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aRIA  作者: 旅人
7/13

意思-「刀」

気づけばあの時、出会って初めて貴方がしたように逃げ出していた

卑怯だよね

ここまで酷いのに、「見つけ出して」と思ってしまったんだ

「起きろ!aの元へ早く向かえ!」

どころかで聞いた事のある不快な声


目が覚める

何故だか慣れてる感覚がする

記憶が一部欠けていた

もはや大して驚きもしない

今はどうでもいいことだ

私の眠りを終わらせた、何処から聞こえたかもわからない言葉

それを思い出す

悪い予感が脳裏を過ぎる

自室から出て彼女の元へ向かう


リビングにはいない

こんな太陽が登る前、外に行くはずもない

ここを出る時はいつも一緒だったはず

1箇所除いて全ての部屋を覗いて見たが、彼女の姿は何処にもない


最後に残るのはaの自室

普通ならここを初めに見るはず

でも何故だかわからない

ドアノブにかける手が震え出す


今まで彼女の部屋の中を見たことがなかったはず

それも無意識でそうしてきた

そうしてきたつもりだった

記憶の奥底ではそうしたいと思い続けていた

知っては行けない何かがある

悪い予感はだいたい当たる


ただの扉が重く感じる

開けては行けない

そう言い睨みつけて来るよう見える


もう逃げるのはこれでやめよう

欠けた記憶に誓いを立てた

ゆっくり扉を開ける


山積みにされた無数のお面

歪な程に広く暗い部屋

そこに無造作に敷き詰められる


数千数万あると言われても、これを見たなら疑う事はしないだろう

それら全ては睨むようにして光の刺さない空を見上げる

塞ぎ込んだこの部屋と、自身のあり方を恨む様にして


中央に少し開けた場所がある

aがそこに1人いる

だがその言動にこれまで全ての記憶を疑う

刃物を首に突きつけている

今から自身を殺すであろう物を握りしめ、震える両手は恐怖に満ちる

矛盾した心情と行動


何故そんな事を


走りだす

お面をかき分け彼女に迫る

どうしてこれ程お面があるのか

何故これ程に必要として来たのだろうか


「僕のせいだ」


耳元すぐのお面が語る

表情を一切変えず、繰り返す

「うそつきね」

「ひきょうものだもの」


つられる様に1つ1つと別の面もざわめき始める

「いつまでくりかえすの」


黒く劣化しきった涙を流しながら流す

「あ の 人 の た め な ら し ね る よ ね 」


最後の面の声を合図に刃物を首に両手で突き刺す

力の入った狂気の一刺し

狙いは外れることは無い


だが

それは別の物に刺さった


間に合った

aの首元に刺さるはずだったそれは、今私の手に刺さっている

宙を見ていた貴方の視線が、血を垂れ流す手のひらを見つめ泣き出した

いつからか力の抜けた両手は自然と刃物から外れる

震える声でaが言う

「僕のせい、僕のせいだ」


aは力の入らない体を、引きずるように動かしながら外へ逃げ出す

繰り返し零す涙と言葉は全て私への償いだ

今の自身では分からない、その後悔を繰り返していた



aのいた部屋をでてすぐの玄関、そこにある残った靴1セット、それを履かずに外へ走りだし彼女を追う


玄関の扉を開けたらそこはマンションの廊下

眺め何て目に入らない

地上から響く蝉の鳴き声、それすら今は受け付けない

一切の暇すらない

手のひらに刺さりっぱなしの刃物を自力で引っこ抜く

痛みは意識が霞むほどの物

だがこの程度で死にはしない

今は苦痛すらどうでもよかった

止血もせず再び走る

近くの階段を駆け下りた。


きっと彼女の言うことは間違えだ

もしかしたらだが彼女の方こそ記憶喪失で、何か勘違いしているのだろう

そう自身に言いきかせる


いや

きっとaは事実しか言ってない

繰り返し繰り返し溜め込んだ何かに、私は気づいてあげることができなかった

霞む記憶を辿る様、宛のないaの姿を追い続けている


誰もいない

動く乗り物は全て無人

誰のためでもない

目的もなくそれらは動く


今の私はそれとは違う

彼女の元へ向かう


間違えなくaの方が足が早い

知っているとも

どう足掻いても追いつけない

先で待つ彼女の幻影が、転々と進む事に見えてくる

幻を辿って、焼けた道を進み続ける



あの不快な声が陽炎の先から聞こえてくる

「これは本当に正しいのか?」

その問いかけはまるで自身に言い聞かせるよう


面の男

何度も見たであろうその姿

「そこをどけ」

言ってみるがやはりその場を退かない


お面の男は急ぐ私に気も止めずいつもの話しの続きを語る

「人類は減るばかりの安全地帯に焦りを覚えた。それとは相対して「 」は膨張していった。」


その男、道を阻む

手に持つ刃物で面の男を切りつける

「それ」が身代わりとなり届かない

突き飛ばされる様にして、後退させられる

男は気にせず語り続ける


「結果「 」を消去する方法を見出す事にした。これまで以上の犠牲を払ってでも。そうするしかなかったとも言える。だがそれなりの価値があった。

だがその価値すらも、「 」に頼るしかなかったのだが。」


「それ」が男の周りへと

影から這い出でる様に現れる

私を先へ行かせる気は無い

手に持つ刃物に力が籠る


「「 」から完成させた物、それは人間の記憶をエネルギーに変換、その力により現実を変化させる、人の手に余るものだった。そんな神にも迫る存在を、本来の目的だけに人間が使うはずもなく、兵器としても活用検討がなされた」


身に覚えがある

私はこの話を聞かなければならない

今にも再び切りかかろうとする自身を抑え耳を傾ける


「だが人間1人の一生程度では「 」をどうにかできるほどの記憶は作り出すことが出来ない。なら記憶を作ればいい。何種類かある方法の1つ、最も単純な答え。数秒で数千年の夢を見せればいい。」


言葉にならない

それはまさに此処のようだ


「結果、人間に半永遠の夢を見せる機構と記憶を食し、蓄え、使用する「 」の性質を持つ物が完成した。それを人間に移植た」


男の話は、お祭りの夜初めに語った言葉に戻る


「名はARIA、ここは偽りの世界だ」


面の男は続けて語る

それはまるで初めの問の様なもの

自身に言い聞かせながら口を動かす


「お前はaに利用されているんだ。記憶を回収する為だけに」


「それ」はaへの疑いと共に腕を刃にしてこちらに走る

私はそれを否定しなければならない

刃物を「それ」に私は振るう

彼女とのこれまでを否定する物を否定する為


「考えてみろ。aがお前の為を思うならどうして事実を隠し続けた」


お面の男の語る声には、私が握る刃物と同じく力が入り少し震える

否定と「それ」に抗ういながらも徐々に私の余裕は無くなる

この手に握る、刃がこぼれていく

今だに抵抗できていることが不思議な程に、この身は裂かれ痛みが増してく


「違う、違う、違う!」


根拠のない否定と共に、刃物を「それ」に振るうこの腕は

まるで「それ」と同じよう

歪な「それ」の腕の凶器と

aの否定を否定し続けたその手の刃物は、もう中心から折れている


「そして彼女は現実にいない。そこにあるのは道具でしかない。人間の為に使われる「 」を元とした兵器だけだ」



「それ」を否定する為、振るった刃物を

語りの終わりと同時に落とす

否定を繰り返しても何にもならない


今、大切な事を思い出す為

自身の記憶の海に飛び込む

ただ立ち尽くす


これをいい機会と言わんばかりに「それ」は怒りをぶつけ続ける


痛みや疑いすらも通り越した先

今にもなってやっと見つけた

aのこれまでの涙と影

彼女をここまで苦しめた原因を


記憶に色が付いて行く


見つけだす事ができなかっただけだ

初めて出会った時の無表情で私を見つめるaの姿すら

逃げ出した私を見つけてくれて一緒にいてくれた彼女の優しさも

花火に照らし出された貴方の初めて見た笑顔すらも

忘れたく無いと願っていたのに今になってようやく思い出せた


記憶をこの世界に食べられても

何度も何度もaは私に記憶をくれた

夏祭りもヒマワリ畑も

きっと認識できていないだけで、それ以上にくれたのだろう


aの存在その物が引き金となり、何度も繰り返した夏の終わり

それは全て彼女の願いだ

利用する為でも何でもない

私と共にいたいと願った答えその物


その願いこそが彼女を苦しめ続けた正体

繰り返す度、私の記憶が無くなる事への罪の意識

私を利用しているのではと自身を責める感情

この世界が偽りである事それその物を隠す罰

私が1人、先に行ってしまわぬかaは1人怯え続けた

自身が嘘になりたくない為

全てこれまで隠してくれた


お面の山は彼女自身が私に悲みを隠す為、集めた表情

1枚1枚が繰り返した数溜まっていった、私の為の優しい嘘だ


彼女の苦しみを受け止められない

私の為のお面だったのだ


私が弱かったからこうなった

彼女の弱さを1つ1つを見つけ出して救って上げれなかったばかりに

でも今ならできる

全部思い出した

今なら


今度こそは

この幻実を超えていける

aと共に



元より私を恨む「それ」自身、恨む理由が既に分からない

ただひたすらに怒りをぶつけ、叫び散らしやめくもに腕の凶器を振るい回すだけだ

「それ」はもう

私に傷を付ける事など到底できない


「それ」に答えを今示す

「今、全てを思い出せた」


世界に食われた記憶を呼び出す

そう、これは初めから出来る事だった

これもまた、忘れてしまっただけだったんだ


初めてのお祭りで聞いた言葉と共に

「現実」


aを迎えにいく

「変換」


向かう先はaの元

阻む者は自身を忘れた幾千の「それ」

私を否定できる者など、そこには誰ももういない

「それ」を切り裂く眩い光

その正体は「記憶」そのもの

aがこれまで沢山くれた

今の私の全てがこれだ

記憶を片手で掴み取る

「開始」

閃光が傷跡の残る手のひらから溢れ出す

1つの意志

aへの答え

それが形となる


「刀」

空に真っ直ぐ伸びた決意

「今度こそ」

そう今度こそ

aを守る


目の前に迫る「それら」は無数の疑いその物

大小形全ての違う「それら」はどれも同じく自身を恨む

軍勢は正真正銘の「個」に無数の怒りを切り込もうとした


一振の斬撃

空を記憶が切り裂いた

光すら置き去りにした一撃は

否定する者を当然の如く置き去りにした

aへの意思を否定する者を


己は既に終末が訪れていることを「それ」は認めない

余る自身で形を紡ぐ

輪郭など既に必要性をなさない

1つの姿に合わさり迫る


既に「それ」を超えた先

そこに1人佇むz

その背後を引きずりこまんとばかりに追う


もう振り返る必要すらない

「刀」が姿を眩ませる

同時に「それ」を囲むようにして

無数の刃が絶え間なく、斬撃を浴びせ続けた

「それ」に終わりが迎えに来る


そこに仮面の男の姿はどこにもない

やるだけやってまた姿をくらました


もうこれらの事はどうでもいい


aの元へ早く行かなくては

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