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世界は5つの大陸に別れ、5つの国と王で成り立っていた。
が、それは表の歴史であり、実際は王の上に立つ者がいて、その者と共に国は発展していた。
それは【謳い手】
謳い手が旋律にのせて"それ"を望めば何事にも干渉でき、実現できる。
空も、大地も、世の理さえも。
故に、謳い手は公にしてはいけない存在。
周囲に謳い手だと知られれば、悪用しようとする者が出てくる。
その為、謳い手はそれぞれの国に守られている。
謳い手の存在を知るのは、国の中でもごく僅か。
長い歴史の中で、謳い手だと知られた者は残酷な扱いを受け、悪用され、悲惨な最期を遂げていた。
謳い手なくして、国は成り立たない。
いつぞやの王が、守っていかなくてらはならないと決めたのだ。
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始まりは1つの大陸と1つの国
誰もがその国の王を讃え、従順であった
争いは起こらず、不満もない
皆幸せだった
だが、それは上辺だけ
実際は豊かな場所は限られ、城の周り以外は貧民街だらけ
国の不平不満は、王が揉み消すかのように[なかったこと]にされていた
逆らえば即死刑や厳しい罰則
王に近い貴族達は王の言いなり
誰も逆らえない
そんな生活がとても長く続いた
何十年かたった頃、1人の女性が突然現れ、王城に乗り込み、王に物申した
『私は神からの遣いです。神はあなた様を見放されました。よって、間もなく天罰が下るでしょう』
王は笑った
『神だと?馬鹿馬鹿しい。ならば天罰とやらが下らなかった時は、お前を死刑とする』
彼女は頷いた
その瞬間、大きな音と共に王の姿が見えなくなった
王の真上にあった大きなシャンデリアが落ちてきたのだ
『天罰です』
彼女は一言放つ
誰も騒がなかった
誰も悲しまなかった
『ああ、やっとか』
誰もがそう思った
王がいなくなってから、神の遣い【神使】が代わりに王の座に立った
そこからその国は一変した
神使の言葉で地は代わり、豊かになり、人々の不満もなくなった
やがて神使は正式な王を人間の中から選ぶと同時に、別の人間にも力を与えた
それは【歌】
歌は大陸を動かし、空をも変える
歌を扱えし人間を王は【謳い手】と名付け、共に歩むことにした
しかし、大陸を人間が1人で収めるには限界がある
そう考えた王と謳い手は、大陸を5つに分け、5つの国を作った
国が5つあるならば、謳い手も5人いなければ
最初の謳い手は神使に願い、神使はそれを了承して4人の謳い手を生み出した
5つの国と5人の謳い手
それが、世界暦150年の出来事である