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aRIA  作者: 旅人
8/13

告白-迎え

貴方は意思を表に出す事が下手だった

でも正直だった

そして僕を見つけてくれた


どれほど歩いて来ただろう


ボロボロになった服がこれまでの出来事をを証言している

日は傾き、空に浮かぶ入道雲はオレンジ色に焼けている

aの幻影を追い続けた末

どこか知っている海にたどり着く


本当に不思議な話しだ

あの時と全くの逆

砂浜に、涙の跡を残し寝そべる少女

汚れたズボンの裾が彼女の髪に当たらないギリギリ側まで近づく


「迎えに来た」

少女に告げる

目を開けたその少女はまた泣き出す

何か言いたそうに口を動かしているが言葉になっていない

こちらから先に言いたいことを言わせてもらう

「全部思い出した。そしてほとんどの事は知っている。」

ロマンチックな事が言えない自身に笑えてしまう


彼女は溢れて止まらない涙を両手で拭きながら、私に真意を話し出す

「僕は貴方をずっとこうして繰り返させてきたんだよ?それもずっとずっと貴方に隠して。僕がいる限り何度も何度も貴方を苦しめてしまう…」


思うこと全てをまとめること無く吐き出した後、少し間を置きまた話し出す


「貴方と一緒にいたいのにそうする事が怖い…また傷付けてしまいそうで」


起き上がり、私の服を両手で掴む

顔を押し当て泣き続ける

力を入れて握っているつもりのその手は力が入っていない


許されたいと願う心を憎むように、これ以上許しを乞う言葉を口から出さない

歯を噛み締めて何も言わずに、ただ泣いている自身を嫌悪していた


aの手を取る

彼女に刺されたもう傷の無い手のひらで


「もう大丈夫、どこまでも一緒にいる」

彼女に求めてばかりだった笑顔を、自身自らが行う


「ずっと貴方を守る」

貴方を道具として使うであろう者為の手から

貴方自身の罪の意思から


「一緒にこの夏を終わらせよう」

自身のできる言葉足らずの告白


目にしたのは私を見つめるa


いつも一緒にいた。1番大切なの人。

私だけが知っているかけがえのない少女、これが自身のできる最も適切な彼女の表現方法だ。



目を覚ます

すぐ横にはaがいる

窓際には写真と2つのお揃いのお面

ボロボロの服の私と彼女

着替え直して撮ればよかったか


寝ぼけているのかaは強く手を抱きしめてくる

これまで以上に遠慮なくしがみついている

私からはそうする事はまだ難しい

だから彼女からしてくれるのはありがたい

いつまでも眺めていたい


だがそれも何度目かも分からない今日、8月31日を持って最後になる


この日が終わればどうなるのかは分からない

でも今なら終わりの先にたどり着ける

これまで全ての記憶を見つけ出したのだから


最良の夏の終わりを望む


aはあの日、原理は分からないが自室をお面1枚だけ残して消してしまった

唐突にそうしたした上、一緒に寝ると、言い出したものだから大変だった

一切躊躇無くそうしようとするaに困惑したものの、結局彼女の言う事を聞いてしまう

でも実際、私自身認めにくいだけで嬉しかったのだろう


今夜は寝れないからもう少し寝ておこう

aと共にまた眠り始める




z?


初めて笑顔を見せた時の貴方の表情は今も鮮明に思い出せる

あんなにも喜んでくれた事が僕の救いになってくれた

どんな形であれいつか終わることが約束された繰り返し

それを忘れさせてくれる

とても幸せになれた表情


貴方にはハッキリした記憶はすくない

数が多すぎるから仕方がない事

けれど僕は全部覚えているよ


2人で夏の海をずっと浮かんでいた記憶なんてあまりにも地味すぎて思い出せないんだろうな


他にもまだある

僕が初めてお祭りの屋台の料理を作ってって彼に言った時なんて、貴方は揚げ物全部焦がしちゃったんだ

これも思い出せないんだろうな…


僕の一人称が僕なのは全部貴方のせいなんだよ

貴方は男性だけど自分の事を私と呼ぶから、違うのにしようとしたら僕になっちゃたんだ


僕と自分の事を呼ぶ僕を見て、今の私を不思議がっているのかな

少し寂しい


でもそれでもいい

どんな時も彼は間違えなく最後は一緒にいてくれた

押しつぶされそうな後悔からずっと守ってくれていた

自身を犠牲にしてでもそうしてくれたのだから


きっと貴方は全て当たり前のことをしたつもりなのかな

それが全て凄いことだと当の本人は気づいてないのだろうな

いつも鈍感だったから


もしかしたら彼本人より彼の事を僕は知っている

貴方自身が数えられないほどの繰り返しで教えてくれたから

記憶が毎回なかったから何回も手探りで調べてきて

色んなことを教えてくれた


何回も何回も繰り返して…

最後には本心も教えてくれた


でも僕は後1つだけ隠していることがある

これは最後まで持っていくのを許して

僕ができる唯一貴方にしてあげれることだから

これは貴方への罪滅ぼしではもうない

私ができる最後の贈り物



一緒に住んでいたマンションの屋上

ここで一緒に見る最後の花火

手を握って眺めている


いつまでもこうしていたいと

この一瞬が永遠に続けばと

願いながら

祈りながら

8月32日

貴方との約束を果たす時が来た

そのはずなんだ

そう

そのはずだ


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