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第21話 【最強賢者、びっくりする】

 警察病院の長椅子。

 そこに座って、礼二郎は考えていた。


「どうしてこうなった……」


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 

 


 異世界から帰還して一夜が明けた。

 15年ぶり、懐かしの日本である。

 慣れない自分のベッドでぐっすりと眠った最強賢者は、起床後一番に確認した下半身の状態を驚愕の眼差しで見つめたあと、自然な沈静化を待ち、やがてどうにか人前に出られる状態になったのち一階へ降り、おはようッ、と元気に挨拶をしてきた妹のこしらえた(米ではないのが少し残念)洋風のおいしい朝食を食べ終えると、捜索願いを取り下げるため、二人で警察署へ出向いたのだった。

 ちなみに兄の源太は、礼二郎が起きる1時間前には出社している。

 

 捜索願の取り下げができるのは、届け出た本人――妹の加代だけである。

 加代は、禮次郎の失踪後、兄の源太からあんなバカほっとけと言われたらしい。

 だが、礼二郎が消えて一週間が経過した頃、意外にも兄思いの妹が、源太に黙って捜索願いを提出したのだ。


 取り下げの手続きをする際、妹が受付の女性警察官から、()()()()簡単に終わる質問を受けた。

 

「いくつか質問しますね。まずお兄さんは、どこで見つかったの?」


「見つかったというか、家の前にいたんです」


「え?」


「買い物から帰ったとき、家の前に不審者がいると思ったら、兄だったんですよ。びっくりしちゃいました」


「え? 不審者? 彼がおかしな行動を取っていたの?」


「はい、外からコソコソ家の中の様子をうかがってました。それで声をかけたら、いきなり抱きつかれたんです。なので、またまたびっくりしちゃいましたよ」


「え? コソコソ家の中を? それに抱きつかれたの? 失踪前からそんな親密なコミュニケーションをとっていたんですか? 血の繋がったご兄妹ですよね?」


「まさか! あれはまごうことなく実の兄で、抱きつかれたのなんて、昨日が初めてですよ! だから、危うく通報するところだったんですよ? まったく笑っちゃいますよね? あはは」


「えっと、すみません、ぜんぜん笑えないです。他に変わった点は?」


「それが変わった点だらけなんですよ。見た目がほぼ別人なんだもん。びっくりしちゃいますよね。特に髪の毛なんか、天然パーマが治ってサラサラになってるんです。うらやましいったらないですよ」


「え?」


「え?」


 以上、びっくりした女性警察官と、びっくりしすぎな妹の、礼二郎もびっくりなやりとりだ。

 後ろの長椅子に腰掛けた礼二郎は、脂汗をダラダラと流しながら、その会話を聞いていた。


「礼二郎くん、だよね? ちょっといいかな?」

 

 案の定礼二郎(仮)は、100%不審者であると確信した眼差しの女性警察官に、そのままやんわりと拘束された。


(……まぁ妥当な判断だな)

 

 あのやりとりの後で礼二郎を帰すようなら、そいつは警察官失格である。

 

(逃げられ……そうにもないか)

 

『え? どうして?』という表情を浮かべる妹を見て、礼二郎は妹の将来が少し、いや、かなり心配になった。

 これ以上不利な証言を撒き散らす前に、愚妹には学校へ行ってもらった。


「あ、でも、間違いなく礼兄ぃですから」


 妹は遅まきながらも、最後に一言だけ圧倒的に説得力の無いフォローをしてくれた。

 しかし、フォローの質もさることながら、刻もすでに大分遅かった。

 女性警察官はずっと、ゴミでも見るような目で礼二郎を見つめている。

 い、いたたまれない。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 

 


「公安の田中弘志と、こっちが鈴木和夫です」


 小一時間ほど経過した。

 女性警察官のゾクゾクするほど冷たい視線にも慣れた頃に現れたのは、体格のいい二人組だった。

 あと少し遅ければ、新たな性の扉が開いていただろう。


(ほう)


 礼二郎は二人を見て、危うく感嘆の声を上げそうになる。


(かなり強いな、特に年配の方が)


 礼二郎は、瞬時にふたりの戦闘力を察知した。

 視線の運びや体軸のぶれなどから、ある程度の戦力は予測できる。


 しかし、それすらも偽装する化け物クラスの達人が存在する。

 なので、予測は予測として、あくまで参考程度に思っていた方がいい。


「礼二郎くん、だったね。家出の理由は、えっと自分探しの旅か。ハハハ、若者らしくていいじゃないか。別に君を犯罪者扱いしてるわけじゃないんだ。最近物騒でね。おじさん達は、君が妙な事件に巻き込まれていないか、調べたいだけなんだよ。申し訳ないが、少しだけ付き合ってもらえるかな?」


 田中弘志と名乗った40代の刑事が、にこやかに言った。

 後ろに立つ男は、年配の刑事とは対照的だった。

 20代の鈴木和夫と紹介された刑事は、ニコリともせず礼二郎を見つめている。


(なるほど。テロがらみってわけか。僕がどこぞの組織に洗脳されてないかを調べたいんだな)


 どうやら断る、という選択肢はなさそうだ。

 礼二郎は素直に従うことにした。



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