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冬の俳句(川柳ではありません……たぶん)

作者: まのやちお

 つむじ風 墓前(ぼぜん)蹴散(けち)らし 舞う落葉(おちば)


 あの世の婆ちゃんが荒ぶっておられる~。

 しょうがないじゃないの。コロナ禍ですもの。大人数で集まるわけにはいかないでしょう?

 墓前、いやお墓にたどり着く手前で、かなり手荒い歓迎です。さすが婆ちゃん。舞い飛ぶ落葉の演出が派手だねぇ。ちょっと痛いけど。

『婆ちゃん。私のあの帽子、どこにいったでしょうね?』と、昔々の映画風につぶやいてみたりして。




 “コタツムリ” 雪の気配(けはい)に 窓を()


【コタツムリ】

 日本原産。

 (テーブル)型暖房器具のなかで丸まり、そこから出ようとしない人種。その姿がカタツムリに似ていることから。

 生活に必要な物を手の届く範囲に集める習性がある。

 なお、季語ではない。


 外を見なくても(あっ、雪が降りだしたかも?)と感じる時があります。

 気がついたら静かで。車の音も井戸端会議のおばちゃん達の声もしない。

 庭の木の枝からファサッと何かが落ちる音。

 家の前の道路を、いつもならビュンビュンとばす車が妙にゆっくりと進む。そのタイヤが踏みしめる音が……。

 寒がりの無精者(ぶしょうもの)がコタツから飛び出して窓を開ける。

 ──うん。積もりそうだね。

 雪って一見(いっけん)(はかな)げな“見た目詐欺(さぎ)”の美人さんみたいだと思う今日このごろ──。




 立ち食いに “着ぶくれまんじゅう” 蕎麦(そば)湯気(ゆげ)


 前に住んでいた町の駅前に立ち食いのお蕎麦屋さんがありました。

 そこの“コロッケ蕎麦”を食べに行こうと友人に誘われたのは、ずいぶん前のことになります。

 安くて(あった)かくてお腹にたまる。ついでに美味しい。それ、なんて素晴らしい食べ物!?

 あれが初めての立ち食い蕎麦でした。

 いや、実際に行ってみてビックリ。

 今とはずいぶん状況も違うのですが。

 人気店なのでしょう。満員のギュウギュウ詰め。すごい熱気。そしてお客さんの回転の速さ。

 どうやら馴染み客ばかりのようです。

 迷わず一瞬で食券を買う。カウンターに券を置くと間髪置(かんぱつお)かずに出てくる蕎麦やうどん(えっ、なんで?)テーブルの()いている場所にスッと入って、すする、すする、すする。「ご馳走さん」丼をカウンターに返して、サッと出ていく。

 ……どんくさい私にアレをやれと?

 目の前に食券機が迫る。ボタンがいっぱいあって、どこに何があるのかわからず(あせ)る。

 思わず「コロッケ蕎麦どこ~?」と、情けない声を出したとたんに複数の指が一ヶ所をさしてくれました。

 食券を持って(いさ)んでカウンターに向かったら、券を出す前におばちゃんがニコニコ笑いながら「はい、コロッケ蕎麦ね」(えっ、なんで?)

 常連のお客さん達が場所を()けてくれて、友人と並んで食べることができました。

 かけ蕎麦に大きなカレーコロッケがのっています。サクッとした(ころも)。カレーの香りが蕎麦の香りと一緒に立ち上る。食べているうちにつゆが()みてきたコロッケが崩れていく。蕎麦の味が変わっていく。

 猫舌の私が必死に食べていると、カウンターから「急がないで良いのよ。早食いは体に悪いんだから、ゆっくり食べてって」というおばちゃんの笑い声。隣のおじさんが苦笑する気配。

 “声”に“気配”

 ええ。熱々の蕎麦を必死に食べているので、眼鏡が曇って何も見えないんですよ。友人が私の顔を見て爆笑しやがりました。

 あのコロッケ蕎麦 (コロッケうどんもあるんだよ)また食べたいなぁ。




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