表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/54

杞憂

「この、科学の最先端を行く街、エリアは、太平洋上に浮かぶ人工島で、太陽光発電、風力発電、水力発電などによって全てのエネルギーをまかなっています。更に、何よりも発達しているのが、医学技術です。末期ガンすらも治すことが出来る、PAO(パーソナル・アーティフィシャル・オーガン)、病人個人の細胞を使った新たな臓器の精製移植、更には事故などで失った身体の一部を復元させるマルチ・リバイブなどなど、あらゆる最新技術をエリアは保有しています」


 スライドショーを使って、老いた女性教師が説明していた。

 それを三十人ほどの生徒が見ていた。

 生徒一人一人の座席に、モニターがついており、それには今のところ何も表示されていない。

 教室にはプロジェクターが無く、スライドショーが表示されているのは、モニターであることが分かる。

 黒板ではなくモニター、それが、この街の学校では普通だった。


「皆さんに今回勉強してもらうのは、個人の細胞を使った新たな臓器の精製の工程です。では、皆さんの机についているモニターを見てください。そこに、具体的な工程が映し出されます」


 生徒たちが、モニターを見ているのを確認すると、女性教師は教卓についたボタンを押した。


「まず、ドナーから提供された臓器に細胞だけをを溶かす薬を使います。そうすると、タンパク質だけが残り、言わば臓器の骨組みだけが残るわけです。それに患者の細胞を移植し、増殖させていきます、すると、一個の臓器が出来上がるというわけです、自分自身の細胞を使うため、これを移植しても、拒絶反応は起こりません、以上がPAOの主な仕組みです。みなさん、質問はありますか?」


 老教師は教室を見渡した。


「ないようなので、次に・・・」


「すいません、遅れました!」


 そんな中、教室にいきなり入ってきた少年がいた。

「神谷君、早く席に着きなさい」

 老教師は、特に起こった様子もなく、淡々と士郎に指示した。

「はい、すいませんでした」

 士郎も特に悪びれた様子もなく、席に着く。

 そして、老教師が説明を続ける。

 しばらく説明が続き、チャイムが鳴った。

 この街の学校でも、チャイムを使うというのは変わらない。

 あの独特の音色も同じだ。


「どうしたの?士郎、遅れてくるなんて」


  授業が終わり、心配そうな顔で聞いてきたのは、士郎の幼馴染のユリアだった。

 ユリアは、綺麗な黒髪で、常人離れした容姿の女の子だった。(容姿端麗という意味で)


「うん、ちょっと追いかけっこをね」


 追いかけっこ?とユリアは、小首をかしげた。


「う、いや、何でも無い」


 士郎は適当にはぐらかした。この一ヶ月、あの少女に追い掛け回されていることを言うのには抵抗があった。

 ユリアは、いまいち、納得できないような顔をしていたが、それ以上は追求せず話題を変えた。


「今日、レナちゃんを学校に迎えにいくんでしょ?」


「うん、転校初日でクラスに馴染めてるか、心配だからね,その確認も兼ねてさ」


 神谷レナ、神谷士郎の妹だ。

 今日からレナは、聖・ルーベルハイスクール初等部に転校生として入学することになっていた。

 ちなみに、彼らがいる学校は聖・ルーベルハイスクール高等部だ。

 つまり、士郎の妹の通う学校は士郎が通う学校の付属校なのである。


「それにしても、心配だな。クラスに馴染めてなかったらどうしよう?ああ、やっぱり今からでも僕が付いていって・・・」


「そんな心配しなくても大丈夫だと思うけど・・・」


「そうかなあ、そうだといいんだけど」


 士郎は、そう言って、天井を見上げた。

 シャンデリアのような照明が光っていた。


「そうだといいんだけど・・・」


 もう一度、ポツリと呟いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ