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第24話 【最強賢者は『ヤバい』奴!?】

 公立、大久保第一高校。


 礼二郎と菊水こず枝が通う高校だ。

 一学年に20名ほどのクラスが6つあり、そのうちの1つが特進クラスである。

 礼二郎は一年二組。

 菊水こず枝は一年一組、つまり特進クラスである。


 特進クラスだからといって、特別な授業が行われているわけではない。

 積極的に勉強へ取り組む人間を集めることで、一応の成果は上がっているようだ。

 事実、毎年数名の生徒が、現役で難関大学への切符を掴み取っている。


 菊水こず枝は、その特進クラスでも上位5名――つまり学年トップ5に入る成績を収めているのだ。

 毎日礼二郎の家に夕食を作りに来ているのに、いったいいつ勉強をしているのやら。

 

 制服はブレザーである。

 公立学校にしては珍しい。

 なかなかファッション性は高く、この制服を着たいがために受験をする学生も多い。

 

 礼二郎は昼休みに入り、最後方の窓際に陣取る自分の席へ腰掛けていた。

 不本意ながら女神からもらった制服を着て、だ。

 その礼二郎を遠巻きに見ながら、クラスの女子が囁き合う。


「――ねぇ、あれって大萩くん、だよね?」

「――うそッ。ちょっ、ヤバくない?」


 それを聞いた地獄耳の礼二郎は、クラスメイトとのジェネレーションギャップに苦しんだ。


(ヤバい? ヤバいとは、どっちの意味だ?)


 腕を組み、首を傾げる礼二郎の耳に、「レイ」と聞きなじんだ声がした。

 礼二郎が声のするほうへ顔を向けると、一人の女子生徒が教室後ろの出口に立っている。

 礼二郎の幼なじみ、菊水こず枝だ。

 礼二郎はゆっくり立ち上がると、鷹揚に歩いて行く。

 男子の視線が礼二郎に集中する。

 羨望、怨嗟の眼差しだ。

 なんという優越感。


「やあやあ、こず枝。どうしたんだい? ああ、弁当か。いつも済まないな」


 礼二郎が横柄に、やや声を張って言うと、こず枝はハァと息を吐いた。 


「学校に来ないから、またどこかに行っちゃったかと思ったわ」

 

 少し怒った口調である。

 チェリーは焦った。


「す、すまん。警察へ失踪届を取り消しに行ったら、少し事情を聞かれたんだ」

 

 謝る理由がよくわからなかったが、チェリーには、怒った女性の扱いがよく分からないので、とりあえず謝った。


「もう大丈夫なの?」


「あぁ問題ない。心配かけたな」


「べ、別に心配してないわよッ。まぁそれならいいわ。じゃあこれ、お弁当ね。あとこれが昨日言った、わたしの前使ってたスマホ。充電器はこれ。データは全部消したからメールなんか探しても無駄よ」


「本当に助かる。この礼は」


「いいのよ。弁当箱は、そのまま持って帰ってね。あ、そうそう」


「ん?」


「女子が噂してたわよ? レイがすごくかっこよくなってるって。それじゃ、またね」

 

 こず枝がパチンとウィンクをして、くるりと背を向け歩き去った。

 礼二郎はその背中を見送りつつ、ホッと息を吐いた。


(そうか。ヤバいとは、いい意味でのヤバいだったのだな)

 

 礼二郎は胸をなで下ろした。

 

 ()()()――その言葉ほど、礼二郎を形容するものは他にないだろう。

 

 なぜなら、礼二郎は実際にかなり()()()からだ。

 今は無理だが、明日にはこの学校を短時間で破壊できるほどの力を得るのだ。

 ()()()で言えば、メガトン級の爆弾が制服を着て歩いているのと同程度か、それ以上の()()()である。

 その〝ヤバさ〟がバレているわけではなかったのだ。

 当然と言えば当然なのだが、その()()が、15年の異世界生活であやふやになっているのだから困った物である。


(それに、僕がかっこいいだって?)


 菊水こず枝は、そう言った。

 たしかに今朝鏡を見ると、まんざら悪くない顔をしていた。

 だが基本的には、昔の礼二郎とそう変わりは無いのだ。

 少し肌が艶々しているだけだ。

 少し髪がサラサラになっただけだ。

 少しめがねを外して、少しお目々がパッチリしただけなのである。


(む。よく考えると、まるで別人だな)


 今のところ、この礼二郎を違和感なく受け入れたのは菊水こず枝だけである。

 妹の加代にいたっては、マジで通報する五秒前だったのだ。

 

(別人、か)


 礼二郎は考えた。

 今後の方針についてだ。

 15年前、礼二郎はこの学校で好ましくない地位に甘んじていた。

 いわゆるスクールカースト最底辺という地位だ。


(せっかくの機会だ。上位のカーストに移動して普通の青春を謳歌するのも悪くはないな)


 兄の源太に言わせれば、礼二郎に青春を楽しむ権利はないのだろう。

 だが少しくらい学校生活を快適にしても、バチは当たらないはずだ。


(スクールカーストの移動か。それを成すには)


 1つ問題があった。

 それも〝とびっきり大きな問題〟だ。


「きゃッ」「いやッ」


 そのとき、女子の小さな悲鳴をBGMに、一人の男が近づいてきた。

 モーゼの十戒がごとく、女子の群れが割れ、道ができる。

 その道を、ひとりの男がのっしのっしと歩いてきた。


「礼二郎男爵ッ。無事でなにより」


 めがねをかけた小柄で小太りの男が、朗らかに言った。

 この男だ。

 この男が、その――“とびっきり大きな問題”――なのだ。

 

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