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本日2話目です。

 魔術師団の部屋のドアがノックされて、誰かが「どうぞー!」と声をかける。

 遠慮がちにドアが開いたかと思ったら、ミルクティー色の髪にグリーンの瞳の女性がドアの隙間から顔を出した。


「あの、こちらが魔術師団で間違いないでしょうか?」

「どうしました?」

「針子部屋から来たのですが、魔石ボタンへの魔力の付加をお願いします」


 書類仕事に飽きていたので、一番奥の席からぼーっと入り口でのやりとりを見る。


 魔石ボタンへの魔力付加か。

 この城で働く者は例外なく所属先の制服を着ている。

 その制服に魔力が付加された魔石ボタンを取り付けてあるのだ。

 制服でどこの所属かすぐに判断できるようになっているが、魔石ボタンを調べればその制服を着た人がどこを出入りしたのか確認できる。


 城の中には入れる人が限られた場所もあるし、縫い付けられた魔石ボタンで出入りできる場所のカギ代わりにもなっている。

 入場権限のない人がその場所に入ろうとすると、見えない壁にぶつかって入れないのだ。


 先日、武術大会があったから、制服をダメにするやつも多かったのだろう。

 それで、魔石ボタンが足りなくなったんだな。


「じゃあ、この依頼書に記入をお願い」

「分かりました」


 そろそろ、ちゃんと仕事をするかと手元の書類に視線を落とす。


「え!君、ハーディング家の人なの?」


 手元の書類に集中し始めた頃、そんな声が聞こえてきた。


(家の人間?見たことない顔だな……)


 本家の人間として、一族の顔は集まりに顔を出さない小さな子供以外はほぼ頭に入っている。

 けれど、入り口付近で書類を書いている娘は見た事がない顔だった。


 書類を書いている女性の方へ近づいていくと、女性が顔をあげた。

 近くでみても見たことがない顔だし、俺の顔を見ても何も言わない。


(怪しい)


 彼女が書いている書類を見て名前を確認すると、ハーディングと書いてある。

 一族でハーディングを名乗っているのは、当主一家つまり家族だけだ。


「セレナ・ハーディング?」

「はい」

「君の事を俺は知らないんだが?」

「はい?」


 ピリッとした空気を感じたのか、目の前の女性は表情に戸惑いを浮かべる。


「あー!!もしかして!?師団長!もしかして!」


 近くにいた魔術師が突然大きな声を出したので、彼女の肩が揺れる。


「なんだ。うるさいな!」

「だから、ほら!今、噂の!」


(今、噂の?)


「……まさか!兄の奥さん!?」

「あ。師団長って、フェリクス様の……」


 女性はサッと立ち上がった。


「つ、妻のセレナと申します」

「ああ。弟のヘラルドです」


(兄上の奥さんか。なんか、思っていたよりも普通の女性だな)


 兄が密かに想い続けていたというから、どんな美女なのかと想像していたので、少し肩透かしを食らった気分だった。

 でも、あの兄のことだ。

 見た目に惑わされずに、選んだ女性なのだろう。


 それに、よく見れば癒しの力を持っているんだな。

 もしかして、最近急に魔力が増えたのは癒しの力が関係しているのか?


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