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はじまりが唐突すぎる乙女の話

目を覚ますと、知らない場所にいた。



「「「「うおおおおお!!!!!」」」」



私普通の女子高生、三橋レイ。

こんな中世ヨーロッパ的な鎧を着て雄叫びをあげ二十数人の男たちに囲まれるような経験は、

現代日本において100%ないと思うんだけど。


なにこれ。



私はさっきまで学校の廊下にいたはずだ。

最後の記憶といえばドジっ子の友人、双葉 ミオがうっかり足を滑らして階段から転びそうになっていところを助けようとしたのだが一緒に階段から落ちてしまい、よくわからない神秘的な光に囲まれて・・・それで・・・



保健室、なわけもない。

赤い絨毯、煌びやかなシャンデリア、まるでお城のような部屋、ただの公立高校のウチではまずありえないし。

鎧をまとったギャラリーたちも言い分がつかない。



どうしたもんかと隣を見ればミオがスピーと寝息を立てて寝ている。

いや、のんきかよ。私も人のこと言えないけどさ。

とりあえず見たところ怪我はなさそうだし、一安心。



周囲を見渡せば、先ほどから熱冷めやらぬ鎧の男たちが何やらどよめいている。

どうやら私が目を覚まして動いたのを見て様子を伺っているらしい。



「二人いるが、どちらが聖女だ?」

「さあ・・・どちらもじゃないか?」

「しかし古の書には聖女は一人とあるぞ」


「ちょっと何?聖女って。

突然呼び出されて訳分かんないから説明してくんない!?」


大声で前のめりに聞くと、全員驚き仰け反り出した。

人の言葉を喋った!?みたいなテンションで驚かれてちょっと心外。

どう答えようか、お前言えよ、いやお前が、みたいな押し付け合いの絵面がはじまったのを見て更に心外。



「誰でもいいから!はい!じゃあ君!」


指名された鎧の男がビクゥと肩を跳ねさせた。

そんな怖がらなくても。


「世界を襲う魔王からの危機を阻止するには、光の力を持つ聖女を召喚せよ、との言い伝えがありまして・・・」


「は?魔王?聖女?は?」


喧嘩腰に疑問符をつけると鎧の男が恐れるように一歩後ろに下がる。

更に尋問しようと一歩近づいたその時、大きな両扉がガチャリと開いた。



そこから現れたのは、今まで見たことないくらいに眩いイケメン。

結構面食いな自信はある方なんだけど、それでも直視できないくらいのイケメン。


そのイケメンがすごい剣幕でコツコツと闊歩しこちらに近づいてくる。

こちらまで来た彼は跪き、眉間のシワを緩め全人類が落ちるんじゃないかレベルの優しい笑みを浮かべ


「お待ちしておりました、聖女様」



そう言いながら、私の隣で眠っているミオの手優しく口づけを落とした。



「聖女様を温かいベットへお運びしろ。安眠効果のある香を焚き、部屋は厳重に結界を張るのだ。」

「はっ!」



すごい剣幕に戻った彼はテキパキと周りの鎧の人々に指示を出していく。

え?私ガン無視?

嫌なくらい私のこと見ないね君!?チラ見もしないね?!!



「聖女が訪れたことを祝して今日は盛大に宴を開くとする」


「「「「うぉおおおおおおおおお!!!!」」」」


冒頭並のテンションで鎧の男たちが咆哮を上げている。

が、しかし、


「ちょちょちょ、それはいいけどさ。いや、よくないけど!

元の世界帰るけどさ!いや、わたしは!?ねえ!私は!??」



手を上げて自己主張すると、初めて彼は私のことをちらりと見た。

まるで汚物を見るような目で。



「お前は用無しだ」


大聖堂にその凜とした声は嫌に響き渡った。

私たちを取り囲む二十人ほどは先ほどまでのはしゃぎようは何処へ行ったのか、一斉に静まり返り、声の主を唖然と見つめている。



「はあ?」


「顔を見せるな、失せろ。俺たちに要があるのは聖女だけだ。

貴様のようなものは異物とっとと失せろ」


「勝手に呼んどいて何?!何その言い草。あんた何様なわけ」


「・・・俺は、この国の、スターチス王国の次期国王だが?」


「・・・・は?」


「そういうわけだ。お前はそうだな、不敬罪でとりあえず牢屋行きだ。

処罰は今後考える。さ、連れて行け」



支持された鎧の男たちは戸惑いつつも、私に近づき、しっかり両腕を拘束してきた。


何?意味わかんないまま地球じゃないどこかに連れてこられた末、私牢屋に入れられるの?

異国で前科持ち?嘘でしょ?

・・・考えれば考えるほど意味がわからないんだけど!?



「離せやぁああああ!!!!あの次期国王だかなんだか知らないけど、絶対ぶっ飛ばす!」


「お、落ち着いてください」


私の両腕を必死に抑える鎧の男がどうどうと落ち着かせようとしてくるが、はらわたが煮えくり返って仕方がない。

そんなもがく私を見て、蔑みの目で見てくるイケメンをどうしても一発殴りたい。




どうにかこの状況を抜け出す方法がないか、何かないかと考える。


「・・・そもそもなんで私が聖女でないと、あんたは思ったわけ?」


「聖女は、清く柔らかな乙女のみだ。

消去法的に、お前のような見るからに粗雑そうなオンナが聖女であるわけない」



人は見た目が9割だそうです。奥さん。

ショートカットヘアーで自分で切った乱雑前髪、膝や肘のいたるところには教室で男子とプロレスごっこをやった傷跡。

対するミオはいつも綺麗に髪を巻いて、可愛らしくthe 女子力で仕上げているというのに・・・



「それにしても牢屋は納得できないんだけど」


「聖女じゃない理由は納得したんだ・・・」


私の片腕を抑える鎧の男がぼそりと呟いたので、足先を踏んでやった。

いてえっと聞こえた気がしたが、気のせいだろう。


「とにかくお前は目障りだ。ヘドが出る。

早く連れて行け!」



イケメンに理不尽にまくしたてられ、私は粗雑にずるずるとひきづられながら大聖堂から連れて行かれそうになる。

最後の頼みの綱は、一緒にこんな世界に来てしまった友人のみ。



「ミオォォオ!起きてーーー!」


ミオはこんな状況でもまだスヤスヤと寝ているようで、私の声は虚しく大聖堂に響き渡った。



「クソ王子がぁああ!!!!!!!!!」

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