ー 10 ー 二次試験⑤
- フンコロガシ -
ビュオオオー・・・
トンネルの奥からヘドロ臭い風が吹き抜ける・・・
天井からはパラパラと砂粒が降り注ぐ・・・
砂煙の向こうには、スマホの残骸を背に、フンコロガシが怒りの表情で赤い目を光らせている。
コン太「ううう・・・!こ、こいつはヤバい雰囲気がビリビリ伝わってくるぞ・・・」
ごくりと唾を飲み込む・・・
クロロ「あ、ああ。やっぱりハッタリじゃないかもな・・・でも、ビビってばっかじゃ始まらねえ、先手必勝だ!」
バシンと両手で顔を叩く!
クロロ「いくぞっ!」
右足をぐっと踏み込み、弾丸のように飛び出した!
フンコロガシに向かって真っ直ぐに駆け抜けていく!
フンコロガシ「ふん、ガキが!切り裂いてくれるわ!」
右腕を強靭な鞭のようにしならせ、一気に振り抜いた!
クロロ「!!!」
ドゴン!
寸前のタイミングで右に飛んで躱す!
砂埃が噴き上がる!まるで棘のついたハンマーを打ちつけたみたいだ!
トンネルの床にビシッと亀裂が走る!
クロロ「あぶねえ!!!みてろっ!」
躱した勢いのまま、右側の壁を蹴ってくるんと宙返り!
フンコロガシ「!!!」
クロロはフンコロガシの頭上だ!
クロロ「くらいやがれっ!」
全体重を乗せて、フンコロガシの後頭部へ右足を思いっきり叩きつける!!!
クリーンヒットだ!
しかし・・・!
クロロ「いっ、いってえええ!!!」
右足を押さえてぴょんぴょん飛び回る。
クロロ「なな、なんて硬さだ!!!ん?」
ズドン!
フンコロガシの右腕が振り下され、噴煙が舞う!
クロロ「っぶねえ!ちきしょー」
体勢を立て直すと、再び壁を蹴って飛び、フンコロガシの背後にストンと着地をした!
クロロ「うおらあああああ!」
ぐるんと体を捻り、フンコロガシの背中に渾身の回し蹴りを叩き込む!
しかし、後頭部同様、鋼の壁のような装甲により弾き飛ばされた。
クロロ「ぐわっ!!!だっ、ダメだ!」
フンコロガシ「ふん、今のが攻撃か?ぬるいわっ!!!」
ブンっと唸る音とともに、鋼鉄の角材で打ちつけられたような衝撃が全身に走る!
クロロ「うわあっ!!!」
ズザザっ!
排水溝の床を滑り抜け、コン太の足元まで吹き飛ばされた!
どうやら脚で蹴り払われたようだ。
コン太「クロロっ!だ、大丈夫か!?」
起きあがろうとするクロロに駆け寄る!
クロロ「あ、ああ・・・。い、いてて・・・しかし、あ、あの野郎・・・鉄の塊みたいだ・・・弱点はないのかよ・・・」
コン太「じゃ、弱点か・・・」
フンコロガシをキッと睨みつける。
コン太「よ、よしっ、ボクが行ってやる!」
クロロ「こ、コン太・・・!?」
コン太「甲虫の装甲は、背中側より腹部側の方が薄いはずだ・・・それに」
そう言ってニヤリと笑った。
コン太「それにボクには・・・この必殺技がある!」
グッと右拳を握りしめる。先ほどクロロの窮地を救った正拳突きだ。
コン太「この一撃でKOしてやる!いくぞっ!」
クロロ「お、おい・・・!」
コン太「うわあああああ!!!」
土を蹴り飛ばし、フンコロガシ目掛けて、全力で走る!
クロロ「こ、コン太!き、気をつけろ!」
クロロが上体を起こしながら叫ぶ!
コン太「わかってるっ!」
コン太は走りながら、トンネルの壁にこびりついている乾いたヘドロを左手で掴んだ!
フンコロガシ「返り討ちにしてくれるわ!」
コン太はフンコロガシの真正面!
まるで子供とプロレスラーのような体格差だ。
フンコロガシがググっと両腕を持ち上げる!
コン太「いまだっ!」
先ほど掴んだヘドロをフンコロガシの顔面に投げつけた!
フンコロガシ「ぐっ!」
顔をそむけ、一瞬ひるんだ!
コン太「ふ、ふん!視界を奪うのは護身術の基本だ!(習っておいてよかった・・・・!)くらえっ!」
コン太が右腕をぐっと引き、力を込める!
コン太「はあっ!」
渾身の正拳突き!フンコロガシの腹部にズドンと鈍い音を響かせる!
コン太「まだまだっ!」
すぐに構えを整え、同じ箇所に再度突きを叩き込む!!!
ズドン!!!
コン太「ははっ!どうだっ!これに懲りたらもう2度とこんな・・・」
「かゆい」
コン太「え?」
恐る恐る視線を上に向けると、怒りで引き攣った顔のフンコロガシと目が合った。
フンコロガシ「つまらん真似をしたな、小僧」
コン太「そ、そんな・・・お、お腹も丈夫なようで・・・」
全くダメージを与えられていないようだ。全身を冷や汗が伝う・・・。
フンコロガシが、先ほどのコン太のように、右腕を背後に伸ばす!
フンコロガシ「ふん・・・こうだったか?」
コン太「あ、あの・・・。もしやあなたも正拳突きを・・・?」
両手を上げながら後退りをするが・・・
フンコロガシ「うおらあああ!」
フンコロガシの正拳突きがコン太の顔面を捉える!
コン太「ぶへえ!」
ホームランボールになったかのように吹き飛ばされ宙を飛んでいく!
クロロ「コン太っ!ぐっ!」
クロロが全身に力を込めて起き上がり、吹っ飛ばされたコン太を受け止める!
ズザザザっ!
二人ともトンネルの床に倒れ込んだ!
クロロ「コン太っ!しっかりしろ!」
コン太「ううう・・・い、痛すぎる・・・!で、でもな・・・わかったぞ、あいつの弱点・・・」
クロロ「え・・・!?」
コン太「な、殴られてピンときたんだ・・・!か、関節だ!関節はどんな虫だって弱点のはずだ・・・!か、関節にダメージを与えられれば、動きを止められるぞ!」
正拳突きでピンと伸び切った右腕・・・強固な装甲に隠れた関節部分は比較的脆いように見えた!
クロロ「よしきた!まかせろ!」
ビリビリビリ!
ボロボロになったシャツを破り捨て、もう一度気合いを込めてフンコロガシの前に立った!
クロロ「やい!コン太の仇だ!覚悟しろ!」
コン太(い、いや、ボクは全然生きているが・・・!)
- 弱点 -
クロロ「やあっ!!!」
トンネル内を左右にステップを踏みながら、フンコロガシに近づいていく!
フンコロガシ「まだ向ってくるか!うろちょろと鬱陶しいガキめ!」
両腕を伸ばし、クロロに掴みかかる!
クロロ「!!!」
脚の装甲の隙間から、関節が見えた!
クロロ「いまだっ!」
ステップの反動を利用し飛び上がると、右腕の関節めがけてピンポイントに蹴りを叩き込んだ!!!
フンコロガシ「ぐわあっ!」
クロロ「!!!やった!」
コン太「!!!効いたぞ!」
フンコロガシが右腕を押さえながら後退りをする!
クロロ「一気に畳み掛けてやる!」
壁を蹴って跳び、フンコロガシの背後に着地すると、左脚の膝裏を蹴り上げた!
フンコロガシ「ぐぬっ!」
思わず膝をつく!
クロロ「よしっ!この調子で動けなくしてやるぜ!」
さらに追撃をしようとしたその時・・・
フンコロガシ「ぐおおおおお!!!」
突然の咆哮!!!
衝撃波にトンネル中が震え、いくつかの照明がバリンと砕け散った・・・!!!
フンコロガシの咆哮は排水溝の外にいるアローハにまで届いた。
アローハ「な、なんだ!?いまのは?あ、あいつらか・・・?」
排水溝を覗き込む。
アローハ「おーい!早くしてくれー!!!マジでもう時間がないんだー!!!おーい、おーーーい!!!」
しかし、その叫びは虚しく闇に吸い込まれていく・・・
ビリビリとした空気の振動がトンネル中を揺らし、舞い上がった砂埃が視界一面に広がる・・・。
コン太「あっ!」
砂埃の向こうからクロロが飛び出してきた。
コン太「クロロ!!!大丈夫か!?」
クロロ「ああ、平気だぜ!関節作戦は成功したけど、あいつ、何か企んでそうだ!」
コン太「そ、そうだな、なんだか様子がおかしい・・・」
ごくりと唾を飲む・・・
フンコロガシ「貴様ら・・・いよいよ本気で俺を怒らせたな・・・」
フンコロガシが右腕をゆらりと掲げた!
フンコロガシ「はああっ!!!」
コン太「な、なんだ?」
コン太の足元から、何やら黒い粒のような塊がふわりと浮かび上がり、フンコロガシのほうへ引き寄せられていった。
クロロ「!!!」
それは異様な光景だった。コン太の足元だけじゃない。
トンネルの壁や床、あらゆるところから黒い粒が浮かび、まるで黒い雪のように静かに、フンコロガシの元へと集まっていく!
コン太「お、おい・・・!これは一体・・・!」
クロロ「あっ!こ、コン太!あれを!」
フンコロガシが掲げた手のひらの数センチほど上、集められた黒い粒が、ソフトボール大の塊を形成していた。
ゴゴゴゴゴ・・・
フンコロガシ「くらえっ!」
振りかぶって、黒い塊をクロロらに向かって放った!
クロロ「あぶない!!!」
クロロとコン太が左右に避ける!
凄まじいスピードだ!
塊は、二人の間を一瞬で掠めると、トンネルの壁に当たって爆発した!
- 奥の手 -
コン太「あ・・・あ・・・」
塊が爆発した箇所・・・トンネルの壁に大きな穴が開き、黒い煙が立ち上っている!
クロロ「な、なんだこれは・・・!こ、こんなのアリか? あ、当たったらタダじゃ済まないぞ!」
きっとフンコロガシを睨みつける!
クロロ「くそ・・・奥の手ってやつか・・・? 本気でやばそうだな・・・!」
フンコロガシ「ふん!2匹まとめて仕留めてやろうと思ったが、すばしっこい奴らだ」
再び腕を掲げた。黒い粒が吸い寄せられていく。
どうやら、トンネル内の塵や埃などを吸い上げているようだ。
塊はみるみるうちに大きくなり、先ほどよりさらに大きく、バレーボール大に膨らんでいる!
フンコロガシ「まずはてめえ!黒髪の方からあの世に送ってやろう!」
フンコロガシが鋭い眼差しでクロロを睨みつけた!
クロロ「!!!」
フンコロガシ「おらっ!」
クロロを目掛けて黒い塊を放つ!
塊は、クロロに向かって弾丸のようなスピードでまっすく飛んできた!
クロロ(やべっ!避けるのは間に合わねえ!・・・弾く!)
着弾の瞬間! 左手を突き上げ、塊を弾いた!
塊の軌道がわずかに上に逸れ、天井の付近で爆発した!
ズズン・・・
トンネル内に振動が走る・・・
フンコロガシ「・・・!!!こ、この小僧!お、俺のダストボールを弾きやがった!」
クロロ「はあっ、はあっ・・・」
コン太「く、クロロ!大丈夫か!?」
クロロが左腕を見つめる・・・弾いた衝撃で痺れ、感覚が無くなっている・・・
しばらくは使い物にならなそうだ・・・
あの塊・・・爆発するだけじゃなく、鉄球みたいに重い!
クロロ「く、くそっ!今のはなんとか弾いたが、まぐれ当たりみたいなもんだ・・・こ、今度同じのがきたら、今みたいにできる自信はねえ・・・!」
コン太「そ、そんな・・・え?お、おい!あ、あいつ・・・!」
コン太が驚愕の表情でフンコロガシを見つめる。
クロロ「う、うそだろ・・・!?」
- 絶体絶命 -
ゴゴゴゴゴ・・・
まるで阿修羅像のようだった。
4本の腕を掲げ、4つの黒い塊が禍々しく膨れ上がっている。
フンコロガシ「ふん、こいつで終わりにしてやろう!」
4本の腕をスッと後ろに逸らす・・・
フンコロガシ「消えされっ!!!」
ブワッ!!!
4本の腕が4つの塊を同時にぶん投げた!
クロロ「!!!」
4つの塊はクロロを捉え、真っ直ぐ空を裂く!
クロロ「くそっ!コン太っ!オレから離れろっ!!!かっ賭けだっ!!!全部弾き返してやる!」
左腕は相変わらず力が入らない・・・残った右の拳をぐっと握りしめた!
ドクン!
塊がうなりを上げて迫り来る!!!
ドクン!
一転、視界から色彩が抜ける!彩度が消えたセピア色の世界!
ドクン!
波を引くように音が消える・・・
穴から覗いた景色のように視界がぎゅっと狭まる・・・
ドクン!
そして・・・全ての動きがスローモーションに変化する・・・!
こ、これは・・・!
前にも似たような感じがあった・・・!あれは、オレがもっと幼いころ、
山で「ぴー助」の親と対峙したとき・・・あのときだ・・・!
あのとき・・・そうだ・・・あの時感じたのは・・・
クロロの全身から蒸気のように恐怖が噴き出し、冷や水を浴びたかのような悪寒が駆け抜ける・・・!
死!
とんでもないくらいに真に迫った、死の感じ・・・!
これも同じ・・・!
つまり・・・
しくじったら、死だ・・・!
スローモーションになった世界で、一つ目のボールが到達する!
無意識のうちに左腕を振り上げて弾く!
衝撃が走り抜けるが痛みはない。先ほどからの痺れの影響か、極限状況によるものかはわからないが・・・
しかし・・・!
残り3個のボールが眼前に迫り来る!
その先には、クロロの頭部、上半身、下半身・・・!
残った右手でどれか一つを弾いたとしても、致命傷は避けられない・・・!
3つの塊が一気にクロロへと襲い掛かる!
完全にやばい・・・! し、死ぬ・・・!?
い、いや・・・!死ねない!
こんなところでは!!!
衝動的に右の拳に全ての力を預け、ぐぐっと握りしめた!!!
そして・・・!
握りしめた拳がぼんやりと輝き、わずかに・・・ほんのわずかだったが、
湯気のように一筋の光が立ち上った!
クロロ「うわあーーーーー!!!!!」
ボボボッ!
拳が分裂したかのように見えたと思ったら、花火のような閃光がいくつも炸裂した。
そしてその一瞬後に、風船が割れるかのように3つの塊が粉砕!!!
ボボボンッ!!!
一呼吸置いて塊が粉々になる音がトンネル内に響いた!!!
フンコロガシ「!!!何っ!?」
コン太「く、クロロ!!!」
シュウウウ・・・
あまりのスピードと威力からか、トンネルを通り抜ける風に乗り、焦げたような匂いが
鼻腔をくすぐった・・・
クロロ「・・・!!!」
いつの間にか視界は晴れ、スローモションの世界が終わっていた・・・
コン太「く、クロロ!お、おまえ・・・一体何を・・・?」
クロロが右の拳を見つめる。
クロロ「わ、わからねえ・・・」
拳には傷も痛みもない・・・
無意識だった。わずかに光のようなものが拳を包んだあと、気がついたら閃光とともに塊は粉々になっていた。
拳から立ち上った光。それは見覚えがあった・・・そうだ、レノンが猛獣化した「ぴー助」の親を吹っ飛ばした時だ!
あの時、確かレノンの身体中が湯気のような光に包まれていた。
今回、拳をわずかな光がよぎった程度だったが、これはもしや・・・
これが、オーラ?
オレもオーラを使えたのか・・・?
- 一か八か -
コン太「クロロっ!!!」
コン太の叫び声でハッと我に帰った!!!
コン太「お、おいクロロ!さ、さっきの技、も、もう一回できるか・・・?」
クロロ「えっ・・・?」
コン太「あれをっ!!!」
コン太が指差した先・・・!
4つ5つどころじゃない・・・!
視界がドス黒く染まるくらいに、黒い塊が浮かび上がっている!!!
しかも!
先ほどのような球体ではなく、鋭利な刃物のような形状だ!!!
クロロ「う、うそ・・・!」
フンコロガシ「イライラさせるガキどもだっ!!!まだ他に手を隠しているかもしれんが、残念だったな!これでバラバラの肉片にしてくれるわ!!!拳で破壊もできんぞ!!!」
ビシィッ・・・
空間を埋め尽くすほどの黒いナイフが次々と生成され、クロロとコン太に刃先を向けている!
コン太「くっクロロっ!!!おい!は、はやくさっきの技でこれをどうにかしてくれ!!!」
クロロ「ば、ばかっ!さっきはまぐれだ!ど、どうやったかってオレにもわからねえよ・・・!」
コン太「お、おい、それってまさか・・・詰みってことか・・・そ、そんなあ」
フンコロガシが赤い目でニヤリと笑う・・・
フンコロガシ「ふふふ・・・万策尽きたようだな・・・奇跡は2度と起こらんぞ!!!」
フンコロガシがぐわっと腕を振り上げた!!!
コン太「う、うわ〜、し、死にたくないよ〜!!!」
クロロ「!!!そ、そうだっ!!!おいコン太っ!!!」
振り向きながら腰を落とす。
クロロ「い、一か八かだっ!!!コン太っ!すぐオレの後を付いて走れっ!!!」
コン太「ええっ!!??」
クロロ「いくぞっ!!!」
言うが早いか、ナイフに向かって駆け出した!!!
コン太「おいっ!!!く、くそっ!!!」
コン太もクロロの後に続く!!!
そしてっ!!!
クロロがポケットからオレンジ色の飴を取り出した!!!
口をあんぐりと開けて、2個を放り込む!!!
フンコロガシ「死ねえっ!!!!!」
フンコロガシが振りかぶり、無数のナイフが一斉にクロロら目掛けて突き進む!!!
その時っ!!!
ググンっ!!!
爆炎が噴き出すようにクロロが巨大化!!!
巨大化の勢いのまま、ダンプカーのような大きな拳を前に突き出す!!
半分にした爪楊枝みたいなナイフ群は、巨大なゲンコツの前ではあまりに無力!!!
霧を振り払うようにナイフが弾かれ、圧倒的な拳の壁が、あっという間にフンコロガシの眼前に迫る!!!
フンコロガシ「うそ」
そのまま容赦なく、フンコロガシをぶん殴る!!!
クロロ「まだまだっ!!!」
巨大化した勢いのまま拳を天井に突き上げたっ!!!
・・・・・
・・・・
・・・
排水溝の外ではアローハがゴロンと地面に横になり、虚な目で流れる雲を見上げていた。
どうやら遅刻確定で諦めの境地、悟りモードに入っていたようだった。
ビリビリ・・・
アローハ「あはは、綺麗な波だね。久しぶりだよ、ワイキキ・ビーチのエメラルドは・・・あはは・・・おい、待てよ〜、あはは・・・」
ビリビリビリ・・・!!!
アローハ「あはは・・・んん?なんだ?僕の妄想を邪魔するのは・・・?」
ゴゴゴゴゴ!!!!!
アローハ「なんだなんだ!!!??」
慌てて起き上がると、排水溝の脇の地面が地面がこんもりと盛り上がってきているではないか!!!
一体これは・・・!!!
そしてっ!!!
ドンっ!!!
轟音とともに、噴火のように土が空高く噴き上がる!!!
アローハ「うわあー!!!」
どしんと尻餅をつく!!!
噴煙の中から、クロロがぴょんと飛び出してきた!
元の大きさに戻っている。身体中汚れてボロボロだ。
クロロ「おまたせっ!!!」
肩の上には未だ小さいままのコン太がしがみついている。
クロロ「ほれ、これだろ、おまえのスマホ」
クロロが手を開くと、うさぎ型のケースに入ったスマホが!
アローハ「おおっ!これだ!まさに!僕のスマホだ!」
アローハが駆け寄る!
クロロ「へへん!よかったな!」
- 報酬 -
コン太もオレンジのアメを舐め、元の大きさに戻った。
コン太「ひえ〜、ほ、ほんとに死ぬかと思った・・・」
クロロ「あはは、一か八かの賭けだらけだったけど・・・まあ結果オーライかな!出口は間違えたけど・・・」
クロロが排水溝の脇に目をやる。
ぽっかりとした大きな穴が空いていた。
巨大化の勢いが乗った拳でトンネルの天井を突き破って出てきたためだ。
アローハ「まずは感謝する!しかし、ずいぶんと時間がかかったもんだな・・・残念ながら完全に遅刻だ・・・」
がっくりと肩を落としながら言う。
クロロ「ち、遅刻!? そ、それは悪かったな・・・なんだか、割といろいろあってさ」
ズボンのポケットから伸びきっている3匹の虫型宇宙人を引っ張り出した。
アローハ「な、なんだこいつらは!?」
コン太「なんとかファミリーの下っ端みたいだが・・・こいつらがあんたの足を引っ掛けてスマホを奪ったようだ」
クロロ「こいつらがとんでもなく手強くてさ・・・そんで時間がかかっちまった」
アローハ「ぐぬー!!!やっぱりか!!!そうか、そうか、状況はよく理解したぞ!」
アローハがつかつかと歩き、フンコロガシを蹴っ飛ばした。
アローハ「こいつら、完全に気絶してるようだな!よしっ!こいつらを連れて帰ろう!この遅刻をこいつらのせいにすれば、僕はお咎めなしになる!!!ふふふ、こいつらは地獄をみるぞ〜」
そう言って、落ちていた紐で3匹をぐるぐる巻きにした。
クロロ「そ、そんなにやべえ奴なんか?女王ってのは・・・?」
アローハがブルっと身震いをする。
アローハ「それ以上は言うな!思い出したくない!どれだけ恐ろしいか・・・そういえば僕の先祖が昔、地球でどこかの少女と地底で冒険したらしいが・・・それが伝記かなんかで残ってるんじゃないか?それを見れば怖さがわかるだろう」
コン太(ううん?これは本当にあの小説っぽい感じがするが・・・いやいや、それよりもだ!)
コン太「おほん、じゃあこれで一件落着ってことだろ!?ボクたちも時間が迫ってるからさ、あの、報酬を・・・」
アローハ「おっと、そうだったな、ほれ、これだ」
そういって、ポケットからオレンジの飴を取り出した。
アローハ「まだたくさんあるから、好きなだけ持っていくといい」
コン太「ええっ!?ちょ、ちょっと待って・・・!飴が報酬だって?ぎょ、ギョランじゃないの?」
コン太が飛び上がって叫ぶ。
アローハ「えっ!ギョランが欲しかったのか!?それは悪いが持ってないな」
コン太「そ、そんな!は、話が違うぞ!」
アローハ「何?人聞きが悪いな、話が違うことはないぞ、いつ僕がギョランを渡すと言った?」
アローハが人差し指を立てて言う。
コン太「うっ!そ、そうかも・・・(し、しまった!た、確かに報酬をもらうという話をしたが、ギョランだと確認取ってなかった!つ、詰めが甘かった!)」
クロロ「が〜ん!!!そんな・・・」
二人はクラクラと頭を抱えた・・・。
アローハ「正直、ここまでやってもらった以上、とことん協力してあげたいところだが、本当にギョランは持ち合わせていないんだ。・・・それに、それ以上に早く向かわないとヤバイ」
アローハがくるんと尻尾を向けた。
アローハ「んじゃ!もう僕はいくよ!こいつらを引っ張っていかなきゃならないし!」
3匹を結んでいる紐を手に取ると、虫たちを引きずって、ぴゅーっとかけて行ってしまった。
クロロ「ま、参ったなあ、こりゃ・・・」
コン太「ま、まじか・・・これだけ苦労して・・・とほほ」
クロロ「・・・し、仕切り直すしかないな!ま、まだほんのちょびっとだけ時間あるし・・・じ、自信はないけど・・・」
大通りに向かいながら、オレンジの飴玉を指で弾いた。
その時、背後から声をかけられた!
***「ねえっ、そこの人〜!」
***「ねえねえっ」
子供の声・・・?
振り向くと宇宙人の家族連れがこちらを見ていた。
魚に手足を生やしたような外見・・・両親と姉妹・・・?か兄弟か? とにかく4人連れだ。
この家族、どこかで・・・
クロロ「あっ!そうだ、はじめてこのコミュニティ・エリアに入った時、目の前を歩いて行った・・・」
コン太「ああ・・・そういえば。泣いてグズってたから記憶に残っているな・・・」
確か・・・
・・・・
・・・
”え〜ん!え〜ん!こんなのやだよ〜あっちのキラキラした橙色の飴ちゃんがよかったよ〜””わたしもやだ〜”
魚姉妹(姉)「あっ!やっぱりだ!あの人たち、橙色の飴ちゃん持ってる!」
魚姉妹(妹)「欲しい欲しい!これいらないの!」
魚両親(母)「こらっ!だめでしょ、あの人たちのものなんだから。これで我慢しなさい!」
魚両親(父)「ははっ、すいませんね、騒がしくて」
魚の父親のがクロロたちに向かって頭を下げた。
だが、クロロたちは目をまんまるにしていた。
クロロ「お、おい、コン太・・・これは・・・!」
クロロとコン太が、魚家族に駆け寄る!
コン太「な、なあ、この飴が欲しいのかい?」
魚姉妹(妹)「うん!欲しい!これやだの。その飴ちゃんがいいの!」
コン太「じゃ、じゃあ、この飴とそれ、交換しないかい!?」
魚姉妹「やったー!いいの?」
魚両親(母)「えっ、ほんとにいいんですか?その飴、いますごく流行ってるでしょう」
クロロ「い、いや、いいんだ!オレたちはむしろ、そっちが欲しかったし!」
そう言って、魚姉妹が手にしている虹色キューブを指差した。
魚両親(父)「おお、それはそれは、こんなキューブでなんか申し訳ないですが・・・」
クロロたちは魚家族に満面の笑みで手を振った。
二人の手には虹色キューブが!!!
クロロ「やったな!!!」
コン太「ああ、こんなことがあるなんてな!」
二人はニカっと笑いながら、拳を合わせた!
クロロ・コン太「二次試験クリアだぜっ!!!」




