ー 15 ー 最終試験④
- 最終決戦開始!!! -
クロロ「よしっ!!!」
ぎゅっと握った両の拳を、胸の前でガチっと合わせる。
クロロ「コン太!いよいよオレたちの番だっ!!!」
少し後ろにいるコン太に掛け声を投げる。
コン太「…お、おうっ!(ううっ!挑むのと怖いのはまた別なんだよな…)」
怒涛のリタイアラッシュで、残る受験者はクロロとコン太の2人のみ。
ドアの横ではモーリーが後ろ手を組みながら立っている。
モーリー「…あっ、しまった。そういえばお伝えし忘れてました…!」
クロロ・コン太「えっ?」
モーリー「陽が沈みきったら、試験終了です。それまでに羽をゲットできなかったら、失格となります」
クロロ「ええっ!うそっ!」
コン太「も、もうすぐ全部沈んじゃうんじゃ…!」
ドアをくぐった時点で既に夕方だったのだ。夕陽と反対の空は、濃い藍色に染まってきている。
モーリー「いや〜すみません。急ぎましょうか。暗くなっちゃうと、試験にならないので…」
…
クロロがぐわっと息を吸い込んだ!
クロロ「おいっ!天狗!今からおまえの羽を貰いにいくから待ってろよ!!!」
バカでかい叫び声が、断崖のあちこちに反射して耳をつんざいた。
コン太「うるせえよ!」
クロロの頭をごつんと小突く。
おおお…
天狗も未曾有の騒音に、恐ろしい顔をさらに顰めながら、ゆっくりと腰を上げた。
天狗「…ようやく殺されたい者が決まったようだな…」
岩と岩を打ち付けるような、おどろおどろしい声を吐き出した。
…
クロロ「へん、そんな簡単に殺されてたまっかよ!」
コン太「…だ、だが、クロロ。デュラムさんからのヒントはあるが…正面突破じゃ太刀打ちできないだろ…どうする気だ?」
クロロが拳をぐっと突き出した。
クロロ「そりゃもう、やっぱ真正面からぶつかるしかねえ」
コン太「えっ?」
クロロ「ほら、考えたって答えがでねえし…」
頬をぽりぽりと掻く。
クロロ「見たり聞いたりってのと実際やるのとは違うし…」
コン太「お、おまえ…!折角のデュラムさんのヒントが…!」
(しまった!こいつに聞くべきではなかった!とはいえボクにもまだ妙案が無い…!か、考えろ、考えるんだ!)
クロロ「なんかわかんないし、もう時間無いしよ!」
天狗をキッと見据え、腰を落とした。
クロロ「まっ、やってみるのが一番ってことだ!」
コン太「ちょ、おい!」
クロロ「んじゃ、いくぜ!」
言うが早いか、クロロがダッと駆け出した!!!
コン太「クロロ!!!」 (おおーい!や、やっぱりその展開かよ!)
クロロは駆けながら、拳サイズの石を拾った!
クロロ「あいさつ代わりだっ!くらえ!」
ダッシュのスピードに乗せてグワっと振りかぶると、
弾丸みたいに石を投げつけた!
ビュンっと空気を切り裂き、天狗の顔面目掛けて吸い込まれていく!
天狗「…ふん」
天狗が顔の前で、人差し指を立てる。
クロロ「!!!」
バコン!!!
人差し指に当たった石が、粉々に砕け散った!
クロロ「指一本で…!とんでもねえやつだ…!だが…!」
あっという間に間合いを詰め、天狗の懐に入る!!!
クロロ「はっ!!!」
天狗の胴体に向かって、前のめりになり両の拳をブブンっ!っと繰り出した!!!
だが、天狗は滑るように後方へステップ!!!攻撃が空を切る!!!
クロロ「へへっ、当たんないのは織り込み済みだっ!!!こっちが本題だぜっ!」
前のめりの体勢から間髪いれずにジャンプ!!!
クルクルっと空中回転して、天狗の背後に着地した!!!
クロロ「避けれるもんなら避けてみやがれっ!!!」
天狗の背中の真ん中に向かって、グワっと蹴りを繰り出す!!!
しかし!!!
フッ…
紙一重で避けられる!!!
クロロ「!!! かわされた!まるで見えてるみたいだ!どうなってやが…」
不意に天狗のかかとがクロロの顎先に向かって伸び上がる!!!
クロロ「くっ!!!」
反射的に上体を逸らしてギリギリでかわす!!!
ブンっ!
すぐにもう一方の足がクロロの鳩尾を捉えようとする!
クロロ「あぶねえっ!!!」
慌てて両手で受け止めるが、次の瞬間、肘打ちがクロロの額を襲う!!!!
バチン!!!
クロロ「ぐわっ!こ、こいつ!背中を向いてんのに…ちくしょ…!?」
メキっ!!!
視界の外から突如現れた裏拳がクロロの頬に食い込んだ!!!
クロロ「うわあっ!!!」
バギンっ!!!!!
そのまま、ドアがある付近までふっとばされた!!!
ずざざざっ!!!
…
クロロ「ぐっ…」
慌ててコン太が駆け寄る!
コン太「だ、大丈夫か?」
クロロ「や、やっぱ当たんねえな…いてて…」
膝をついて、立ち上がる。
クロロ「それにあの攻撃…!あれが妖気ってやつか…!?全く見向きもしないで正確に攻撃を繰り出してきやがった…!」
コン太「まったく、だから言わんこっちゃない…」
クロロ「へへ…でもあいつの何がどうやばいのかってのは実感できたぜ…」
血が滲んだ口元を拭った。
…
天狗「ふん、直に闇が訪れる…終わりにしてやろう」
クロロ・コン太「!!!」
天狗がバサっと翼を広げると、ギュンっと一気にクロロらの元へ飛んだ!
あまりのスピードで空気が蜃気楼のようにブレる!!!
クロロ「くっ!!!ちきしょう!」
クロロもバッとジャンプし、一直線に向かってくる天狗に掴み掛かる!!!
が、天狗が翼をはためかせ、空中で軌道を変えた!!!
クロロ「!!!」
宙に飛び出したクロロの真上に来ると、背中に向かって渾身の肘打ちを繰り出した!!!
「うわっ!!!」
ドンっ!!!!!
一瞬で地面に叩きつけられる!!!
クロロ (ぐふっ!!!)
息が止まる…!!!
立ち上がろうとするが、足に力が入らない…
そのまま岩場に倒れ込んだ…!!!
天狗は翼を開いて、空中に浮いている!!!
天狗「終わりだ…!」
顎を上に向けると、ギュンっと高度を上げる!!!
あっという間に、豆粒くらいの大きさになった!!!
そして、翼をピンと後ろに伸ばすと、地面に大の字になっているクロロに向かい、急降下!!!
キーンと大気を切り裂く音が反響する!!!
クロロ「や、やべえっ」
クロロは倒れて動けないままだ!!!!!
コン太「くっ、クロロー!!!」
ドン!!!!!
隕石が落ちたような衝撃!!!!!
落下地点から放射状に、ブワッと土煙が噴き上がる!!!!!
………
……
…
クロロ (ぶ、無事だ…)
薄目を開けて状況を確認する…
クロロ (こ、これは…じいちゃんのときと同じ…!?は、外れた…!?)
天狗の拳は、クロロの右脇の下の岩盤を打ち砕いていた!
…
山頂の風が、土煙を少しずつ剥ぎ取っていく…
クロロ「!!!えっ!?」
クロロは天狗の顔を見て、思わず声を上げた。
こ、この天狗…目線が…。目線が合ってないぞ…
オレの顔から…少しだけ…拳一つ分くらいズレた先を見てる…!?
…
天狗「くくく…残るは一人だな…」
クロロ「!!!」
し、しかも…!外したってことに気づいていない!?なんなんだ、こいつは!?
クロロがバッと起き上がる!!!
クロロ「どこ見てやがる!!!オレは生きてるぜっ!」
天狗「!!!」
クロロ「てめえの目は…」
全身に力を込めて腰を落とす!!!
「ハリボテかよっ!!!」
うなりをあげた渾身の蹴りを、天狗の脳天に叩き込んだ!!!
バゴンっ!!!!!
しかし…
クロロ「いてえ!!!」
とにかく固い!!!ガチガチの鋼鉄に分厚いゴム板を巻いたような頑丈さだ!!!
クロロ「て、鉄の塊みてえな体しやがって!!!」
半泣きで右足の甲を押さえる。
天狗「…しぶといやつめ…」
そう言って、地面に蹲って足をさすっているクロロを、サッカーボールのように蹴り上げた!
ドカン!!!
コン太「ええっ!?」
前方から凄い勢いでクロロが蹴り飛ばされ、コン太のいる位置目掛けて真っ直ぐに突っ込んでいく!
コン太が反射的に避けると、脇の石に顔面から激突した!!!
クロロ「ぶへっ!!!」
コン太「わ、わるい、つい避けてしまった!」
クロロ「い、いってててて…ひ、ひどい…」
涙目で真っ赤な顔をさする。
コン太「し、しかし、さっき天狗に直撃されたときは、死んだかと思ったぞ」
クロロ「あ、ああ、オレもやべえって思った…でもよ、あいつ…。じ、地面で殴られかけた時、目が合ってなかったんだ…。なんつーか、オレのことが視界に入ってないみたいだった」
クロロが眉をしかめる。
コン太「な、なに?そ、そんなことが…?でも…妖気があるから見なくても良いってことじゃないのか…?さっきの背を向けた攻撃みたいに…」
クロロが、うめき声を上げて立ち上がる。
クロロ「でもよ、外したんだぜ…。じいちゃんのときとまるで同じだ!それに…」
ーーー 天狗「くくく…残るは一人だな…」
クロロ「あの、攻撃が当たったかのようなセリフ…!外したことにも気づいてなかった!」
コン太 「確かに…!!!あの天狗、まさか真下に攻撃するのが苦手なのか?顔は地面に向いてた…。でも目が合ってない… 。つまり真下は見えない範囲ってことか?ま、まさかな…」
クロロ「わ、わかんねえが、オレらの常識が通用しないのは確かだな…。オレらの死角が死角じゃねえし…」
コン太が頭を抱えた…
コン太 (うう…考えろ!考えろっ!ボクらの死角は背後だが、あいつは後ろが見えてる!しかし、真下は見えてなさそう?じゃあ、足を中心に攻撃をしかければ…!
はっ!!!い、いや、いやでも違うぞ!!!!!デュラムさんの足払いは避けてたじゃないか!!!
確かにデュラムはさまざまな角度や位置から攻撃を仕掛けていた…!
そうだ、上段下段問わず攻撃を仕掛けてたはずだ…でも正確にかわしていた…!
わ、わからん、どうなってる!?ぶつぶつ…)
「コン太っ!!!!!逃げろっーーー!!!!!」
コン太がはっと我に返り横を見ると、顔を歪めて吹っ飛ぶクロロが!!!
「!!!!!」
バッと正面を振り返ると、目の前に天狗が!!!!!
いつの間に!!!!!
クロロは攻撃されたのか!?
天狗の拳がコン太のこめかみを捉える!!!!!
ガツン!!!!!
コン太「うぐわっ!!!」
視界に星がバラバラとこぼれる!!!脳が揺さぶられ、平衡感覚が途切れる…!!!
こ、これは…重すぎる…!
い、意識が飛ぶ…!!!
クロロ「このやろーーー!!!」
吹き飛ばされていたクロロが立ち上がり、足元に転がっていた石を投げる!!!
ガツン!!!!!
天狗の右耳に直撃した!!!
天狗の動きが止まる…!!!
クロロ・コン太「…えっ!?」
なんと…!
天狗の耳が…!
ボロっと崩れ落ちた…!!!
それは異様だった…土細工のように割れ落ちたのだ…
クロロ「げげっ!あ、あのその、まさか耳が取れちゃうなんて…そのごめん」
だが、天狗は身じろぎもしない…
クロロ「い、痛くない…の?」
コン太(こ、これは…!?)
その時…朦朧としているコン太の脳裏に、クロロやデュラムの声がフラッシュバックした…
…死角が死角じゃない…
…視線が合わない…
…常識が通じない…
…どこ見てやがる てめえの目はハリボテか!?…
…気がない 妖気…?でも攻撃がはずれた…
…鉄の塊みたいな体しやがって!…
…割れ落ち、くずれた耳
…痛くないの?…
…
「はっ!!!!!」
コン太「クロロっ!」
「!!!」
コン太「わ、分かったかもしれない!あいつの倒し方が…!」
クロロ「ほ、ほんとか?」
コン太「だ、だが…」
空を見上げる…
コン太「…もう陽が沈む…!この仮説が間違ってたら…は、はっきり言ってあり得ないような考えなんだ…」
クロロ「いや、コン太!やるぞっ!」
コン太「おまっ、話を聞く前から…!」
クロロ「話は後でいいさ!どんな作戦だろうと、おまえを信じてんだからよ!」
背中をばしんと叩く!!!
コン太「!!!」
クロロ「やるぞっ!!!」
コン太「お、おう!」
コン太も腹を決める!!!もう時間がないっ!!!
- 最後の作戦 -
コン太「よ、よしっ!クロロ!ボクが隙を作る!ヤツを蹴り飛ばして、あの洞窟まで吹っ飛ばせるか?」
コン太が断崖を指差した。確かに、我闘山は火山だったからなのか、洞窟のような穴が断崖の至る所に空いていた。
クロロ「す、隙を?どうやって?」
コン太「それには考えがある!クロロ、お前はあのフンコロガシの時に見せたような力を出してくれ!生半可な力じゃ吹っ飛ばせないぞ!」
ーーー二次試験…排水溝でのフンコロガシとの戦闘…。当たったら致命傷になるような黒い塊…。絶体絶命のピンチを切り抜けたのは、光の筋を纏った拳だった…!
クロロ「うっ!わ、分かったぜ…!」
クロロがギリっと拳に力を込める。
クロロ「っつっても、あん時はまぐれだったけどな…でもやるしかねえってことか…!」
コン太「とにかく、洞窟まで吹っ飛ばしてくれ!」
東側の空に星が瞬き始めた…!残された時間は僅かだ…!
コン太が両手でバシンと顔を叩いた!
いくぞっ!!!
「うわあーーーーー!!!」
コン太が天狗に向って走る!!!!!
コン太(…天狗…この仮説でいくならば…。あいつの目の位置は、なんとなくわかるが…)
岸壁をぐるりと取り囲む鳥居に目をやる。
コン太(確実に視界を奪うには…天狗をふっとばす隙を作るには!あの天狗自体を隠すしかない!!!)
天狗もコン太に鋭い眼光を放つと、ブンっと腕を振り、拳をギリリと握りしめた!!!
天狗「すぐに楽にしてやろう…」
天狗もコン太を迎え撃つために駆け出した!!!
コン太「きっ来たっ!!!」
急いで方向を変え、巨大ケヤキに向かう!!!
一次試験でも見せた風を切り裂く早足で、天狗を突き放す!!!
天狗「!!!ふん、こざかしい!!!」
バサっと翼を開き、地面スレスレをギュンっと飛び出した!!!
一瞬でコン太との距離が縮まっていく!
コン太は巨大ケヤキの前に到着すると、振り向いて天狗と対峙した!
天狗はもう目と鼻の先だ!!!
天狗「終わりだ!!!」
右腕をぐぐっと後ろに引いた!!!
コン太「いまだっ!!!」
コン太が紺色の道着を脱ぐとバッと投げた!
天狗の顔についてる目でなく、天狗を見つめる目があると思われる方角に向かって!
(これでボクへの攻撃ははずれるはずだっ!)
コン太は、さっと腰を落として、滑るように地面に座り込んだ!!!
ほぼ同時に、天狗が滑空のスピードに乗せてコン太に拳を繰り出した!!
ドカン!!!!!
天狗の鉄拳が炸裂する!!!
紺色の道着をぶち抜き、ケヤキの幹のど真ん中に直撃した!!!
コン太「やった!狙い通りだ!!!」
ブワッ!!!!!
ケヤキの木の葉が雨のように舞う!
強烈な衝撃をうけ、巨大な幹が根元からグワングワンと、折れそうな勢いでしなっている!
コン太「クロロー!いまだーーーーーっ!」
クロロ「!!!くそっ!!!」
歯を食いしばり拳にギリギリと力を入れる…!
クロロ「だめだ…!力が溜まりきってねえ…!けど…!行くしかねえ!」
ドンっ!!!
クロロが天狗に向かって駆け出す!!!
クロロ「!!!あの天狗…!どうしちまったんだ!?」
コン太が隙を作ると言ったが、確かに方向を見失ったように木の葉の雨の中を右往左往している!
クロロ「…すげえ!すげえぞコン太!確かに隙だらけだ!」
―――このチャンスは絶対に逃さねえ!
全力で走りながら、チラっと自らの右拳に目をやる。
―――絶対に合格を勝ち取るんだ!自分を信じろっ!!!
フラッシュバック!!!
脳裏に、様々な顔が飛び交った!
…村の両親、村長、そしてぴー助…
…赤髪のボスに不思議なレコード・ショップ…
…コン太、デュラム、ペンネ、太古のジャングル…
…アローハやフンコロガシの宇宙人…
…白州、そしてレノン…
オレはやるぜ!!!
できる!!!
今はできる気しかしねえんだ!!!!!
クロロの拳から、ボッと光の帯が噴き出す!!!
暗闇を切り裂く閃光のように、光の筋が走り抜ける!!!
クロロ「うおーーーーー!!!」
ドンっ!!!!!
渾身の拳が天狗の胴体の真ん中にめり込んだ!!!
無数の光が火花のように飛び散り、衝撃波が木の葉の雨を吹き飛ばす!!!
クロロ「いけえーーーーー!!!!!」
そのまま全力で拳を振り抜いた!!!
グオっ!!!!!
雷が直撃したような音が炸裂!!!
残像を残しながら、弾丸のようなスピードで、断崖にある洞窟の中へ吸い込まれていった!!!
一瞬後に、洞窟の中からズズンと衝撃が響いた!
…
……
………
洞窟まで天狗を吹き飛ばすことができたクロロとコン太…
コン太の仮説とは一体!?果たして作戦は成功したのか?
タイムリミットが迫る最終試験!次回、いよいよ決着!
そして試験中の数々の謎…古代生物…宇宙人…そして天狗… その秘密が明らかに!




