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 急いで向かったのは侯爵家の本邸だ。


 セレナの大体の居場所が分かったとはいえ、指し示している居場所は高位貴族が多く住む辺り。

 ひとりでむやみやたらに探し回っても非効率だ。

 セレナがいる場所はこの実家から近いようだし、今や暇を持て余している父や侯爵家の影などにも協力してもらおうと思ったのだ。

 

 急に帰って来た当主に使用人たちが慌てているが、そんなもの構っていられない。

 手短に父の居場所を聞き、書斎に向かって急ぎ足ですすむ。

 ノックをして、返事を待たずに書斎の扉を開ける。


「おや?慌ててどうした?」

「セレナが攫われたようです」

「なんだって!?居場所は?魔石は渡してあったんだろうな?」

「もちろん」

 

 本棚の中にある地図を広げて、先ほど確認した場所を指し示す。

 そこには5軒の貴族の家がある。


 書斎のドアを閉めることも忘れていた。

 尋常ではない雰囲気で突然帰って来た当主に困惑した使用人たちが、俺の後をぞろぞろついて来ていたらしい。

 父だけでなく、セレナが攫われたと聞こえた使用人たちも地図を覗き込んでいる。

 

「範囲が広いな」

「ネックレスが引きちぎられていて。ピアスだけで特定しなければなりませんので」

「そうか」

 

 地図を見ながら父は何やら思案しているようだった。

 その間に、もう一度ピアスに魔力を込めて居場所を確認する。

 移動している可能性も考えたが、最初に確認した場所から動いていないようだった。

 

「居場所は最初に確認したときから変わっていないようです」

「――……ここが怪しいな」

 

 父が地図上を指し示す。

 皆がぐっと地図に近づいて、その指が指す場所を見た。

 

「まさか!?」

「フェリクスの魔力が増大した秘密を探っていた。セレナちゃんが癒しの力を持っている事が関係していると思ったらしく、嗅ぎまわっていると報告があったんだ」

「だからセレナを攫ったというのですか?」

「一昨日、フェリクスが嫁に逃げられたって本当か?とヘラルドが聞かれたらしい。確かな情報が得られていなかったとしてもフェリクスの魔力増大を目の当たりにしたら、欲しくなったのだろう。誰かに取られる前に」



 ◇



(だるい。腰、痛い……ここは?)

 

 実家の裏にある小さな畑で雑草取りをしていたら、後ろから何かの術を掛けられた。

 足音もしなかったのに、いきなりすぐ後ろに人がいるような気配がして、咄嗟に後ろを振り向いた。


 眠らせる魔術だったみたいだが、私が振り向いたせいか的が少しずれてしまったのだろう。

 一瞬で物凄い睡魔に襲われたけど、ただ事ではないと思って必死に耐えた。  


 私に術を掛けた人物は、私が眠らなかったことに舌打ちをしたけど、ぎりぎり起きているだけの状態の私を俵のように担ぎあげた。  

 このままでは駄目だと裏門の辺りで暴れたら、担ぎ上げられていた肩から地面に落ちて、腰を強打した。

 また担ぎ上げようとするのを必死に抵抗したが、抵抗虚しく、今ここ。

 

 攫われたという事実は理解できるが、理由は全く分からない。

 攫ってまで物にしたい美女でもなければ、身代金を要求するような実家でもない。

 犯人が平民だったら貴族ならみんな裕福だと思っているかも?と平民犯人説が浮かぶもすぐにその節はないだろうと思う。 


 今、私がいる部屋は明らかに貴族の家っぽい。

 それも裕福な貴族だ。

 私の実家のように質素感がなく、ハーディング家別邸のように置いてある家具も調度品も高そう。

 そうなると、フェリクス様やハーディング家の敵……?


 まだ覚め切っていない頭ではよく考えられなかった。

 

(離婚の手続きはしていないけど、私を攫っても何のうま味もないのに……フェリクス様……)

 

 睡眠の魔法がまだ効いていたセレナは再び眠りに落ちて行った。

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