表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

暗景

 空白の時刻表。

 月。

 曇った硝子。

 丸い街燈。

 一羽のカラスがとまっている。

 一人の老人が視ている。

 振り切り、乾いた交差点を歩き出す。

 店は閉まっている。

 路面にゴミが落ちている。

 これが『ヨノナカ』の実体だ。


 急に雪が降り出す。

 埃のような大粒の雪。

 積もる。積もる。積もる。

 明りも闇も、埋め尽くされる。底では、汚水を吸って重くなっている。

 僕はもがき、泳ぐように進む。

 車が猛スピードで行く。

 コートに、鞄を持つ手に、跳ね除けられた氷塊がぶつかる。

 モータリゼーション。

 歩道は、無い。

 田舎は不便である。

 バスが無いと明日が無い。異邦の者を排除する巧妙な仕組みの一つだ。

 もはや人の住む所ではないな、と僕は思った。いや、それが田舎というものだ、と僕はすぐに考え直した。そんな言葉遊びにも、すぐに飽きた。

 僕は自嘲気味に笑おうとして、失敗した。


 深夜に帰り着いた。

 静かな調度品が迎える。

 グラスを二つ出し、ウヰスキーを注いだ。

 薄い金色の輝き。

 ウヰスキーが創られるまでには、とてつもない手間と歳月がかかっている。一方、その末路はかのようなところである。

 哀れな気持ちをすり替えようと、僕はがらにもなく人類について考えた。

 僕は人間が嫌いだ。身分不相応な強さを持っているからだ。しかし、中には素晴らしい人間もいる。それらを総合して、人間とは「どうなのだろう」と考える。

 秒針の音が響く。

 グラスが重い。Gravity Glass。

 外は吹雪である。

 今夜も答えは見えなそうだ。

 それは云ってしまえば当たり前の事で、鏡も無しに自分の姿を視認できないことと同じだ。

「解かっているさ」

 僕はグラスを置き、ソファに横になった。

 眠りに堕ちる前、後ろ髪を引かれたような気がして、僕はテーブルの上を視た。

「ああ」

 空のグラスと満杯のグラス。過去と未来のように並んでいる。

 それを眺めていると、僕の頭に、ある一つの考えが浮かんで、消えていった。

 人類など、瞬く間に滅亡するのだろう。


 END


お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ