第118話 『食うか食われるか、それとも飢え死ぬか』
「はぁッ? じゃあ、僕は何を食えばいいんだよ?」
『さあ?』
「さぁって……そんなの死んじゃうじゃん」
『だから死ぬつってんじゃん、さっきからさぁ』
マジかよ。
「いつか死ぬとは思っていたけど、この飽食の時代に、まさかの餓死エンドとは……」
『ねぇねぇ、今どんな気分? 人生ギブアップって感じ? ねぇねぇ、ねぇねぇ』
「いや、まだだ」 礼二郎はサッとサナダを捕まえると、
『ぐぇッ』 再びイライアへメッセージを送った。
From:レイレイ(※礼二郎のRINEネーム)
《緊急事態!! 緊急事態!! (^_^;)
なんと、僕は、この世界の、食べ物を、たべられないみたい! ガビーン\(^o^)/
このままじゃ、お腹ペコペコで、バタンキューだヨ〜! ショボーン(´・ω・`)
イライアちゃん、たっけてぇぇッ! help me (>_<)》
送信ボタンを押して、待った。
イライアは、今までにどんな難問も解決してくれた
そのイライアなら……。
待つこと15分。
ようやく(慣れない携帯操作に手こずったであろう)返信が届いた。
From:至高の美人魔導士イライア=ラモーテ
《それは、大変だ〜。∑( ̄。 ̄ノ)ノ
礼二郎ちゃん! すぐに、奇跡ポイントを、貯めるべし!! (^_-)-☆
そんで、奇跡を使って、ご飯を、頼んじゃえば、いいんだヨ! (^o^) 》
打てば響く。
さすが痛いや……こほん、イライアだった。
なるほどそうか。
さっそく礼二郎はステータスウィンドウに願い事をした。
「コーヒーおねしゃ〜す!」
間をおかずステータスウィンドウに文字が現れた。
《コーヒー:1500kp》
礼二郎は我が目を疑った。
「はぁッ!?」
『あら〜。趣向品は割高ねぇ。やっぱり贅沢は神の敵なのよ』
「割高なんてもんじゃねぇだろ! なんだよ、1500kpって! こんな値段、ありえんだろ! 詐欺だ! ぼったくりだ! 価格操作だ! 蟹工船だ! 消費者センターに訴えてベーリング海沖でストライキしてやる!」
『弱ってる相手の足元を見るのは商売人の基本なのよ。とはいえ、このぼったくり価格には、さすがのアタシもドン引きだわ』
ならこいつはどうだ。
「じゃあ〝牛丼〟だ! 庶民の味方〝牛丼〟を頼む!」
で、現れた文字《牛丼:280kp》
「んだとぉぉッ!」
『さすが価格の優等生。良心的なお値段ねぇ』
「どこが良心的だぁ、ふざけんな! なんだこのクソ価格設定! この一月の稼ぎでも、牛丼一杯しか食えねぇじゃねぇか! こうなったら……」
それから礼二郎は、ありとあらゆる料理を注文した。
「マジかよ……」
だが表示された価格は、すべて500kpオーバーだった。
唯一毎日でも手が届くのは《水1リットル:3kp》だけだ。
ちなみに野菜や果物など、食料や素材になる物(※トマトやリンゴやハチミツなど)も頼んでみたが、なぜか軒並み1000kpを超える地獄価格であった。
『ほらね、やっぱり牛丼を超える優等生なんて、存在しないのよ、この世には』
「終わった……今度こそ詰んだ……毎日水しか飲めねぇ……」
がっくし膝を落とすと、浮遊携帯がわざわざ顔の前まで来て、ニヤニヤと笑っている。
『ピンポーン! そんなチェリーに朗報で〜す!』
「……んだよ? くだらねぇ事だったら食っちまうぞ」
『あら、その目はガチのガチね。こんな場面でからかったりしないわよ。さすがのアタシもね。だから、お願い。後生だから食べないでもらえるかしら?』
「内容による。話せ」
携帯はコホンと咳払いして、
『たった今、ある方から情報が送られてきました!』
「どうせクソ女神だろ(ゴワンッ※タライ音)」
『だとしても、君には選択の余地がないと思うけど?』
「くっ……なんの情報だ?」
『ふふふ、それは……〝超激安kp食品リスト〟よ』
そうきたか。
否応なく恩を着せようってんだな。あのクソ女神め。
『……あのねぇ、女神様に思うところがあるのは、今までの君の態度から、わかってるけどさぁ。今しなきゃいけないことは何? プライドや意地より優先しなきゃいけないものがあるでしょうが』
悔しいが携帯の言う通りだった。
「……そうだな。確かにその通りだ。すまん。リストを見せてくれ」
『いい子いい子。ほら、ご覧なさい』
携帯生物の画面に文字が現れる。
メガミーメイト(チョコレート味):1kp
メガミーメイト(フルーツ味):1kp
メガミーメイト(プレーン味):1kp
メガミーメイト(メープル味):1kp
メガミーメイト(チーズ味):1kp
メガミルク(濃縮還元):1kp
「なんだこりゃ! パチモンじゃねぇか!」
クソッ、うまいことパクりやがって。
危うく笑いかけちまったじゃねぇか。
(後書き)
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