第42話 【第二回女子対策会議にゃん!】
「それでは第二回女子対策会議をはじめるにゃん」
猫娘シャリーがぺこりと頭をさげた。
それに倣い、他のメンバーも頭を下げた。
「うむ、シャリーや、開始の挨拶ご苦労じゃった。さて、まずは、皆へ報告することがある。いい知らせと悪い知らせじゃ。まずはいい知らせじゃが、我が友アルシェのおかげで、ワシ等はこの世界に残ることが決まったのじゃ」
「本当ですかッ」
「にゃんとッ? 龍神様がッ?」
「よかった……。危うく主殿とケンカ別れになるところだったぞッ」
「よかったね、みんなッ。って、あれ? どうしてわたしが応援してるんだろ?」
「うむ。あやつはワシ等と離れたくないと、本心を漏らしおった。ククク、良い知らせであろ? そして、悪い知らせの方じゃが……ハァ、皆も気付いているように、今日から、そこにいる小娘の面倒を見ることになったのじゃ。人数が増えるのは不本意じゃ。じゃが我が友アルシェに頭を下げられてはのぅ……。ほれ、こず枝や、さっさと挨拶するがよい」
「ちょッ。悪い知らせって、ひどくないですかッ? ――コホンッ。えっと、本日からお世話になります、菊水こず枝です。よろしくお願いしますッ」
「こちらこそ、よろしくお願いします、こず枝様ッ」
「……よろしくにゃん」
「つまりは、わたしに後輩ができたわけだなッ。辛かった……。いつも皆からいじられて……。くっッ。こず枝殿ッ。これから、ことあるごとに皆からいじられるだろうが、心配ご無用ッ。わたしが、この3年で培った、心を強く保つ方法を、余すことなく、すべて伝授してやろうではないかッ。ナハハ」
「あー、そのことじゃがな。こず枝や、アレを見せてやれ」
「はいッ」
こず枝が服の下から、ネックレスのペンダントトップを引っ張り出す。
ガタッッ。三人娘が一斉に立ち上がった。
「えーっッ?」「にゃにゃッ?」「んなッ。そ、その凶悪な魔力は……龍神様の【逆鱗】ッ?」
「その通りじゃ。こず枝はこの世でただひとり、龍神に認められ、龍神の寵愛と加護を受けた【逆鱗持ち】じゃ。先輩風を吹かせて、こず枝をいじりたいのならやってみるがいい。その場合、我が友アルシェの逆鱗に触れる覚悟をするのじゃぞ?」
「お、お断りするッ。やっと……やっといじられ地獄から解放されると思ったのにッ。くっ、こ、殺せぇッ」
「残念じゃったな、むっつりよ。ああ、そうじゃ。もうひとつ大事なことを言い忘れておった。我が盟友アルシェと我が弟子の間で、契約が成立したのじゃった」
「龍神様と契約……ですか?」「にゃ、にゃんだか恐ろしいにゃ」「う、うむ。だが聞かないわけにはいくまい」
「その契約とは……ゴニョゴニョ……じゃ」
「「「えぇぇぇぇッ」」」
ロリータ、猫、くっ殺が、顔面蒼白となった。
「みなさん、よろしくお願いしますねッ」
お辞儀をして、そして女子高生は、ニカッと笑った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【議事録】
・龍神様のおかげで、この世界に滞在が決定したにゃんッ
・新メンバー、菊水こず枝が加入にゃん……。にゃんだかモヤモヤするにゃ……。
・こず枝は龍神様の【逆鱗】を賜ってるにゃッ。怒らせないようにするにゃん……。
・セレスがいじられるのは、加入が遅かったからじゃないにゃ。むっつりは、勘違いしてるにゃん。
・龍神様は、無茶な注文をするにゃん……
以上、第二回女子対策会議、議事録にゃん。(書記:シャリー=シャリフ)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
女子会議が終わり、魔女以外の女性陣は、リビングへ戻った。
「みんな……」
そこに、神妙な顔をした礼二郎が立っていた。
礼二郎を見て、セレスは複雑な表情を浮かべた。
「主ど……」
「すまなかったッ」
セレスの言葉を遮り、礼二郎は床に正座した。
「この世界に呼んでおきながら、勝手なことを言って申し訳なかったッ」
言うと、床に額をぶつけ、礼二郎は土下座をした。
「僕は皆と一緒にいたい。でも今の僕には資格がないんだ……。それでも一緒に……皆と一緒にいたい……。勝手なことを言って済まない。この通りだッ」
土下座をしたまま礼二郎は動きを止め、女性陣は言葉を失った。
が、その表情から、険のようなものが、少しずつ薄れていった。
そして、しばらくの後、いつもの表情で、女性達が、それぞれ口を開いた。
「ご主人様ッ。頭を上げるにゃッ」「そうだぞッ。わたしこそすまなかったッ。主に口答えするなど従者失格だ……」「レイ……、みんなこう言ってくれてるんだから頭を……」
三人が礼二郎の顔を上げようと動いたとき、幼い声が響き渡った。
「いいえ、許しませんッ」
「にゃッ?」「はぇ?」「え? ろ、ロリちゃん?」
強い意志の籠もるロリの声に、一同は何事かと目を瞬かせた。
ロリは一歩前へ出ると、腰に手を当て、プンスカと頬を膨らませ、顎を突き出した。
「れいじろう様、ロリは許しませんッ。ロリは傷つきましたッ。すっごく傷ついていますッ」
「ロリ……。本当にすまない……。このお詫びは……」
礼二郎が顔を上げ、怒ったふうな美しい少女を見上げる
視線を受け、ニッと悪戯っぽくロリは笑った。
「なので罰として、ロリとデートしてもらいますッ」
この発言に、ロリを除く女性陣は、しまった、という顔をした。
「あ、アチシも傷ついたにゃッ。アチシもデートするにゃんッ」
「くっ、その手があったかッ。主殿ッ。わたしも傷ついたぞッ。当然その権利をわたしも主張するッ」
「あれ? それだと、わたしだけ主張できないじゃないッ。異世界組だけなんてズルいわッ。レイッ、わたしもデートを希望しますッ」
そのとき、くつくつと含み笑いながら、こじらせ魔女が現れた。
「お主等、ワシを忘れるでない。ワシも傷ついたのじゃ。――そうじゃな。ワシは“今度の日曜日”でよいぞ?」
魔女の横暴に女性陣は吼えた。
「イライア様ズルいですッ。これはロリのアイデアですッ。〝にちようび〟はロリのものですッ」
「アチシも、〝にちようび〟がいいにゃッ」
「わ、わたしは土曜日でも……。つ、次の日が主殿の休みだしなッ。よ、夜デートでもいいぞッ?」
「みんな同じ家に住んでるんでしょッ。日曜日くらい、わたしに譲ってよッ」
「たわけッ。お主は〝学校とやら〟で、ずっと一緒ではないかッ」
礼二郎の眼前で、女性陣が揉めに揉めた。
あちらの世界で毎日のように見てきた、いつもの光景だった。
この光景を――こんなに朗らかな日々を、礼二郎は危うく手放しかけたのだ。
礼二郎は正座をしたままま、また俯いた。
「みんな……済まない……ありがとう……」
そして、床へ雫が落ちた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
その日の夕方。
大萩家の玄関が、いつものように勢いよく開いた。
「ただいま~。あれ? 礼兄ぃ帰ってるの? ――って、この大量の靴はなんなのッ? しかも全部女物じゃんッ」
まだあどけなさの残る少女が、大量の靴を見て、目を丸くした。
そのとき、リビングのドアが開き、複数の女性達がわさわさと現れた。
「加代様、初めましてッ。おかえりなさいッ。奴隷のロリですッ」
「お前が加代かにゃ。ずっと会いたかったにゃんッ。同じく奴隷のシャリーにゃん」
「加代殿、お初にお目にかかる。わたしは礼二郎殿の従者をしているセレスと申すものだ。将来的には、加代殿の姉に――つまり、主殿の伴侶としてだな……」
「おかえり、加代ちゃ――だ、ダメよ、通報しちゃッ。携帯から指を離しなさいッ」




