婚約破棄の手伝いをするのは理由がある
名前を借りました
婚約者オシリスが浮気をしている。
私は伯爵家のハトホル。
政略結婚だから愛は無いとはいえ、堂々と浮気するとは…と、呆れた目でオシリスを見ている。
『私は浮気する不誠実な男です!婚約という約束を平気で破る信用できない男です!』
と、世間に大声で宣言しているのに、気付いていないのだろうか?
気付いていないから、堂々と浮気しているんだろうな…
そして、これで10人目の相手だった。
学園に入ってモテ出したから、調子に乗ってしまったのだ。
冷静になって後悔しても、自業自得。
ある日廊下で、知らない男子生徒から話し掛けられた。
「婚約破棄をしたいとは思わないのか?」
「何故ですか?」
私は首を傾げて、声を掛けてきた男子生徒を見た。
話した事は無いが、2学年上の侯爵令息アモン様だ。
「君の婚約者は浮気をしている」
アモン様が言った。
「…貴方の妹ですね」
「そうだ」
私が言うと、アモン様は苦い顔をした。
オシリスの今の浮気相手は、アモン様の妹イシスだった。
「スムーズに婚約破棄できるように協力しよう」
アモン様が、とんでもない事を言った。
「え?貴方に何のメリットが?」
婚約者に浮気された令嬢に、婚約破棄の協力をするのは…
これが小説とかなら、令嬢が好きだから…とかありそうだけど。
「実は君の為じゃないんだ。
妹のイシスが、君の婚約者を好きでね。君と婚約破棄させた後、自分が婚約者になるつもりなんだ」
アモン様が言った。
正解は…越……妹が婚約者を好きだから。
「なるほど…?」
私はちょっと考えてから
「でも、あの人クズですよ?」
と言った。毎月のように、交際が相手が変わるんだが?
「それでも良いって言ったんだ」
眉間にシワを寄せてアモン様が言う。
「良いんですか?」
本当に…?
「本人が良いって言ってるからな〜」
「そうですか…」
特に断る理由もない。浮気男とどうやって婚約破棄しようか考えていたのだ。
それで、アモン様と協力する事になった。
「お前とは婚約破棄する!」
オシリスが叫んだ。
「かしこまりました」
私が冷静に言う。
「え?」
「では、そちらの令嬢とお幸せに」
「あ…あぁ…」
婚約破棄は、呆気なく終わった。
単純に、イシスから『婚約破棄したら?』とオシリスに言ってもらったのだ。
アモン様が、イシスに「婚約したいなら、今ある婚約を破棄させなければ」と教えたのだ。
オシリスは、イシスに言われて、すぐにその気になって、実行した。
とっくに両親には話していた。
オシリスが何度も浮気していて、今回は婚約破棄しそうだと。
私の両親から、オシリスの両親に話が行き、いつ婚約破棄を宣言されても良いように、準備をしていた。
オシリスが婚約破棄を宣言したら、オシリス有責で婚約破棄をする、と。
オシリスは、伯爵家の嫡男だったが、浮気して婚約破棄をした事により廃嫡され、領地の片隅の屋敷に閉じ込められる事になった。
オシリスが廃嫡されて、自分は関係ないと逃げようとしたイシスは捕まり、オシリスと一緒に閉じ込められた。
侯爵家も、婚約者がいる男に擦り寄る非常識な娘を勘当したのだ。
どうやら、かなりの我儘娘だったらしい。それに、何人もの婚約者がいる令息に声を掛けて、トラブルが絶えなかったらしい。
良い厄介払いができた、と、感謝されたくらいだ。
「婚約が無くなったお詫びに、私と婚約しないか?」
アモン様が言った。
「何故ですか?」
私は、アモン様と話す時、たいてい首を傾げている気がしてきた。
「君と話しているのは苦痛じゃない」
アモン様は真顔で言った。
「そうですか」
「もっと一緒にいたいと思ったんだ」
「そうですか…?」
私は戸惑っている。突然どうした?
「妹のせいで、君の婚約が無くなったからね」
「気にしないでください。浮気男と結婚せずに済んで、感謝しています」
「そうか…」
アモン様は1度黙り
「君と、もっと一緒にいたいんだ」
と、言った。
「しばらくは…婚約は…」
「婚約破棄したばかりだからな…では、友人からで」
アモン様は引かなかった。
「友人?」
「お互いの事を知らないだろう?もし、親しくなって、それでも婚約は考えられないなら…その時に考える」
考える?
「諦めるではなく?」
「君に惹かれているからな。諦めたくはない」
アモン様は、やっぱり真顔だ。
「え…?」
結局、アモン様の粘り勝ちで、友人から始める事になった。
ちなみに、半年後には、婚約する羽目になった。
私は逃げられなかった。
アモン様は、妹の為という事にして、私とオシリスを婚約破棄させ、私と婚約したかった、と供述した。
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