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第5話 【『くっ殺女騎士の場合』】


「わ、笑わないでくれ。わたしも、こんな綺麗なドレスは似合わないと……」


「綺麗だ」


  

 礼二郎が、無意識に呟き、セレスは顔を上げた。

 


「へッ? き、綺麗? あ、あぁ、ドレスかッ。たしかに、ドレスは綺麗だなッ」


「違うぞ、セレス。綺麗なのは、君だ」


  

 礼二郎が、今度はハッキリと意識して言った。

 

 

「あ、主殿ッ」「踊ろう、セレスッ」

 


 礼二郎が、セレスの手を掴んだ。

 


「わ、わたしは、踊りなんて……きゃっッ」


 

 ブツブツと煮え切らないセレスを、礼二郎は力強く引き寄せた。

 


「すまない。少し、強引だったかな?」


 

 唇の触れあうような距離で、礼二郎が囁いた。

 視線の先で、セレスの潤った唇が微かに動く。

 


「あるじ……ど……の……」 


 

 セレスが呟くと、音楽がそれまでの色を変え、スローなテンポとなった。

 礼二郎が楽器隊へ目をやる。

 指揮者の横では、親指を立てるロリがいた。

 礼二郎は、セレスに気付かれないように、ロリへ親指を立て、ウィンクをした。


 ガチャンッ

  

 会場の照明魔道具が、8割ほど機能を止め、会場を薄灯りの場へと変貌させた。

 公的なパーティーではこの国だけが行っている、男女の密着するダンスの時間。

 ――チークタイムである。

 礼二郎はセレスの腰を、さらに引き寄せた。

 


「セレス、僕の首に手を回すんだ」



 言うと、セレスが、戸惑いながらも、礼二郎の首を抱きしめた。

 


「こ、こうだろうか?」

 


 そして、メローな音楽が響く。

 セレスと礼二郎は、無言で踊り続けた。

 そこに、言葉など必要なかった。

 ゴージャスで、エロチックな時間だった。

 永遠に続けばいい。ふたりはそう思っていた。

 しかし、三曲ほど踊った頃、そのとびっきり甘い沈黙を、セレスが破った。

 


「なぁ、主殿……」


「ん?」


「わたしは、その、主の目に、どう映っているだろうか?」


「すごく綺麗だぞ? それは、さっき言ったと思うが」


「それはそれで、うれしいッ。すごく、うれしいのだが、その……女として見ると、どうだろうか?」


「すまない……質問の意味がよくわからない」


「つ、つまり、れ、れれれれれ」


「れれれ?」


「れれれ、恋愛の対象として、見てくれているだろうか?」


「恋愛? つまり、性の対象として君を見ているか、ってことか?」


「び、微妙に違うが、わたしの質問には、それも含まれているので、それでいいッ。ど、どうだろうか?」


「しかし、セレス、君は男が……」


「主殿。三年だ。三年も主殿は、わたしを気遣ってくれたんだ。わたしの心の傷を、主殿が、三年かけて治してくれたのだ。だ、だから、もう、大丈夫なのだッ」


「そうか、大丈夫なのか、セレス……」

 


 言うと、礼二郎が、セレスを強く抱きしめた。

 


「ふぇっッ。あ、主殿ッ。こ、これは、どういう意味だろうか? わたしの気持ち的には、この時点で、致しているのだがッ」


「よかった。本当によかった……」


「――主殿? もしや、泣いてくれているのか? わたしなんかのために、涙を流してくれるのか?」


「あぁ、泣いているぞ。ここで泣かずして、いつ泣くと言うんだッ」


 

 礼二郎が顔を上げる。

 涙でボロボロになった顔でセレスを見つめ、微笑んだ。

 もうダメだ、抑えられん、とセレスは呟くと、礼二郎に顔を近づける。

 

「主殿、わたしは――ぶへぇっッ」


 

 ガンッ、とセレスの顔面が、見えない壁に激突した。

 そのとき、女性の声が響き渡った。

 


「そこまでじゃッ」


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