第139話 『とある大物さんのエチエチな日常』
※今回は別人物視点です。
エチエチです。ご注意ください。
あと通報しないでください。
ある高級住宅街の一角。
高層マンションのエレベーターに男が乗り込んだ。
口笛を吹きながら、慣れた手つきで操作パネルにある穴に、鍵を差し込む。
『おかえりなさいませ、MASATO様』
電子音声が鳴り響き、扉が閉まる。
「ったく。エレベーターに乗ってる時間が一番無駄だよな。人生においてよ」
男が独りごちた。
手提げカバンから小さな鏡を取り出し、覗き込む。
「チッ、もう髪が伸びちまったか」
ツンツンと立てた真っ青な髪――その根元がほんの少し黒くなっている。
「青い髪なんてやめときゃよかったな。ったくめんどくせぇ」
やがてパネルに60Fの文字が点灯した。
『到着しました』
電子音声と共に、扉が開く。
扉の先は、豪奢な部屋だった。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
10名の女性が頭を下げて男を出迎えた。
一名を除き、全員がミニスカート、ヘソだし、胸元を大きく開けた服装をしている。
いわゆるエロメイド服だ。
唯一メイド服ではない女性は、ビシッとしたスーツに身を包んでいる。
男は返事もせずに、歩を進める。
そして、一人のメイドの前で立ち止まった。
「そうだな。今日はお前にしよう」
声をかけられたメイドが顔を上げた。
その表情は悦びに満ち満ちている。
「ありがとうございます! 精一杯ご奉仕させていただきます!」
「ああ、精一杯励めよ」
そして二人は奥の部屋に入って行った。
∮
コンコン。
重厚な木製のドアがノックされた。
「入れ」
男の声で、一人の人物が室内に入ってきた。
先程、唯一スーツ姿だった女性だ。
「失礼します、本日の集計が上がりましたので、ご報告に参りました。今は大丈夫でしょうか?」
「あと少し……あとちょっと……もうちょっとで……うっ!」
マホガニー製の机に腰を下ろした男が、恍惚の表情を浮かべた。
すると、机の下から、先程のメイドが現れた。
「なかなかよかったぞ。下がってよし」
「お情け、ありがとうございました」
メイドは深く頭を下げると、口を拭いながら部屋を出ていった。
「報告を始めろ」
男が立ち上がり、ズボンを上げた。
「はい。今週の売り上げ見込みは4億7580万となっております」
「少ないな」
「ここ数週間は減少傾向にあります」
「原因は?」
「それがなんとも……」
「まぁいい。それなら稼げるやつを入れればいいだけだ。加入希望者はどうなってる?」
「はい。これが今週、我が社に加入を希望してきた者たちのリストです」
スーツの女性が一枚の頭を男に手渡す。
舐めるように書類に目を通すと、男はあからさまに不機嫌になった。
「……小物ばかりだな」
「今回応募してきた全員が、チャンネル登録者数10万以下となっております」
「話にならないな。そんなゴミを加入させたらボクの会社の質が疑われてしまう」
「では今回の応募者は全員?」
「断れ」
「かしこまりました。あと気になることが一つ……」
「なんだ?」
「この二月で、急激に登録者数を伸ばしているチャンネルがありまして」
「急激? お前がそんな表現を使うなんて珍しいな。どの程度なんだ、そいつは?」
「それが50万ほど」
「は? たったの二月でか?」
「はい」
「そいつのyoutabe歴は?」
「登録したのが今年の3月です」
「つまりたったの三ヶ月で登録者数50万を達成したってのか?」
「そうなります。いかがいたしましょう?」
「すぐに勧誘するんだ」
「断られた場合は?」
男はニヤリと笑って言った。
「潰せ。どんな手を使ってもな」
「かしこまりました。では失礼します」
女性が頭を下げて退出しようとする。
その後ろ姿を見て、男がペロリと唇を舐めた。
「待て」
「はい? どうかなさいましたか?」
女性が振り向く。
その表情は、先ほどまでと違っていた。
男の意図を察したのか、女性は挑発的な笑みを受かべている。
「うん、たまにはお前も悪くないな」
「ありがとうございます。服はどうしましょう?」
「そのままでいい。下着だけ脱いでこっちへ来い」
「かしこまりました」
女性が机に書類を置くと、慣れた手つきで下着を脱いでいった。