いじめ(冤罪)の報復が私刑(リンチ)ってひどくない?
何故自分の書く小説の主人公は人格に問題があるやつばかりなのか。
もっと王道ヒロイックな主人公が書きたかったはずなんだけどなぁ。
「はー、人生ってマジでクソだわ」
ここは王立魔法学院、校舎裏。
そこにボロボロになった制服に身を包み、ボコボコに殴られて痣だらけの顔で天を仰ぐナイスガイがいた。
俺こと、グランベル侯爵家長男ガイナス・グランベル。
え? 侯爵家の跡取りが校舎裏でボコボコとかちょっとした事件だって?
そうなんだよ、これはちょっとした事件だ。
にも拘らず、この件は多分握りつぶされるし、俺をボコった連中は無罪放免だろう。
訴え出たら逆に俺が罰せられるかもしれないね。
何せ主犯格が王族、それも王位継承権第一位さまと第二位さまだ。
「はー、虐めが許せないとか言いながらやることがリンチとか、はー」
うん、なんでも俺が聖女様とかいう奴を虐めた主犯格の一人だと断定する第一王子アンド第二王子とその両方の取り巻きどもにボコられました。
知らんし! 俺そもそも聖女様が誰かすら知らんわ!
そもそもそういった虐めの主犯格って大体被害者の同性では?
何をどうしたら俺にたどり着くのよ。
「はー、マジでクソかよ、はー人生って本当にクソ……」
そんな事を延々とつぶやく俺ははたから見ればやばい奴だろうが、知ったことではない。
だって、超痛いし、これ俺死ぬんじゃないの、これ。
いやだってまず立てない。
後段々目の前が暗くなってきてるのよ。
まだ時間的にはお昼休みが終わった辺りだ。
何故なら俺がボコられたのがお昼休みだからだ。
あ、うちのメイドが持たせてくれた弁当はどうしただろうか。
ボコられる前までは持ってた気がするけど、気が付いたら無かったな。
今日俺の好物いっぱい入れてくれたって言ってたのに。
「はー、やっばい。目が見えなくなってきた」
え、これ本当に死ぬやつじゃん。
流石にここで俺が死んだら王族でも無罪放免にはなんねーぞ、洒落にならんって。
嘘でしょ、やばいじゃん、うち一応国の重鎮なんですけど?
国一番の穀倉地帯を治める大貴族様ですけど?
俺死んだら後継ぎいないんですけどー?
こうして、俺ことナイスガイ、ガイナス・グランベルは死んだ。
それはもう確実に死んだ。
そう思った次の瞬間、俺は目を覚ました。
「はろー、実家の天井……」
なんだよ、生きてたじゃん。