ。ダメージが加算された後の0.5秒は無敵時間があり、0.5秒を超えたら次のダメージが加算される。
《この無敵時間のタイミングと、ベネットさんまでの移動時間を合わせたってことさ!》
!!!
「こ、こいつ!とんでもないやつだ!だけど…!」
リオネのダメージメーターは179%を示している。
「お前のピンチは変わらないぞ!あと一撃でゲームセットだ!」
《うん、確かに!これは結構追い詰められてるけど…。そろそろかな…》
!?
ブンっ!
ステージの上空に光が差し、酒樽のような物体が2つ出現した!
「!!!あれは!さっきの爆弾か!?」
「い、いえ!木箱じゃない!おそらくあれはーー!」
2つの酒樽がステージ上に落下すると、すかさずリオネが大ぶりのパンチで破壊した!
ポンっ!ポポンっ!
一つ目の木箱からは、一抱えもあるような巨大なマフィンが出現!
もう一つの箱からは、オモチャみたいな光線銃やハリセン、黄金色に輝く野球バットのような武器に加え、青く光り輝く球体のようなものが飛び出した!
「なんだあれは?」
ベネットが体を起こしながら目を細める。
「し、しまった!!!あれを取られると…!」
リオネがマフィンを手に取り口に放り込む!
するとー!
フォン…!
「な、なにっ!?」
リオネの横に浮かぶメーターが、急速に数値を引き下げていく…!
53%…!
「く、くそっ!あれは回復アイテムなんです!」
《ははっ!53%って、確か最初のダメージ量だよね!元に戻ってごめん!》
そして、もう一つの酒樽から飛び出た青い球体が、リオネの目の前にふわりと浮かぶ。
「!!!あ、あれもまずい!色んな武器があるけど、あれは…!」
リオネが青い球体を拳で叩く!!!
バリン!!!
ゴオオっ!!!
青いオーラが空間を駆け抜ける!
!!!
「こ、これは…!」
リオネの体から、バーナーのように青いオーラのようなものが燃え上がっている!!!
「べ、ベネットさん!あれは超必殺技を撃つことができるアイテムです!」
《ふふふ。万事休すってやつだねえ!だけどすぐに終わらしたらつまらないから、まずは…》
リオネがコン太に向かって目を光らせる!
《コン太さんにはドロップアウトしてもらおうかな!》
!!!
リオネの体の青いオーラがステージいっぱいに広がる!!!
その瞬間、ベネットとコン太の動きが固まった!
「や、やばい!」
《超必殺!ギガントフレイム!!!》
ドドン!!!
リオネの手のひらから、直径10メートルはあろう青い火の玉が放たれた!
スマクラでもおなじみの超必殺技で、ガードなしに食らったキャラは確定で画面外に吹き飛ばされるという強力な大技だ!
「速い!よ、避けられない…!」
「こ、コン太ー!!!」
ドガーーーーーーーーーーン!!!!!
空間を覆いつくすような大爆発が起こり、青い爆炎が嵐のように広がった!!!
………
……
…
ゴゴゴゴゴ…
《ははっ!残りはあと一人だね…!》
「そ、そんな!コン太!」
あ、あの爆発は尋常じゃなかった!お、俺がいながら、そんな…!
ヒュオオオオオ…
熱風が煙を引きはがしていく…
!!!
《え?な、なんで!?》
煙のベールの向こう、コン太がガードの姿勢のまま宙に浮かんでいた。
超必殺技の影響で、ブラックスーツがすべて燃え尽きてしまっていたが、コン太の全身は真っ黒いウェットスーツのようなもので覆われていた。
そして、その胸の中心には、エメラルド色の輝きが円を描いて灯っている…!
まるで小さな星のように淡く光を放ち、その中心から繊細な光の筋が放射状に広がっている。
「…え!?い、生きてる!ってこれは何!?」
自分の姿にコン太自身が驚く。
これは…!
これまでの戦いの場面でも度々あった!ぼ、ボクを守ってくれた黒い肌着…!?
い、いやでも肌着ってよりはウェットスーツ!?前よりも分厚くなってる気がする!
さらにこの胸の輝きは何!?
なんかアメコミのヒーローみたいでかっこいいけど!
「こ、コン太!そ、それは間違いない!お前のイマジネット・オーラだ!どんな力を秘めてるかは分からんが、少なくともとんでもない防御力を有している…!」
!!!
こ、これが…ボクの、イマジネット・オーラ…!
《ええーっ!そんなんありかよ!》
リオネが目の前に散らばっている、先ほどの酒樽から飛び出た武器に目を向ける!
オモチャのような光線銃を手に取ると、コン太に向かってビームを発射した!
!!!
ビームがコン太の体を貫いていく!
しかしー!
「ぜ、全然効いてない…!痛くも何ともないぞ!」
《な、なんで!?うーん、能力が発現しちゃったってことかな…おもしろいね!まだまだ長く楽しめそうじゃん!》
ラフロイグの跳ねるような声が降り注ぐ。
「…コン太…あの野郎はとことん楽しもうとしてるようだが、これ以上は遊んでられん」
ベネットがコン太に目を遣る。
「能力の発動早々で悪いが、俺がオーラを溜める時間を作ってほしい」
「…え?わ、わかりました!」
「避けられん技をお見舞いしてやる」
ベネットが体から炎のようなオーラを噴き上がらせた!
オーラにバジジっとスパークが走っていく。
《コン太さん、超必殺にも耐えたけど…こいつで叩くとどうなるかな?》
リオネが足元に転がっている黄金の野球バットを手にした。
《せっかくのアイテムも使わないと消えちゃうからね。このバットは試すにはちょうどいい!》
「あ!あれもやばい武器だ!まだ消えてなかったのか!当たったら確実に吹き飛ばされるぞ…!ま、マズい…!いや、だけど…!」
コン太が自分の体を見つめる。胸に灯るエメラルドの光が輝きを増していく!
「ボクは自分を信じるぞ!」
《ははは!いくよっ!》
リオネがバットを振りかぶりながら突撃する!!!
「うおおお!!!」
コン太もリオネに向かって飛び出していく!
「くらえっ!!!」
リオネが振り上げるバットに向けて、渾身の正拳突き叩きつける…!
ーしかし!!!
リオネがスライディングをするようにコン太の足の間をすり抜け、背後に回った!
「し、しまった!」
《たまや~!!!》
カキーーーーーン!!!
コン太のがら空きの背中に黄金バットが叩きつけられる!!!
…
《あ、あれ…。まじで。これも効かないの?》
コン太は微動だにしない…!
(な、殴られた衝撃はあるけど…。分厚いゴムの壁越しに殴られているみたいだ…)
バジン!!!!!
その時!太陽のような光がステージの端から迸った!!!
ベネットだ!
「コン太!そこから離れろ!」
「!!!は、はいっ!」
コン太がバックステップでリオネから遠ざかる!!!
「ジャンピン・ジャック・フラッシュだ!」
ベネットの右手にスパークが集まり、渦巻いていく…!
「はああっ…!!!」
スパークは米粒ほどの密度に圧縮されていく。しかし、小さな太陽のように強大なエネルギーを湛えており、スパークを吸収しながら少しずつ大きさを増していく。
超高密度の電気の弾がソフトボール大に膨らんだ…!
「くらえー!!!」
ベネットが円形のステージに電気玉を叩きつけた!
ゴオっ!!!
ステージが大きく揺さぶられる!
そしてー!!!
リオネの足元がカッと輝く!!!
!!!
ズオオオオオー!!!!!
電の竜巻が地中から出現し、リオネを暴力的な電圧の渦に飲み込んでいく!!!
ゴオオオオオー………!!!
光り輝く龍のように天に立ち昇り消えていったー!!!
………
……
…
「す、すごい…!り、リオネは…!?」
ステージ上や上空を見渡す。しかし、リオネの姿は無い…!!!
《そ、そんなっ!!!》
ラフロイグの声に被さるように、ドーン!と花火が破裂するような音が響いた…!!!
!!!こ、この音!この音は!
「キャラが完全に場外に吹き飛ばされた音だ!!!リオネを倒したぞ!!!」
コン太が腕を振り上げる!
(や、やった!ここから出られるぞ!)
「…ふう。どうやら俺たちの勝ちのようだな」
…
《ふふふ》
シュウウウ…ン
!!!
コン太とベネットの上空に虹色の光の粒子が集まり、輝く光の渦の中からリオネが出現した!
「お、おい!な、なんでもう一体出てくるんだ!」
う、嘘だろ?す、ストックがあるのか!
ダメージのカウンターも0%に戻っている…!完全復活…!つまり一からの再バトル、ということ…?
《誰も、1回勝ったら出られる、とは言ってないでしょ!》
小馬鹿にするような声色が降ってくる。
「な、なんだと!?」
《でも、何回ってのも分からないからなあ。僕が飽きるまでかな!ホント今日楽しいから、まだまだ遊びたいんだ!》
「そ、そんな…!」
こ、これじゃ終わりが見えないぞ…!あいつがゲームをコントロールしている以上、ストック数も自由自在だろう…!
しかも、どれだけゲームのキャラを攻撃しても、ラフロイグ本体にはノーダメージみたいだし…。マジであいつが飽きるか、こっちがくたばるまで、このバトルが続けられるのか…!?
「べ、ベネットさん…どうすれば?」
コン太が不安げに目を遣る。
「…ふん、これは想定内だ」
腕組みをしながらベネットが答える。
「え?じゃ、じゃあ、何か策が!」
ベネットが目を瞑って首を振る。
「…想定内だが、最悪の、な。これが最悪の想定だった。戦闘中に可能性のある策はすべて試していたんだ」
先ほどのジャンピン・ジャック・フラッシュは、攻撃だけが狙いではなかった。
強力な電磁パルスで、ゲーム内のこの空間からゲーム本体への干渉を試したのだ。
この空間は実際のゲームとオーラの世界のハイブリッド空間だ。
ゲーム本体が電気で動いている以上、内部から強烈な電撃を放てば、何らかの影響を与えられる可能性があった。
オーラの電気と現実の電気を接続できれば、ゲーム本体のリセットやシャットダウンも不可能ではないはずだった。
しかし、結論はダメだった。
ベネットの最高の技であるジャンピン・ジャック・フラッシュを放っても、現実世界との接続には一切届かなかった。
オーラとゲームの空間は完全にシャットアウトされているのだ。
おそらく外の世界からも、こちらのオーラを察知できないだろう…。リリアンとクロロの助けも得られない。
「う、打つ手なし…ですか?」
コン太の顔に絶望の色が浮かぶ。
「…ああ。物理的な手段ではもう手がないだろう」
!!!ガーン!そ、そんなーーー!!!
「そんな情けない顔をするな。すべての策がなくなったとは言っていない。物理的じゃない手段を使ってみるぞ」
「ぶ、物理的じゃない手段…!?」
思考と行動のテンポをズラす能力で追い詰められる中、自分自身を強化しさらに凶悪になったカルーア!
そして、コン太のイマジネット・オーラが開花しやっとの思いでリオネを倒したものの、まさかの復活…!
クロロとリリアン、コン太とベネット、どちらも絶対絶命のピンチ!!!
一体どうなってしまうのか!?




