紅い月
紅い月
任務になれば途端にスイッチが入れ替わり、豹変する。
冷酷に、無常に、こなす。
慈悲を求める声あれど、非情さを求めるから。
非常を日常にして。
答えず、応えず、堪えず。確実に『処理』する。
単調に『作業』する。
殺すなんて簡単だ。実に容易。
ただ、凶器を翳し、当て、動かす。それだけの動作。
血が溢れ出す。赤い噴水。
どぴゅ どぴゅ どぴゅううううぅぅぅ
夜に浮かぶ月が暗い空間を照らし出し、曝け出す。
紅い、紅い、水たまり。
興奮に、恐怖に、身体が意思に関係せず震える。
「帰ろう」
声が響いた。
誰もいない、場所に。
優しく抱きしめられて、体温を感じる。
心臓の音が聞こえる。
生きてる証
「大丈夫。大丈夫だから……」
繰り返し言われる言葉に、安心をもたらす声に緊張が、抜ける。
意識は暗く、閉ざされて、思考は停止する。
「まだ、壊れないでね」
響く声は冷たく、
「君にはまだ、働いてもらわないといけないんだから」
出される言葉は残酷
俺はそれを知らない。