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本日2話目です。

 もしも、セレナが俺以外の男に心を寄せるようなことがあれば……。

 どこかに閉じ込めてしまいたい。

 俺以外の事なんて考えなくて良い。

 俺とだけ生きて行けば良いんだ。

 俺なしでは生きて行けないようにするにはどうしたら良いんだろう。


 でも、初めて会った時のように、自由に動き回っていて欲しい。

 不自由な思いはさせたくない。

 セレナの思うように暮らさせてあげたい。

 俺が幸せにするから。

 セレナがずっと幸せに暮らしていける様に。

 ずっと俺の隣で笑っていて欲しい。



 目を瞑ってセレナの事ばかり考えていると、馬車がとまった。


 最近、ずっと遅くて夕食を一緒に食べることもできていなかったので、今日は早く帰って来たのだ。


 御者がドアを開ける時間も惜しいと思って、自分で内側からドアを開けて馬車から飛び降りる。


 


 玄関にはセレナの姿があった。

 でも俺を出迎えに来てくれたわけではないらしい。



 その男は誰だ?

 どうしてその男に笑いかけている?

 俺が帰って来たのに、どうしてこちらを見ない?

 昨日、男と会ってないと言ったのは嘘か?

 先週も嘘だったのか?

 


「セレナ!!」


 

 裏切られたと思った瞬間、魔力が暴走した。


 急に増えた魔力量をコントロールする訓練は毎朝少しずつしていた。

 多少の感情の揺れ位なら大丈夫でも、冷静さを欠いたら暴走するらしい。


 無意識に男を敷地外へ弾き飛ばしていた。


 俺の怒声にびくりと肩を揺らしたが、突然男が目の前から消えたため、セレナは目を丸くして辺りをきょろきょろとみている。


(俺よりも、消えた男が良いのか?)


 

 気が付けば、セレナの腕を引っ張って寝室に連れて行き、ベッドに押さえつけていた。



「あの男が良いのか?昨日も嘘を吐いていたのだろう?」

「な、なにを……?」

「誤魔化すのか?俺の事を騙して楽しいか?」

「どう、したの」

「男と会ってないと言って、会っていたんだろう!しかも!この家にまで連れてきて!」

「ちが――」

「まさかこんなに尻軽な女だとは思わなかったな。これまでも連れ込んでいたのか?どこでした?まさかこの寝室に連れ込んでいないだろうな?俺が留守がちなのを良い事に、よろしくやっていたのか!?」


 ハッと冷静になった時には、セレナは小さく丸まって震えていた。

 言葉の暴力に、漏れ出る魔力に怯えたのだろう。


 


 あぁ、終わった……。

 もう、だめだ。

 こんなところ、いたくない。


 それから1カ月、俺は家に帰らなかった。


 


 その間、執事から何度も何度も帰宅するように催促された。

 弟が宰相補佐官室まで来て家に帰るようにわざわざ言いに来たので、仕方なく一度帰ることにした。

 でも、なるべくセレナとは顔を合わせたくなくて、夜遅く帰った。きっともう寝てるだろう。


 酷いことを言ったけど、別れると言われたら本当に立ち直れなくなる自信があった。

 でも、近くにセレナがあると思うと一目見たいと思ってしまう。後でそっと寝顔を見るくらいは許されるだろうか。


「おかえりなさいませ。お食事は」

「いらない。客間で良い。寝る準備だけしてくれ」

「それでしたら、主寝室でおやすみください」

「……会いたくない」

「その心配はございません。奥様でしたら先日出て行かれましたので」


 執事があっさりとセレナが家を出たと言う。


「は?…………」


 振り返って執事の顔を見ると、その目にはありありと非難が浮かんでいた。



 自分だって家に帰っていないのに、出て行かれたことにショックを受けた。


 もう修復できないのだろう。

 短い夢だったな。


 セレナがいない家に帰ってくる意味はあるのだろうか。


 


 ◇


 


「ん……?」



 手を伸ばすが、そこにあるはずの温もりが見つからず、漸く目を開ける。


(はぁ……。そうだった)


 朝、目を覚ますとセレナを抱きしめようと、無意識に手がセレナを探してしまう。

 そして、伸ばした手が冷たい布団に当たると絶望にも似た気持ちになる。


 夢の中のセレナは、俺に向かって笑ってくれるのに。

 


 詐欺事件の後処理も漸く目途がついて、少し早く帰れるようになったし、休日もちゃんと休める様になったのに。

 早くセレナとゆっくり過ごしたいと思って、頑張っていたのに。


 セレナがいない。


 

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