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天国塔  作者: 前田瑠希
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第八話 神話の記憶


「あれ……私、確か目を斬られて……」


 ルビアの目の治療をしている間にエレンとルビアは水晶の外に弾き出された。試練を終えたら自動的に外に出される仕組みだ。


「ルビア、私が魔法で治したのよ。ちゃんと見える?」


「あ、はい。大丈夫です……」


「そう。それは良かったわ」


「あの、エレンさん。ありがとうございます」


 そう言ったルビアは落ち込んでいる。きっと自分は足手まといなのではないか、などと考えているのだろう。元気印の娘から元気を取ったら何も残らないではないか。仕方がないと思ったエレンはルビアの右腕も魔法で治しつつ、頼み事をする。


「ルビア、お願いがあるんだけど」


「……はい」


「私を転移装置まで運んでくれる?正直、疲れちゃって」


「それは、いいですけど……」


「それじゃあ、お願いね」


 ルビアの右腕の治癒を終えたエレンはルビアに肩を回す。本当に限界だった。身体中は痺れており、頭痛も酷い。立ちくらみも酷く吐き気も酷かった。聖域に居続けた影響だ。平静を装っているが、気を抜いたら気絶してしまいそうだ。


「……ルビア、あんたは足手まといなんかじゃないわ。正直、とても助かっているし、頼りにしている。私に助けられなかったら死んでた、なんて考えない事。友達だから助けるのは当たり前でしょう?それに、今は私がルビアに助けられてる。これでおあいこよ。だから……気にしないように」


「エレンさん……」


「今日はここまでにしましょう。休養も必要よ」


「わかりました。あの、エレンさん。エレンさんは試練はもう突破したんですか?」


「私?そうね、どうやらさっきので突破した事になったみたいね。まあ、色々あったのよ」


 それっきりエレンは黙り込んでしまう。喋る気力が無いのだ。ルビアは肩を回しているエレンを見る。とても疲れた顔をしておりとても辛そうだった。ルビアは心の中でエレンに感謝をする。エレンがいなければ、自分は今頃死んでいただろう。


 節制の試練がある部屋を出る。試練に挑戦せずに先に進む事は出来ない。挑戦せずに扉を開けようとしても扉が開かないようになっているのだ。


 試練のある部屋を出て通路を少し歩くと転移装置があった。エレンとルビアは翼の紋章が描かれている左手で転移装置に触れる。身体全体が光に包まれ、一瞬で天国塔の外にある転移装置に移動した。


 エレンは深呼吸をし、新鮮な空気を体内に取り込む。聖域に居続けた影響の身体が少しずつ緩和されていく。身体の痺れが徐々に取れていき、頭痛も治まってくる。吐き気も段々と無くなってきた。肩を回していたルビアから腕を放す。


「もう大丈夫よ。ありがとう」


「エレンさん、大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。助かったわ。本当にありがとう。それにしても、もうすっかり暗いわね」


 エレンとルビアが天国塔に居る間に外は夜になっていた。


「そうですね。もうすっかり暗いです」


「ルビアは天国亭に泊まっているんだっけ?」


「はい。エレンさんは?」


「私?私は野宿よ。お金が無いもの」


「え?──野宿ですか?」


「そうよ。誰にも迷惑をかけないようにするから安心しなさい。その辺の川で水浴びでもするから大丈夫よ」


「何が大丈夫なんですか!野宿なんて駄目です!」


「いや、だってお金が無いし」


「それぐらい私が出しますから!もっと私を頼りにして下さい!」


「いいの?昼間あんなにご飯食べたのに?」


「いいんです!私はこの街の皇帝の娘ですよ!お金ならいくらでもあります!だから、だから野宿だなんて、お願いだからやめて下さい!」


 ルビアはそう言ってエレンの右手をぎゅっと握る。


「……わかったわ。そこまで言うならお言葉に甘える事にするわ。ルビア、ありがとう」


 ルビアはルビアなりに責任を感じているのだろう。だが水晶の中の出来事は状況が状況だったのだ。あの時は仕方がないとエレンは思う。嫌な事があった時は酒を飲んで忘れるのが一番だ。




 エレンとルビアは天国亭のカウンターでお酒を煽っていた。ルビアは赤ワイン、エレンはドライマティーニを飲んでいる。


「あーーっ!これよこれ!この味は久しぶりに飲んだけど、これを飲みたかったのよ!」


 エレンがドライマティーニを一気にグイッと飲み干し、カウンター越しにマスターにおかわりを注文する。


「よくそんなに飲めますね……」


 ルビアは赤ワインをチビチビと少しずつ飲んでいる。


「お酒はいいわ。嫌な事を忘れさせてくれる。一時的にだけどね。酒は飲んでも飲まれるなってね」


「ほう。姉ちゃんはそんなガバガバ飲んでも酒に飲まれない自信があるって事か?」


 エレンが注文したドライマティーニのおかわりを提供しながらカウンター越しに天国亭で酒場を経営しているマスターがいきなり話し掛けてきた。


「……あんた、いきなり話し掛けてこないでよ」


「すまんすまん。久しぶりに面白そうな客だったから、つい」


「まあいいわぁ。今の私は機嫌がいいから会話に参加する事を許すわぁ」


「エレンさん、酔ってますね?」


「ルビア、私は酔ってなんかいないわぁ」


「はは、こりゃあ姉ちゃんが介抱しないといけないな」


 エレンの喋り方が普段とは違っていた。語尾を伸ばして喋っている。酔っている証拠だ。マスターはルビアに同情の視線を向ける。ルビアも困った顔をした。当の本人はルビアとマスターのやり取りを知らずにドライマティーニを一気に飲み干している。


 マスターがドライマティーニのおかわりをエレンに提供しながら言う。


「最近は天国塔に挑戦するのは腰抜けばかりでな。許可証を登録した直後は強気で息巻いているが、いざ入るとこんなはずじゃなかった、って泣き顔で戻って来るんだよ。あるいは死んじまうか、だな」


「ただ単に実力が無いだけでしょ」


「そうなんだよな。大概の奴らは、許可証を貰えるって事は天国塔を制覇出来る実力を自分が身につけたって勘違いしちまうんだよ」


「馬鹿ねぇ」


「まあな。……どうやら姉ちゃん達はそういった馬鹿な連中とは違うようだな」


 マスターがエレンとルビアを見ながら言うと、また空になったエレンのグラスにドライマティーニのおかわりを注いでやる。


 ルビアが遠慮がちにマスターに言う。


「いえ──私は」


「マスター、ルビアは凄いのよぉ。剣技で右に出る者はいないわぁ。多分、私より強いわぁ」


「そうかそうか。良かったな姉ちゃん。認めて貰って──ん?ルビアっていうと、ノア皇帝のお子さんか?」


「あ──はい」


 ルビアは恥ずかしそうに答える。さすがにノアの街で一族の名前を知らない者はいない。


「ノア皇帝の娘さんが、なんでまた天国塔を登ろうと思ったんだ?危険だから辞めた方がいいんじゃないか?」


 マスターがルビアにそう聞いた時、エレンが真面目な顔で言った。


「マスター、他人の理由を詮索しようなんて野暮でしょう。誰にでも聞かれたくない事の一つや二つはあるわぁ。それともマスターには聞かれたくない事なんてないのかしらぁ?」


「……確かに俺が無粋だったな。すまない。これはお詫びだ」


 マスターがエレンにドライマティーニ、ルビアに赤ワインの新しいのを提供する。そのお酒の分はサービスのようだ。ルビアは「気にしないで下さい」と頭を下げる。


 エレンは大分酔っ払って来たのでマスターからのサービスのドライマティーニで最後にする事にした。グイッと一気に飲み干す。ルビアは相変わらず赤ワインをチビチビと飲んでいる。エレンはマスターに水を要求する。


 グラスに水が注がれ提供される。エレンは水を一口飲み、気になった事をマスターに聞いてみた。


「マスターは天国塔には登った事あるのぉ?」


「俺か?登った事はある。俺は第二の試練までやったが諦めた。あんなの命がいくつあっても足りやしねぇ。過去の記録にあった天国塔の最上階まで辿り着いたクリエイド一族の奴は化け物だよ。あんなの普通の人間じゃあ無理だ。姉ちゃん達も悪い事は言わねぇ。無理だと思ったら諦めた方がいい。命は大事にしろ、だ」


「まあね。確かにそうだわぁ。でも、私は諦める訳にはいかないわぁ。とりあえず、今日もクラディウスの糞ったれに乾杯」


 エレンが水が入ったグラスを掲げるとマスターも水の入ったグラスを掲げる。エレンとマスターは無意味に水で乾杯した。その様子にルビアが笑い出す。


「プッ……アハハハ!その乾杯の意味がわからないんですけど!」


「ルビア。アーメンハレルヤピーナッツバターよぉ。そう祈ったら天国塔で死なないから大丈夫よぉ」


 エレンが言っている事はもはや意味不明だった。マスターも思わず笑ってしまう。


「ハハハハッ!意味がわからん!」


「祈りなんてこんなもんで充分よぉ。そもそもクラディウスなんかに祈りなんて捧げなくていいのよぉ」


「おいおい、姉ちゃん。あんまし外ではそういう事は言うなよ?ノア教会の奴らに聞かれたらまずいぞ。異端者として処刑されちまうから、外では発言に気をつけた方がいい」


「へぇ。異端者扱いねぇ。あんな糞を疑いもせずに信仰してるなんて。だから人間は駄目なのよぉ」


 エレンの目がトロンとしている。マスターとルビアはエレンの今の発言に眉をひそめる。まるで神であるクラディウスに会った事があるような口ぶりだ。


 ルビアがエレンに質問をしようとした時、エレンは気持ちよさそうな顔で眠ってしまった。マスターがエレンを見て首を傾げる。


「……もしかしたら、この姉ちゃんは神様と関わりがあるのか?」


 マスターの問いにルビアは困った顔で答える。


「私にもわからないです。ただ、これが関係してるかどうかはわからないんですが……エレンさんは私が見た事も聞いた事も無い召喚魔法を使うんですよね……」


「それはどういう召喚魔法だ?」


「魔獣を召喚する魔法って聞いた事あります?」


「いや……見た事も聞いた事もない。魔獣を召喚する魔法なんて、魔術書にも載っていないはずだ。俺も天国塔に上る前に一通り魔法は勉強したが、魔獣を召喚する魔法なんて初耳だ。そもそも、召喚魔法はかなり高度な魔法だし、召喚出来るとしても霊的な存在だけだ」


「それがエレンさんが召喚した魔獣は霊的な存在とは言い難いんですよね。エレンさんが召喚した魔獣には肉体もありましたし、生き物に見えました。それに、魔法を使う時って普通は魔法用の補助装置の役割である杖を使いますよね?でもエレンさんは杖を使わないんですよ。文献で読んだ魔法の歴史だと、昔は杖を使わない魔法しかなかったのはマスターもご存知ですよね。でも、魔法技術が進歩して、杖を使えば魔法の発動はかなり楽になるみたいなんですけど、エレンさんはどうしてわざわざ昔の方法の魔法を使っているのかも疑問に思っているんです」


「……なるほど。難しい事は俺にはよくわからねぇや。とにかくだ、この姉ちゃんにも色々と抱えてる物があるんだろう。それは俺にはわからないが、この姉ちゃんを支えてやるのがお前さんの役割かもしれないぞ」


「……はい」


 ルビアはエレンを見る。とても気持ちよさそうな顔をして眠っている。そろそろベッドで寝かせてあげようと思い、マスターにお金を支払う。マスターに軽く礼をすると「また飲みに来るのを楽しみにしてる」と言われた。


 ルビアはエレンをおぶって部屋に向かう。先程、部屋の手続きを済ましたが一人部屋は空きが無いらしく、二人部屋は空いてないかと受け付けの人に聞いた所、二人部屋なら空きがあるとの事なので、二人部屋に泊まる手続きを済ました。エレンは最初は嫌そうな顔をしたが野宿よりはマシだと思い、渋々二人部屋でルビアと一緒に泊まる事を了解した。


 ルビアの背中で可愛く寝息をたてながら気持ちよさそうにエレンは眠っている。思ったよりもエレンの身体はずっと小さい。この小さな身体で、一体何を背負っているのだろうか。


 部屋の前に辿り着いて、鍵を取り出し部屋の中に入る。明かりを着け、エレンをフカフカのベッドに寝かせる。


 ルビアはエレンの黒いブーツを脱がせた後に気付く。そういえばエレンの替えの服が無いと。明日一緒に買い物に行こうとルビアは考える。


 ルビアは寝間着に着替える。今日は物凄く疲れたのでお風呂は明日入る事にした。


 ルビアはエレンの横に寝転がる。エレンの頭を優しく撫でると、エレンがギュッとルビアの撫でている手を握った。普段のエレンからは考えられない可愛らしい仕草だ。


 ルビアはそんなエレンに対して笑顔になる。支えていきたい──ルビアは心からそう思った。


 瞼がだんだんと重くなる。エレンの寝顔を見つめるルビアの目が閉じられ──ルビアも眠りについた。







 エレンは夢を見ていた。


 ここは、どの時代で場所はどこだ?最初に浮かんだ疑問はそれだった。目に映る景色は、辺り一面砂漠だった。本当に何もない殺風景で砂だけの世界。前方の景色には人間どころか生き物がいない。


 後ろを振り向くと、髪が長く赤い髪の色をした少女がしゃがんでいた。地面の砂に何かの絵を描いている。


 その少女は瞳の色も赤かった。ルビアと見間違えそうになるが、よく見たら違う。砂の地面に絵を描いているその少女はルビアではない。だが、エレンはその少女の事をよく知っている。


 その時、空から声がした。エレンが見上げると、翼を広げてしゃがんで絵を描いている少女に向けて空から手を振っている銀髪の少女がいた。エレンは空を飛んでいる銀髪の少女の事もよく知っている。


 赤髪の少女は絵を描いている手を止め、空を飛んでいる翼を広げた銀髪の少女に手を振り返す。


 空を飛んでいた銀髪の少女は、赤髪の少女の前に降り立ち、赤髪の少女に聞く。


「どう?何か思いついた?」


「大体は。どうかな、これ」


 赤髪の少女は先程まで砂の地面に描いていた絵を見せる。


 描かれていた内容にエレンは驚いた。

 

 人の形をした男と女の絵に、海や森林、他の沢山の生き物に、家などの建造物が地面一面に描かれていたのだ。よく見たらエレンの足元にも絵の一部が描かれている。


 絵を見た銀髪の少女は絵の具体的な説明を求める。赤髪の少女は次々と疑問に答えていく。


「この形の生き物の名前は人間にしよう。そっちの大きな波動が描かれてるのは海って名称にしようと思う。細かくすると水だね。それは森林って名称かな。細かくすると、森とか林とか、木とか。後はそこの綺麗なのは……花って名称にしよう。その生き物は魚って名称、そっちの四つ足は馬って名称、それは麒麟って名称……」


 銀髪の少女は赤髪の少女の説明にふんふんと頷いている。エレンは最初は何を説明しているのかがわからなかった。だが、描かれてる絵を見回し気付く。そしてその事実に驚愕した。


 この二人の少女は“世界”を、そして“文明”を考えているのだ。


 ある程度説明を聞き終えた銀髪の少女は赤髪の少女に質問をする。


「“これ”は始まりと終わりはどうするの?終わりは無し?」


「人間とか他の描いてみた四つ足のとか魚とかその他の事?……そうだなぁ。じゃあ全部纏めて生物って呼称しよう。終わる時の終焉の名称は……死、かな。生物ってのには、命っていう限りのある装置をつけよう。生物の時間は無限ではなく、有限。後は……後継ぎを作る方法も考えてみようか。そうだなぁ……とりあえずこっちは男、こっちは女。別の言い方なら、男がオス、女がメス。で、とりあえず後継ぎを作る方法は……男と女が協力しないと出来ないようにしよう。名称は、セックスかな。何か気に入らない名称があれば変えてもいいよ?」


「いいわ、そこまで細かく考えるのは面倒だし。シルヴィアに任せるわ」


「エリザベードがそう言うなら。生物が終焉を向かえた後……えっと、死だっけ。死の後はどうしようか」


「死の後に何も無いのは面白くないわね。シルヴィア、だったら死の後に次の生き物になれるようにしましょう。私が一々“創造”するのも面倒だし」


「うーん……じゃあ、とりあえず細かく分けようか。器と中身に分けて、生物が死の後、その中身が器から抜けて、新しい生物になる為に準備をするとか……どうかな?」


「いいんじゃないかしら」


「なら、器は肉体、中身は魂って呼称しようか。でも死の後に中身……魂が訪れる場所も考えないと」


「なら、死の前に行った行動とかによって裁定をしましょう。良い行いをした生物は、上に。悪い事をした生物は、下に。上には私達が住む予定でしょう?天に作る国だから、私達の住む上の世界は“天国”って名前にしましょう。下は……地の下の国だから、地国。いや、ここはちょっとひねって“地獄”って呼びましょうか」


「でもエリザベード、上には私達が住むからいいとして、下に生物の魂が行くのは下に住むアウローラが嫌がりそうじゃない?」


「どうせアウローラの事だから、面白がって生物の魂の観察でもするわよ。悪趣味なあいつなら。まあ、どちらにしても生物の魂は天国でも地獄でもどっちに来ても新しい生物にどうせなるからね。後で私からアウローラに説明しておくわ」


 エレンは二人の少女の会話に驚きの連続だった。そう、二人が話している内容は正に──“世界の全て”そのものだった。何もかもの始まりの話だ。全てのものが誕生する前の話だ。


 これから、“世界”が始まるのだ。この二人の少女の手によって。


 銀髪の少女──エリザベードがシルヴィアに聞く。


「シルヴィア、あなたにとっては……えっと、人間だっけ?生物の中ではその人間が一番なのでしょう?だから私達と同じ形で描いたのでしょう?」


「うん、そう。まあ考えるのが面倒なのもあるけど、やっぱり一番の生物にはちゃんとした形を与えようと思って。だから私達と同じ形にしたの」


「なるほどね」


 エリザベードとシルヴィアは他の“文明”も次々と決めていく。突き詰めてしまえば、“全て”はこの二人が勝手に造ったのだ。


 シルヴィアがエリザベードに提案をする。


「私達は生物の創造主だから、何か特別な名称を付けようよ。そうだなぁ。……“神”って名乗ろうよ。どうかな?」


「気に入ったわ。そうそう、シルヴィア」


「なぁに、エリザベード?」


「私とシルヴィアの二人だけだと正直大変だと思うから、私達と同じような存在……今決めた名称で言うと、“神”を造ろうと思うんだけど、どう?」


「じゃあその今から造る“神”は“人間”のベース……プロトタイプにしよう。折角の“人間”第一号は、私達の仲間にしようよ。名前は……クラディウス」


「わかったわ。じゃあそのクラディウスには私達と同じ宝玉を上げるとしましょう。私達の力の源の。確か宝玉は一つ余ってるでしょう?」


「うん。ここにあるよ」


 シルヴィアはそう言って手のひらサイズの淡く光る玉を取り出した。シルヴィアは取り出した宝玉を手の平で転がしながらエリザベードに提案する。


「宝玉ってのも名前を変えよう。そうだなぁ。……神器ってどう?私達が使うんだし。どうかな、エリザベード?」


「いいわよ。神器、ね。じゃあクラディウスにはその神器を特別に上げましょう。記念すべき“人間”第一号だし」


 エリザベードがそう言った時、エレンの意識が揺らいだ。


 そろそろ起きる時間のようだ。エレンは夢の続きを見たかったが、自分が目覚める選択をした。私は私でやる事があると自分に言い聞かせて。

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