第55話 【ロリの心】
今回は短いです。
ごめんして
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コンコン。
礼二郎が、リビングの一角にある不自然なほど豪奢なドアをノックした。
「きゃぎは開いておる。入るがいい」
中から女性の声が答えた。
「イライア殿! いい加減わたしの真似は止めてくれないか!」
ドアを開口一番、礼二郎の後ろに立つセレスが、赤い顔で叫んだ。
「マイブームなのじゃ。あと数年は使うゆえ我慢するがよい。して、むっつりと愉快な仲間達がそろってどうしたのじゃ? ん? ロリはどうした?」
「師匠、じつは……」
礼二郎は睡眠不足の原因を話した。
「なるほどのう。毎夜布団に忍び込むロリから、たまらぬいい匂いがして眠れぬと――そういうわけじゃな」
礼二郎の話を聞き終えると、こじらせ魔女が柔らかい表現で言った。
「要するにムラムラして眠れないのかにゃ?」
猫娘が身も蓋もないことを言った。
「あ、主殿! このままだといつか間違いが……コホン、主殿の身体が壊れてしまうぞ!」
女騎士が礼二郎の身体を心配している体で言った。
「我が弟子や。ロリに一言いえば済む問題であろう? なぜ言わぬのじゃ」
「……師匠、みんな。これを聞いてくれないか」
礼二郎がポケットからスマホを出し、操作した。
「にゃにゃ! こんな小さな板から声がするにゃ!」 「シャリー、静かに!」
驚く猫娘と、それをたしなめる女騎士の前で録音した音声が再生される。
『いや……。ひとりにしないで……。またひとりぼっちになるのはいや……』
『怖いよう……。どうしてみんなロリをいぢめるの……』
『だれか……だれか助けて……れいじろうさま……』
『こわいよう……さみしいよう……シャリー、どこにいるの……』
「…………」
礼二郎がスマホを止めると、全員が押し黙った。
「これは僕が原因です……。僕がみんなと別れるなんて、バカなことを言ったから……」
「捨てられることへの恐怖……じゃな。お主の寝床への移動も、無意識にロリのスキルが発動しておるのかものう……」
「アチシもそう思うにゃ。毎日布団に忍び込めば、ご主人に迷惑がかかるにゃんて、セレスでもわかることにゃ。そんなの、計算高くて、ご主人思いのロリらしくないにゃ」
「うぉい! なぜそこでわたしの名前を出すのだ! し、しかし、このままだと、主殿が睡眠不足で倒れてしまうぞ!?」
「ふむ、ならば、自らに睡眠魔術をかけるのはどうじゃ?」
「それは止めた方がいいにゃ。ご主人様が目覚めないとわかったら、ロリスは既成事実を作ろうとするにゃ」
「な! それはルール……コホン、それはダメだ! それだけは阻止しないと!」
セレスがなにか気になることを言いかけた。
「かといって、部屋に結界を張って拒むことはしたくない。ロリはひどく怯えてるんだ。僕のせいで……」
「ふむ、これはデリケートな問題じゃな。なにか対策を考えておくゆえ、お主は学校とやらへ行くがいい」
「師匠……お願いします」




