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第126話 『こず枝と猫のダンジョン攻略』

「《火炎連弾》!」


 こず枝の手から炎の玉が連続で飛び出す


「ギャッ!」

「グギャ!」

「ギギッ!」


 魔法を食らった緑色の生物が、次々と断末魔の声をあげる。

 こいつらは、ゴブリンという亜人だ。

 倒れたゴブリンは霧状に霧散していく。


「キリがないわね!」


 薄暗い洞窟には、そこらじゅうに横穴が空いている。

 そこから次々と新たなゴブリンが飛び出してくる。


 コイツらは、ボロボロの腰布以外に衣服を身につけていない。

 いきり立つ股間から察するに、すべてオスなのだろう。

 17才の乙女になんてものを見せるのか。

 不快なこと、この上ない。

 セレスがゴブリン嫌いな理由が、よくわかった。

 でもお陰で、殺すことに躊躇しなくてすむ。


「にゃはは、どうやら、こず枝は気に入られたみたいにゃ」

「なに呑気なこと言ってんのよ! 降りてきて手伝いなさい!」


 猫娘は洞窟の天井付近のでっぱりに腰を下ろして、こず枝を眺めている。

 それも、お菓子を食べながらである。

 こず枝一人では対処できないと思ってるのだ。

 その上で、救援の言葉を待っている。

 魂胆が見え見えだ。

 恐らく、こず枝に恩を着せようというのだろう。

 だれがその手に乗るものか。


「にゃはは、さて、どうするかにゃ? 頭を下げるにゃら手伝わないこともないにゃ」

「くっ、お断りよ!」


 こず枝はステータスウィンドウを確認する。

 MAX840の魔力は、今や200まで減っている。

 火炎連弾を1発撃つのに必要な魔力は10。

 つまりあと20発で打ち止めだ。

 しかも魔力量が底を尽きると、気を失ってしまう。


「まずいわね……」


 現時点で、軽く目眩がしている。

 これ以上魔法は使いたくない。

 ならば……。


 こず枝は腰の剣を抜いた。


「やぁッ! えいッ!」


 襲いくるゴブリンを、次々に斬り伏せていく。


「にゃ? 剣の使い方が、なかなか様になってるにゃ」


 猫の皮肉に答える余裕はなかった。


「ハァ、ハァ……」


 20匹ほど切ったところで、こず枝の息が上がった。

 慣れない剣を振るうのに、必要以上に力が入り過ぎたからか。

 残りのゴブリンはあと三匹。

 これなら魔法で、と思ったところで、大きな地響きがした。

 残ったゴブリンが、後ずさっていく。


 えっと……なにかしら。

 すごく嫌な予感がするわ。


 ズン、ズン、ズン、ズン……。


 音は次第に大きくなっていく。

 これは、もしや……生物の足音か?


 こず枝の予感は、悲しいことに当たっていた。


「嘘でしょ……」


 洞窟の奥から現れたのは、身長4メートルを越す、巨大なゴブリンだった。

 手にはこず枝よりも大きな棍棒を持ち、全身が金色に輝いている。


「にゃにゃ! これはレアモンスターの〝ゴールデンゴブリンロード〟にゃ! すごいにゃ! 初めて見たにゃ!」


 レアモンスター。

 倒すとレアアイテムを入手できる、貴重なモンスターだ。

 だが、今のこず枝に倒せるだろうか。

 恐らく……無理である。


 猫の手も借りたいとは、この状況だ。

 仕方ないので、手近な猫に叫んだ。


「シャリー、手を貸しなさい!」

「にゃ? それは、お願いかにゃ? それにゃら、もうちょっと違う言葉をつかうべきにゃ」


 くっ、この猫めが!

 人の弱みに付け込んでからに!

 でも、意地を張っている場合じゃないのよね。


「そうよ! お願いよ! どうか手伝って!」

「初めから、そういえばいいのにゃ――にゃにゃん!」


 シャリーが、ゴブリンロードとこず枝の間に降り立った。

 シャリーが構える。


 ジャキンッ!


 10本の爪が、刃物のように伸びていく。

 まるで鉤爪のようだ。


「さぁ、いっちょ遊んでやるにゃ」


 戦闘モードのシャリーが、高く宙を舞った。


 ∮



「にゃはは! 大儲けにゃ! 笑いが止まらないにゃ!」


 シャリーが地面に落ちたものを、袋に詰めていく。

 キラキラしたそれは、すべて宝石だ。

 ゴールデンゴブリンロードのドロップ品である。


 強敵だった。

 数十分に渡る激闘の末、ようやく倒すことができた。

 まぁ、倒したのは、ほとんどシャリーの力なのだが。


 こず枝一人では、恐らく倒せなかった……と思っていたのだが、シャリー曰く、こず枝がある程度まで追い詰められたら、〝龍神の逆鱗〟による雷撃が発動していたとのこと。

 そんなギリギリの戦いは、ごめん被りたい。


 こず枝も宝石一つを拾い、じっと見つめる。

 キラキラとした透明の石は、ダイヤモンドのように見える。


 似たようなものは、こず枝も持っている。

 スライムやスケルトンを倒した時に、手に入れたものだ。

 宝石は、数十匹に一個の低確率でドロップする。

 ただし、こんなに透明なものは見たのは初めてだ。

 宝石は集めておくと、後でいいことがあるらしい。

 って、誰に聞いたんだっけ?


「ねぇ、シャリー。これって何なの?」

「魔力結晶にゃ。しかも高純度で、めったに手に入らないにゃ。それがこんにゃに沢山手に入るだにゃんて、まるで夢のようにゃ」

「魔力結晶? 綺麗だけど、何に使うの?」

「今までも拾ったことがあるにゃ?」

「ええ、こんなに綺麗じゃないけど……」

「着いてくるにゃ」


 宝石をすべて拾い終えたシャリーが、洞窟の奥へ歩いていく。

 ズンズンと無警戒に猫は進んでいく。


「ねぇ、今日はもう帰らない? 魔力が尽きかけてるんだけど」


 こず枝の魔力量は残り70。

 転移魔法に必要な魔力は50だ。

 恐らく転移した瞬間、倒れてしまうだろう。


 疲労が溜まっているのか、体もダルい。

 立って歩いているだけで、やっとである。

 つまり、今のこず枝は体力、魔力共に、ギリギリの状態なのだ。


「いいから、いいから。黙って着いてくるにゃ」

「なんなのよ……ブツブツ」


 文句を言いながらも、こず枝は猫の言葉に従った。

 なんだかんだ言っても、こず枝は猫を信用している。

 なにせ、ずっと停滞していたこず枝のレベルが上がったのは、シャリーのおかげなのだから。


「到着にゃ」

「え? ここは……」


 洞窟の行き止まりにあったのは、地面に描かれた青く丸い紋様だった。


「ダメよ! いま新しい敵なんか出てきたら殺されちゃう!」

「いいから行くにゃ」

「きゃっ!」


 シャリーが強引に、こず枝の手を引っ張った。

 二人が青い紋様の上に立つと、地面が光を放つ。

 転移魔法陣だ。


 ここは地下10階。

 つまり、行き先は地下11階である。


 ダンジョンは5階ごとに、敵の種類がガラリと変わる。

 難易度が、格段に跳ね上がるのだ。

 あれ?

 この話は誰から聞いたんだっけ?

 ま、いいか……。


 ともかく、今から行く場所は、今まで以上に過酷な場所である。

 本来なら万全の体制で挑むべきだ。


 あ、これは死んだわね。


 ヘロヘロ状態のこず枝は、齢17才にして、人生の終わりを悟った。

 だが、転移が終わり、目の前の光景を見て、こず枝は我が目を疑った。


「へ? ここ……地下11階じゃないの?」

「ここは地下10.5階にゃ」


 シャリーが言った。

 こず枝は返事をしなかった。

 いや、できなかった。

 目の前に広がる光景に、あんぐりと口を開けるのみ。


 なにしろ、そこは、青空の下に広がる、巨大な街だったのだから。


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