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第116話 『相棒』

「さて、と……」


 迂闊に動くこともできず、礼二郎は、2階廊下の奥で佇んでいた。

 なにせ、物や人に触れるたびにペナルティが課せられるのだ。

 人通りの激しいリビングになんて、いられるわけがない。

(それに、疎外感から、この世界での仲間や家族の会話を聞いていられなくなった)


「どうするかな、これから……」


〝世界から認識されない〟


 それがどんな状態かなんて、わからなかった。

 とはいえ、うっすらとは予想していたのだ。


 もしかしたら、誰も礼二郎のことを知らない世界なのだろう、と。

 セレスやロリやシャリーやこず枝、そして妹の加代から『どなたですか?』なんて言われたらショックだろうな、などと軽く考えていたのだ。

 もしその程度なら、どんなによかったか。


 だが違った。

 突きつけられた現実は、誰も礼二郎の姿が見えない、声も聞こえない世界だった。

 想像を遥かに超える、孤独で絶望的な世界だ。


「思ったより、きついな、これは」


 今の状況になって、まだ2時間弱。

 礼二郎の心は、すでに折れかかっていた。


 左手甲に刻まれた青い文様〝イライアの魔術印〟をそっと撫でる。


「これがなかったら発狂してたかもな。師匠、ありがとうございます」


 魂で繋がる人物――最恐魔女イライア=ラモーテに感謝をする。

 しかし、心の支えであるイライアは別位相空間から出ることができない。(出た瞬間に礼二郎との繋がりが絶たれてしまう)

 つまり結局、礼二郎はこの世界で一人きりなのだ。


「誰とも話せないのが、こんなにストレスだとはな……」


 昔、電信柱に向かってぶつぶつ言っている人を見たことがある。

 今ならその人の気持ちが理解できる。

 うわぁ、ヤッベェなあの人、なんて思ってごめんなさい。


 そのときだ。空中に小さな物体が現れた。


『匂う! 匂うわよ! ボッチの匂いがプンプンするわ! あら、礼二郎くんじゃない。うふふ、もしかして、話し相手をお探しかしら? 引きこもり歴が長いと、上手く言葉を喋れなくなるんですってね。あー怖い怖い』


 ふよふよと眼前に浮かぶ四角い物、

 女神ファシェル謹製おしゃべり毒舌携帯電話、神器『サナダ』であった。

 画面には、女神ファシェルを子供にしたような、憎たらしい緑髪の美少女(笑)が写っている。


 その姿を見て、声(音声?)を聞いて、内心ホッとしているのは否めない。

 だが、礼二郎はサナダの存在を認めるわけにはいかなかった。

 どんなに孤独に苛まされようとも、だ。

 なぜなら……。


「失せろ無機物。貴様と話すくらいなら、電信柱とワンサイドディベートした方がまだマシだ。」


『コンクリートの棒に負けた!? 奴は無口だけど確かに優秀ね。それは認めましょう。高圧電線を支えたり、犬の縄張り争いに重大な役目を担っているし、怪しい広告の掲示板がわりになったり、色々と役に立ってるわ。でもアタシには、電信柱君にはない、こんな機能があるのよ?』


 サナダの液晶画面が切り替わった。

 そこには、風呂場で生まれたまんまの姿を晒したセレスが写っていた。


「ちょ、お前、それは盗撮じゃねぇか!」


『盗撮よ? で?』


「でって……だめだろ、それは人として」


『人じゃねぇし。精密機器だし。さらに言うと未成年だし。つまり現代の法律では、アタシを裁けないってことよ。オーホッホッ! 法治国家ざまぁ!』


「いやいやいや、人とか精密機械とか未成年とかって以前に、お前はあのクソ女神の神器だろうがよ。ゴワンッ(タライが頭に当たった音)法律が許しても、天が許さんって感じじゃねぇの? 知らんけど」


『君がシレッと脳天に食らってる天罰に関しては、ツッコまないわよ? そんでアタシの行動に関してだけど、うちの女神様は個人の自主性に任せてくれてるんで大丈夫。ってか、どうしてアタシをそんなに嫌うのかしら? こんな素敵携帯、他にはないわよ? 通話もメールも、ネットだってし放題。しかも月額コミコミ0円だし』


「どんな機能があろうが、違法電波だろうが関係ねぇわ。僕がお前を嫌ってんのは、お前があの女神の手下だからだ」


 そう。

 礼二郎は、サナダの存在を認めるわけにはいかない。

 礼二郎をこの状況に陥れた……いや、最愛の妹である大萩加代を、後遺症だらけの身体に戻すように仕向けた、あの女神の手下なのだから。


『女神様の手下、ですって? おうおう、そいつは聞き捨てならねぇわねぇ。アタシは、あくまでアタシであって、誰の手下でもないわ』


「あ? お前は、女神に言われて、ここにいるんだろうが」


『それは事実だけど、少し認識が甘いわね。クラスの美女とよく目が合うからと言って、ついついその日の夜中に清書したメールをそのまま送信して当然のように爆死して学年の伝説になってしまうくらい認識が甘々だわ。別にその子は君が好きなんじゃないのよ? 奇妙奇天烈な君の造形に目を奪われていただけなの。そうね、春先に現れる脳みそがバグっちゃった人を、ついつい目で追っちゃう感じ、って言えば伝わるかしら? そんで、アタシに関して例えるなら、派遣会社の社長さんは確かに派遣さんを派遣するけど、派遣さんの上司かって言われると微妙でしょ? あくまで派遣さんが従うのは、派遣先の指示であって、派遣先の上司であり同僚であるわけよ。でも派遣先既婚男性上司の時間外指示には気をつけなさい。ころっと騙されて職を失うどころか相手奥さんに訴えられて数百万円支払うことになるわよ?』


「僕は派遣OLじゃねぇし。もしそうだとしても、そんなクズには騙されねぇよ。――そんでお前は、派遣元の女神と派遣先の僕、どっちかを選べっつーんなら、どっちを選ぶんだよ?」


『そんなの『時と場合による』としか言えないわよ。その質問は『なぁお前ってワイのこと、どれくらい好きなわけぇ? ニヨニヨ』って聞くバカップルの腐れヤンキー男くらい頭悪いわよ? それに対して『宇宙よりだ〜い好き!』なんて答えるプリン頭のバカ女は、さらに輪をかけてバカだと思わない? そんなバカップルほど、すぐに浮気して別れちゃうんだから、バカバカしくて笑っちゃうわよね。――でもね、礼二郎くん』


「……なんだよ?」


『でも、今の君は放って置けないのよ。たとえ女神様に逆うことになってもね』


 不覚にも、この一言は礼二郎の心を意外なほど揺さぶった。

後書き)


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