【その出会いは、少年にとって幸運な事だったのだろうか】
「…任務、完了……生存者…無し………俺以外の生存者、無し…これより、帰還する」
青空の反射した湖のような瞳を持つ少年は、赤に染まった部屋から立ち去った
水色の瞳の少年を迎えたのは黄金色の髪の男性
少年はそれを見ると跪き、任務完了、生存者無し、とだけ呟いた
黄金色の髪の男性は困ったように頭を掻く
少年はそれを気にもせずに自分に割り当てられている部屋へと戻っていく
黄金色の髪の男性は、またあいつに置いて行かれない奴はいなかったか、とだけ呟いた
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男が少年を見つけたのは、彼の本拠地から離れた国の紛争地域だった
少年は空腹からなのか疲労からなのかわからないが彼がたまたま覗いた建物の中で倒れていたのだ
少年を抱え仮拠点へと戻ると、少年は目を覚ました
彼はあえて距離を取り、少年へと話しかける
しかし少年にはどの言葉も通じなかった
どの言語も、殆どの言語を習得していた彼が知るすべての言語が通じなかった
少年は混乱していた
何故、目の前のこれは自分を襲わないのかと
一体目の前のこれは何の音を発しているのかと
そもそもここは何処なのかと
男は言語が通じないことに関しては後回しにするとしても少年があまりに細く、また、あまりにボロボロの服を纏っていることは見過ごすことが出来なかった
それから数日が経った
少年は言葉を覚えていった
少年は男がレジスタンスというものだということを知った
着々と準備を整えていることも知った
少年は男にある提案を行った
少年は彼の本拠地の国にいた
少年のいた場所とはまるで様相の違う国
争うこともなくみながある程度の義務を背負いある程度の自由を与えられ社会というシステムに組み込まれ何事もなく回っていた
それを見た少年は、あの戦場の方が幸せだろうとなんとなく思った
戦場の方がまだ、人間という意志というものはあるな、と。
ある日少年は男が拾ってきた赤子を見た
黒い髪に紅色の瞳を持った赤子
男は少年に、もしこの子を殺せと言ったら殺せるのか?と聞いた
少年はまるで躊躇わず、あなたがそれを望むなら。と即答した
男の顔は酷く寂しそうだった
少年は足元に転がる大量の塊を見た
それはこの国の政治家たちだったもの
少年は男が頼んだ仕事をこなしただけにすぎなかった
何も思うことはなかった
むしろこれからこの国を起点とした世界戦争が始まると思うと思わず笑みが浮かんだ
少女は少年に問う
あなたはなにが好きなの?と
少年は答える
何もない、と
少女はさらに問う
じゃあ嫌いなものは?と
少年は答える
何もない、と
まだ幼かった少女は少年に純粋な疑問をぶつけた
じゃあ、なんであなたは生きてるの?と。
彼が、それを望んだから。
考えることもなく、少年はそう答えた
群青色は考えた
そうして実行した
それは成功した
彼の思惑通り、バランスを崩した世界は戦争へと向かっていった
群青色は少しだけ考えた
群青色は、答えを見つけられなかった
群青色は、未だ大切なものを見つけられていなかった