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第37話 【死の接吻、絶望の抱擁~】★

「《対精神魔法障壁展開!》《身体強化!》」


 礼二郎は、こず枝が失言した瞬間、補助魔術を展開した。

 足下に魔方陣が浮かび上がり、礼二郎の体を光が包み込む。

 クラスメイトの前だが、四の五の言っている場合ではなかった。

 対応が遅れると、この場にいる全員が死ぬことになるのだ。


「《アンチ・マジック・フィールド》!」


 礼二郎の叫びに応じ、魔女イライアがドーム状の光に包まれた。


「クソッ! なんて魔力だ! この結界じゃ1分と持たん!」

 礼二郎の額に大粒の汗が浮かぶ。

「みんなぁ! 目を閉じろぉ! 絶対に師匠――魔女の目を見るんじゃないぞぉっ!」

 目を閉じたまま叫んだ。

「師匠! 正気に戻ってください! 師匠!」


「ワシを……ワシのことを”おばさん”じゃと……? 許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ、許せぬ……」


「くっ……ダメか! こず枝ぇ! 生きているかぁ!」


「え、えぇ! なに? なにが起こってるの?」


「お前が師匠の一番気にしてることを言ったんだ! 僕が師匠を抑えてるから、今のうちに逃げろ!」


「だ、ダメ! 足が動かないわ!」


「なんだと! くそっ! 結界が間に合わなかったのか! ロリ! シャリー! 頼む! こず枝を連れて逃げてくれぇ!」


「主殿!? なぜ、わたしには頼まないのだ! いや、頼まれても、動けないのだが……」


「ダメです! ロリも動けません!……あ」 ロリの悲痛な叫びの後 「れいじろう様! キスです! イライア様にキスしてください!」 とんでもない注文が飛び出した。

 

「そうだにゃ! イライア様はこの世界にくる10日も前から、毎日何十回も歯を磨くほど、キスを楽しみにしてたにゃ!」

「そ、そうだ! イライア殿の怒りを静めるには、主のキス以外にあるまい! あ、それが終わったら、わたしにも……」


(10日……? 10日だって!? いや、今はそれどころではない! くっ! あの状態の師匠とキスか! だが……やむを得まい!)


「《毒耐性強化!》」


 チェリーは補助魔術をさらに一つ展開し、上着を脱いだ。

 そして、目を閉じたまま恐ろしい気配へ……おのれの師匠へ向け、歩を進めた。


「おばさん……おばさんだと……許せぬ、許せぬぞ……ム!?」


 自ら作り出した結界に入った礼二郎が最恐魔女の肩をつかむと、「シャーッ!」数百数千の猛毒を持つ蛇が一斉に襲いかかった!


(《高位解毒(ハイ・デ・トック)》《高位解毒(ハイ・デ・トック)》《高位解毒(ハイ・デ・トック)》《高位解毒(ハイ・デ・トック)》《高位解毒(ハイ・デ・トック)》《高位解毒(ハイ・デ・トック)》《高位解毒(ハイ・デ・トック)》《高位解毒(ハイ・デ・トック)》《高位解毒(ハイ・デ・トック)》《高位解毒(ハイ・デ・トック)》《高位解毒(ハイ・デ・トック)》……)


 高位の解毒魔法を高速無詠唱でかけ続けながら 「師匠! 失礼します!」 裂けあがった魔女の唇に、おのれの口を押し当てた。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 



「主殿ーッ!」 


 誰よりも先に眼を開けたセレスは、我が眼を疑った。

 その眼に映るは、信じられない光景であった。


 最恐の魔女と最強の賢者が重なり合ったまま、恐ろしい数の蛇に包まれ、ひとつの塊と化していたのだ。

 幾千幾万の毒蛇が、ふたりの姿を完全に覆い隠している。


「主殿!」たまらず駆け寄ろうしたセレスを「ダメにゃ! 死ぬ気かにゃ!」猫娘シャリーが押さえつけた。


「離せ! 離してくれ! クソ! わたしは、なんて浅はかな! 主殿! 主殿ぉぉっ!」


 セレスの悲痛な叫びが届いたのか、シュルシュルと蛇の塊が小さく――やがて、すべての蛇が魔女イライアの黒髪に戻ると 「れいじろう!」 意識の戻ったイライアが、全身傷だらけの礼二郎を抱き支え 「《最高位治癒(エクストラ・ヒール)》!」 治癒魔術を唱えた。


 瞬間、礼二郎の傷が塞がり、全身紫だった体も肌色へと変化した。

 イライアはホッと息を吐き、礼二郎を静かに床へ寝かせた。


「れいじろう様!」「ご主人様ぁ!」「主殿ぉ!」「レイ!」


 4人の娘が駆け寄ると 「う……」 魔女の膝枕で、礼二郎がゆっくりと眼を開けた。


「れいじろう……ワシは、なんてことを……すまぬ……。すまぬ……我が弟子よ……」

 漆黒に戻った魔女の眼から、大粒の涙がボタボタと流れ落ち、礼二郎の顔を濡らした。


「こず……枝……無事……か?」

 礼二郎が、か細い声を上げた。


「大丈夫! わたしは大丈夫だよ! レイ、死なないで! 死なないでよぉ!」

 礼二郎の胸にすがりついて、こず枝は嗚咽を上げた。


「こず枝……僕は……大丈夫だ……それより……イライア師匠に……謝るんだ……」


「うん! 謝る! 謝るから! イライアさん、ごめんなさい……ごめんなさい……うわぁぁぁぁん!」


「れいじろう様ぁ! 申し訳ありません! まさか、あんな……あんなことになるだなんて、ロリは……うわぁぁぁん!」

「アチシも、軽はずみなお願いをしてしまったにゃ……。ご主人様、すまないにゃぁぁっ! にゃぁぁぁぁん!」

「主殿! わたしの軽率な言葉で、こんな目に……。すまない……。すまない、主殿……。この詫びは、わたしの口づけで……」


「いいん……だ……。それ……より、お願いが……ある」


「な、なんじゃ?」「なんですか!?」「なんでも言うにゃ!」「主殿! き、キスか!? キスだろうか!? それなら、すぐにでも……」「レイ! お願いってなんなの?」


 そして瀕死の最強賢者は意識を失う直前に、こう言った。


「お下げメガネの……女の子に……伝えて……くれ……。女子を4人……連れてきた……と……ガクッ!」 



★【おまけの蛇足話……蛇足……へ、蛇だけに! ブハッ!】



「女子を4人……? ここに5人いるのに、4人……じゃと? まさか、ワシは……すでに”女子”ではないと……そう申したのか……」


 イライアの髪が、サワサワとうねり出す。


「まずいにゃん!」 「い、イライア殿! お気をたしかに!」 「え? 嘘でしょ! これって、この頻度で発生するイベントなのぉ!?」


 猫、くっ殺、JKが恐怖におののく中……。


「もう! れいじろう様ったら、またロリを仲間はずれにして! 本当に、失礼しちゃいます! あーぁ、ロリもイライア様みたいに、素敵な女子になれたらなぁ……」

 その場の空気をガラリと変え、褐色肌の美少女が、悔しそうに、そう言った。

 

 ピタリ、魔女イライアの髪が、うねりを止める。

 以心伝心とはこういうことだろう。

 瞬間! 褐色美少女の機転に、猫、くっ殺、JKの心が、ひとつとなった。


「そ、そうにゃ! また、ロリだけ仲間はずれにゃ!」

「う、うむ! まったく主殿は、ロリをなんだと思っておるのだ!」

「そ、そうね! レイったら、ひどいわね! ロリちゃん、落ち込まないで!」


 すると、三人娘の言葉を聞いたかんしゃく持ちが、ゆっくりと顔を上げた。


「なんじゃ、そう言うことじゃったか! ロリや、気を落とす出ないぞ? いつかお主も、ワシのようになれるかもしれんのじゃからな! ククク」


 と、いつもの黒髪に戻ったこじらせ魔女が、楽しそうに笑った。


「そうですね……。うん! ロリは元気が出てきました! ありがとうございます、イライア様!」


 褐色少女はそう言うと、後ろの三人娘に向け、パチッとウィンクをした。


(((ろ、ロリさん……)))


 三人娘は我知らず、目の前の救世主を心の中で、そう呼んでいたのだった。




 ★

 

【後書き】

 

『ちょ! お下げメガネって、わたしのこと? まさか、まだ名前覚えてないわけ!?』 『その話は置いといて……えっと、ゴ○ゴンさん家のメド○ーサさん?』 『いいえ、炎眼の魔女イライア=ラモーテです』 『いや、だって石と蛇……』 『イライアですってば!』

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