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さぁゲームを始めよう

初投稿です。

色々描写不足やわかり伝い点があるかと思いますがどうか宜しくお願い致します。


 先程から絶え間なく銃声が聞こえ、俺は壁に背を預けつつも銃弾の嵐が背後の壁を乱暴に叩くのを感じていた。

 

「随分と楽しそうじゃねえか……笑ってるぜ?」

 

 隣の髭面のおっさんが声を掛けてくる。

 同じように壁へ避難しているそのおっさんの手にはサブマシンガンが輝いており、おっさんはニヒルな笑みを浮かべていた。

 ……笑みを浮かべているつもりはないのだがと口元に手を当てれば、なるほど、目の前のおっさんと同じように口角がつり上がっていた。

 

「いや、久しぶりだからかな。こんなに接戦になったのは」

 

 10人居た仲間は既に8人戦死(KIA)している。

 後居るのは俺とおっさんだけだ。一方、敵は4人生き残っており、今熱心に銃弾で俺達を口説いている最中だ。

 

「2:4を接戦かい、言うねぇ」

 

「俺とアンタがいりゃ、なんとかなるだろ?」

 

 そう挑発するように言う。

 

「違げねぇっと、アンタじゃねえ、俺とお前の仲だろ? 名前で呼べよ相棒(バディ)Yuu」

 

 Yuu、というのは俺の名前だ。

 勿論この世界のと言う枕詞は付くが。

 

「……OK。さて、この状況をどう打破するんだい、Rare」

 

「決まっているだろう。こうするのさ」

 

 そう言いながら一瞬顔を出す。

 ほんの僅かなリロードの隙を突き、断続的な発砲音が聞こえると直ぐに顔を引っ込める。

 瞬間、アナウンスが流れる。


Midona:死亡

 

「ほらな?」

 

 どうだと言わんばかりに笑顔をみせてくるおっさんことRare。

 

「やるねえ。俺も負けてられんな」

 

 そう言って命綱であるレンガの壁から飛び出す。

 銃弾は尽きた、ならナイファー(ナイフ使い)として接近戦しかないだろう。

 その無謀とも言える行動の結果は

 

WIN:チームGhost

 

「Yuu! 流石だな! あの銃弾を突っ切ってナイフキルはやばいな!」

「Rareとの連携で負け無し、やっぱ凄えよあんたら!」 

「いやー相手は強敵でしたね」

「開幕ヘッドスナイプされた雑魚は黙ってどうぞ」

 

 戦闘終了後、ブリーフィングルームで戦死した奴等が次々と話しかけてくる。

 幽霊ではない。単純にゲームが終わって復活しただけだ。

 このフルダイブ型仮想システム戦場ゲーム、『バトルスペック』と言うゲームの中で。

 

 さて、この祝勝ムードに水を差すようで、非常に言い辛いな。

 どこのゲームでも、こればっかりは慣れない。

 

「サンキューフレンズ。あー……こんな中言い辛いんだが」

 

 頭を掻くモーションをしながら、そう切り出す。

 他のメンバーは疑問符を浮かべる。文字通り、画面に。

 と言うか、全員で示し合わせたように同じ事をするな。画面とログが埋まる。

 

「えー、俺ことYuuは、今日でこのゲームを引退します」

 

 一瞬の静寂。

 

「嘘だろおい!」

「酷い! このゲームは遊びだったのね!」

「引退とか、はは、釣り乙……乙……」

「ふーん新しいメンバー探さないとな」

「おい糞雑魚。お前に人間の心はねえのか」

 

 その後、洪水のように口々にチームメンバーが発言する。

 

「あーまあリアルの都合で色々あってな、ちょっとできなくなりそうなんだ」

 

 まあ、当然方便だが。

 詳しい理由を言わないのが角を立てないコツである。

 

「あーリアルなら仕方ないか」

 

 その声に賛同するように追及の波が引いていく。リアルは最強なのだ。

 まあ、一部の廃人の価値観は逆なのだが。

 

「それじゃあ、またな!」

 

 挨拶もそこそこに俺はログアウトのコマンドを実施する。

 

「あ、おいYuu! 良ければ」

 

「え?」

 

 相棒だった髭面のおっさんことRareが何かを言っていたが既にログアウトの選択をしていた俺は、最後まで聞くこと無くゲーム世界から現実世界に戻ってきた。

 

「ん、何だったんだろうか。……まあ今から戻るのも何だし、もう会うこともないだろうからいいか」

 

 そう言いながら俺は頭をすっぽりと覆う、巨大なヘルメット。仮想世界にダイブする装置『アウェイク』を外す。

 割りと重量があるため、ベットに横にならなければプレイ出来ない所は難点だがその分高機能なタイプだ。

 安価な『リフューチャ』や『テクロイド』とはやはり違う。高いお金を出して買ったかいがあったと言う物だ。

 もっとも、更に高額な『ファインド・ティーク』は……俺の給料では少し無理がある。

 初期費用だけではなく、メンテナンスや光熱費も相応に高いともなれば、流石に俺も手が出なかった。


「ふう、さて……次は何のゲームにするかなあ」

 

 肩を鳴らしながら俺はパソコンを立ち上げる。

 

「フルダイブの仮想型って言う夢のシステムが出ながら、未だ立体ディスプレイも無く、パソコンもノート型のままか……」

 

 曰く、技術が違うらしいがそれぐらいなんとかならないのだろうかと、先程のゲームのリアリティを思い出しながら愚痴を吐く。

 

「飽き性な所は、性格なのか歳を取ったからなのか、どっちなのかね」

 

 今までやっていたゲーム。『バトルスペック』を止めたのは、リアルの都合とは言ったものの、実際は飽きただけの話だった。

 前だったらクリアや実績、トロフィーやコレクション要素まで完全クリアまでやっていたが、今は途中で空きて投げ出すことが多くなってきた。

 それだけ、体力が落ちてきたのか、集中力が落ちたのか、はたまた熱中できる程面白いゲームが無いのか。

 

「やだやだ、思考がおっさん臭くなってきた。昔は良かっただの、レトロゲーのほうが面白いだの、そんなの口にだすように成りたくないもんだ」

 

 今は今、昔は昔である。

 

「ってもなあ。面白いゲームって言っても」

 

 画面に目を滑らせる。

 よく行くゲームランキングのページだ。勿論、映っているのはフルダイブ出来るタイプのだ。

 ちなみに、フルダイブと言うのは完全に意識をゲーム内に写して、自分の動き……正確には脳波なのか生体電気なのか忘れたが、ともかくそう言った物を検知してコントローラーを動かさず、自分で動ける事である。

 まあ、言ってしまえば夢と同じだ。

 

「一時期はデスゲームが凄く流行ったよなあ」

 

 仮想世界にフルダイブ、と言えば数多くの小説、漫画、ゲームで出てくるのがデスゲームだ。

 ログアウトができなくなり、死んだら現実の自分も死んでしまう……と言ったネタだ。

 

「まあ、実際はひどかったな」

 

 実際は、と言うのはそう言った事件が起こったわけではない。

 いわゆるゲームのお約束、としてそう言ったイベントを起こした事があったのだ。

 ログアウトを出来なくさせ、ゲームイベントでデスゲームの説明をする……と、ここまでは良くある話だが当然イベントの為、ログアウトはしばらくすれば出来るようにしてあった。

 その後、起こったのは壮絶な訴訟と炎上である。

 ユーザーから大不評と社会的な問題にもなったそのイベントを起こした会社は倒産。

 故に、そう言ったイベントは起こらないようになり、本当に一部のイベントではそう言った趣向を凝らす所もあったが

 

「これはデスゲームだ、なんて言ってる横にこれはゲーム上の演出です。なんて注意書きが書かれちゃ興ざめだよな。会社的には正しいんだろうけどさ」

 

 そんな独り言を言いながらランキングを見ていくが、どれもこれも引かれる物がない。

 

「ろくなもんがねえな。ん、通知が来てる、なんだチャットか」

 

 ボイスチャットどころか画面通話かフルダイブでの会話が普通になってきたこの時代だったが、俺は未だ文字だけのチャットツールを使っていた。

 俺だけではなく、結構利用者も多いらしい。

 理由は色々だが、俺としては、悪い言い方だが簡単に切れるところだと思う。

 実際に話す、声を聞いた相手と疎遠になるのは大概が面倒な事になるからだろう。

 そう思いながらチャット画面を開けば、文字が飛び込む。

 

『やあ、この時間にインは珍しいな』

 

 相手は神をも恐れぬニックネームにしている相手、YHVH(ヤハウェ)だった。

 もう一年近くの付き合いになる相手だが、一緒にゲームをしたことは無い。

 ヤハウェはファンタジー系やスポーツ系のゲームが好きらしく、逆に俺はちょっとコアなゲーム。戦場系やホラー、ゾンビ系が好きと言う事で嗜好があわないためだ。

 が、非常に話が合うため、今もこうやってチャットで会話をしている。

 

『ああ、今までバトルスペックやってたが飽きちまって引退宣言してログアウトしたった』

 

『何。結構ハマってなかったか?』

 

『そこそこな。でもなんか飽きちまったんだよな』 

 

『なるほど、やはりファンタジー系だってことだな。ほらコッチには猫耳っ娘や狐耳っ娘がいるぞー』

 

『ぐ、いや別にファンタジー系がダメってことはないんだぜ。ただ』

 

『ただ?』

 

『レベル上げとかの時間が取れんから嫌』

 

『上げなきゃいいだろ。いいだろ。』 

 

『周りにおいてかれるだろうが』

 

『課金』

 

『ころしゅぞ』

 

 俺にそんな金はねえ。

 社会人として給料こそもらっているものの、一度課金したら地獄を見るのは体験からも明らかである。

 預金残高を見て、嘘、私の残高低すぎ……みたいな事はもうなりたくない。絶対にだ。

 

『金はあるんだろう?』

 

『ヒント:生活費』

 

『そういえば都心だったか。それでも貯金はあるはずだが、ひょっとして:風俗』

 

『クリーンな生活を心がけておりますので、それはない』

 

『エロゲーか?』

 

『そっち方向に持っていくんじゃねえ。か、彼女かもしれないだろ』


『「」』


『なんか言えよ』

 

『すまんな。切ない見栄に涙が禁じ得なくて、画面の前で号泣してた』

 

『月の無い晩は背後に気を付けろよ』

 

『通報しました』

 

 と、そんな馬鹿なやり取りを続けていく。こういった馬鹿話を出来るのも悪くはない。

 そんな中、ゲームを探している中でオススメを一応聞いておく。

 結構ゲームはやりこんでいるらしく、色々教えてもらうこともある。

 

『んー……一個あるといえばある』

 

『へえ、どんなゲーム』

 

 と、そこで返信が止まる。

 普段は即回答が来るヤハウェに取っては珍しい。

 どんなゲームなんだろうか。紹介しづらいえぐいやつなのだろうか。

 

 

『ABゲーム、って聞いたことあるか?』

 

 その名前を見た時に、一瞬だけ、手が止まった。

 

『まあ……ある意味で有名で無名なゲームだからな』

 

 ABゲーム。それは一部のゲーマーなら有名なゲームだ。しかし、無名だ。

 何故そんな矛盾が起きるのかは、このゲームの異常性にあるからだ。

 

『アカウントは紹介制、んで、攻略情報禁止(・・・・・・)だっけか』

 

 ゲームとして、攻略情報と言うのは切っても切れない関係だ。

 有名なゲームであるほど、攻略ブログやWIKIが充実している。

 動画配信やプレイ動画実況も多かったりするのだが、その一切を禁止されたゲーム。

 

『ああ、攻略情報がネットに上がれば即アカウント削除(・・・・・・・・)

 

 そう、紹介制にもかかわらず、もし何かバレれば即座にアカウントが削除されるのだ。

 実際、そんな事は無いだろうと高をくくった馬鹿がブログに載せたが即座にブログごと削除された。

 アカウントも削除されたらしい。

 

『まあでも、仲間内だけで交流ツールを使えばいいんだろ?』

 

 そんな俺の発言は次のヤハウェの発言で潰される。

 

『いや、なんか知らんがそういったのも何故かバレる。流石に監視ってことはないだろうから、多分密告だろうが』

 

『密告って……仲間内で? メリット無いだろ』

 

『いや、間接的にはある。そいつが居なくなるってメリットがな。ついでに、ただのプレイ動画ですら攻略情報とみなされる』

 

 なんだそれ、と思わなくもないが……

 

『んで、その話題を出すって事は、まさか?』

 

 そう、ここでそんなABゲームなんて曰く付きのゲームの名前を出すのだ。

 それはつまり

 

『ああ、アカウント持ってる。んで、紹介もできる』

 

 ビンゴだ。

 珍しく、ワクワクしてきた。

 男の子はいつだってロマンを求めるものなのだから。

 ……男の子、ではもう無いな。

 

『やりたい』

 

『ヤりたい?』

 

『カタカナにするんじゃねえ。話をしてきたってことは誘う気だったんだろ?』

 

『まあな。ただまあ、お願いを聞いてくれればな』

 

『お願いねえ。……多分知っているだろうが、詐欺みたいにしたくないから言っておくがそのアカウントな』

 

『知っている。まあお願いは後でいい。とりあえず招待送っておく』

 

 僅か数秒後にゲームの招待メールが飛んでくる。

 これもフルダイブ型だ、アカウント作成もゲーム内との記載があるから一度チャットを切らないとダメか。

 

『了解。んじゃアカウント作ってくるから一旦切る』

 

『ああ、んじゃコッチもログインはしておくか。ああ、それと』

 

 切ろうとした俺は、続くヤハウェの発言に、少し妙に感じた。

 

『アカウント作成の時に、止めないでくれよ。止めたらその時点で招待権無くなっちまうからな』

 

 例えば、これが直ぐに飽きて止めないでくれ、ならわかる。

 アカウント作成時、と言うのが気にかかった。

 

『キャラデザがクソとか?』

 

『いや、アカウント作成の時に質問があるんだがな』

 

『ああ、良くあるこの質問の結果でステータスとか性格とか決まるやつか』

 

『1000個ある』

 

 は? と思わず口に出してしまう。

 

『多すぎだろ。そりゃ止めたくなるわ』

 

 だが、その発言も否定される。

 

『多さじゃない。その、凄い、気持ち悪いと思う』

 

『気持ち悪いって、グロい質問とかされんの?』

 

『……やってみればわかる。もう一度言っておくけど途中で止めないでくれよ?』

 

 わかったと回答を返すがその発言に少しばかり気にかかった。

 

「うーん、まあファンタジー系が好きって言ってたし、グロい質問とかえぐい質問なのかね」

 

 サイコパスチェックかなにかだろうかと思って俺は一度パソコンを閉じると、再度『アウェイク』をかぶる。

 パソコンと連動させてあるので、招待メールから視覚クリックをすると、意識が吸い込まれるように仮想空間へと向かう。

ご感想、ご意見頂けると大変嬉しいです。

些細な一言でも、どうぞ宜しくお願いします。

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