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5人の名探偵  作者: 夢茫
5/5

5 直感探偵オカルト伯爵令嬢 (しいな ここみ)

 電話を受けた時から会う気は失せていた。

 しかし相手がどうしても推理が聞かせたいというので、仕方なく西園寺は直接会うことになった。

 電話で済ませようとはしたのだが、どうしても事務所へ伺いたいと相手が言い張り、根負けしたのである。



 事務所の扉を4回ノックし、西園寺が『どうぞ』と言うよりも早くカチャッとそれを開けて入ってきたのは、青基調の豪華なドレスに身を包んだ、年齢不詳の女性であった。永遠の19歳──否、永遠の中二病という言葉がぴったり似合う。


「お招きいただき光栄でございますわ。わたくしが先日お電話しました──直感探偵オカルト伯爵令嬢シーナ……」


「いいから、座って」

 面倒臭そうに西園寺が言うと、令嬢はそそくさと、ハッスルするような挙動とともに、子どものようにソファーに腰を下ろした。


「松露子くん、紅茶色の水をお出しして」


「あら、先生。失礼ですわよ」


 そう言って立派な紅茶を持ってきた松露子に、西園寺は『もったいねー』と思う。


 目の前の伯爵令嬢を自称する女は、どう見ても素人だ。それどころか頭がおかしいようにしか見えない。

 知性を感じないのだ。まるで小動物だ。本能と自分の趣味趣向のままに生きているとしか思えなかった。


「それで……」

 ぬるい水を口に運びながら、西園寺が面倒臭そうに言った。

「あなたの推理とやらを……なるべく手短にお願いします」


 伯爵令嬢は嬉々として、最短で推理を披露した。


「こういうのはですね、『誰が犯人だったら一番面白いか?』と考えますと、すぐに解けるものですのよ? つまり……、犯人は貴方です!」


 ビシッと西園寺を指差す令嬢。


「ありがとうございました。お帰りください」


 疲れた目をして、ぬるい水の入ったカップを口に当てたまま、西園寺は言った。


「失礼しましたわ! 今のはもちろん、冗談です」


 コロコロコロと笑う令嬢に、疲労が西園寺の全身をだらつかせる。


「真面目に申し上げます」

 令嬢のふざけたような表情が、急に顔から消えた。

「西山さまは犯人ではありえませんわ」


「ふーん? どういう理由で?」


「動機が弱すぎますもの! わたくしも二股どころか三股も四股もしたことがありますけど、全員を愛していたとはいえ、五股の事実を隠蔽するために誰かを殺そうなどとは思いませんでしたわ。だって愛していたんですもの!」


「愛と憎しみは裏表とか言いますよ?」


「それそれ! それだったらわかるんでございましてよ!」

 無表情になった令嬢の顔にいきなりニパァとした笑いが花開いたので、西園寺は気持ち悪さに水を吐き出しかけた。

「愛憎という話でしたら、西山さまが誰かを殺すという可能性はございます。……ですけど、警察が言うには『三角関係の清算』──清算ですって!? そのために関係のない方たちも巻き添えに──!? そんなことをするのはキ◯ガイですわよね! おじさま、西山と実際にお会いになって、彼をキ◯ガイだと思われまして!?」


「いや……」

 接見の時の印象を思い出しながら、西園寺は答える。

「むしろそれとは程遠い……気が弱そうな常識人に見えたな──」


「警察の見立てはあまりに不自然な物語じみていますわ」

 令嬢は紅茶を口に運ぶと、言った。

「……あら。これ、闇市で売ってる粗悪品……わたくしがいつも飲んでいるのと同じものですわ」


「推理を続けてくれ」

 あまり紅茶の話はしたくない西園寺が先を急かす。


「警察のお話も不自然なら、西山さまのお話も不自然ですのよ」

 ティーカップをソーサーに戻すと、令嬢は話を続けた。

「むしろ警察が作った不自然な物語に自白を合わせてらっしゃるだけですわ! おかわいいこと!」


「確かに……。それは俺も思っていた。農薬を入れる器など、処理が杜撰すぎるし、証拠品はすべて焼却されていて、酒瓶以外は一切残っていない」


「その上、ぶどう酒の栓についていた歯型が西山さまのものと一致しただなんて……、組長さんが開けたとご自分で証言しているにも関わらず……これこそ警察が物語を勝手に作ってることの最たる証拠ですわ!」


「あら」

 松露子が嬉しそうな顔をして、3センチほど跳ねた。

「そこに気がつくなんて意外とまともな方ね。そうよ! 警察はただ、手っ取り早く事件を解決してしまいたいだけだわ」


「都合がいいことに容疑者が自分がやったと全面的に認めちまってるからな」

 西園寺が言った。

「そんなことはわかってるんだ。問題は、なぜ、西山悟が頑なに犯行を否認しないか、だ。犯行の具体的な手口をあいつは何も言ってない。ただ警察が言うことに合わせているだけだ」


「誰かを庇ってらっしゃるのね」


「そうだろうな」


「おかわいいこと」


「そういうのいいから。誰を庇っているんだと思う?」


 伯爵令嬢は懐からカチューシャを取り出し、宇宙人のような二本の触角のついたそれを頭に装着すると、言った。


「わたくしの直感を申し上げますと……」

 きゅぴーんと目を光らせ、ズバリとその名を口にする。

「組長さんのお母様──大岩香代子さんです!」


 あらら──と、西園寺は思わず自分の顔を半分、てのひらで覆う。

 前のおばちゃん安楽椅子探偵と同じかよ、まさかパクったんじゃねぇだろうな、と内心思いながら、聞いてみた。

「根拠は?」


「わたくしの直感です!」


 オカルトかよ──と思いながらも、自分が西山の無罪を確信したのも長年のカンだったなと気づくとツッコめなかった。


「それで? 西山が大岩香代子を庇う理由は?」


「大岩香代子を……というより、集落を庇ってらっしゃるのでしょうね。香代子さんは組長の母親。物静かで、弱々しい存在のように見えて、いわば村の象徴みたいな存在ですわ。それを守ることは、いわば村を守ること──。西山さまが『誰かを庇ってらっしゃる』と先程は申しましたけど、村の圧力が彼をそうさせたと言ったほうが正しいかもしれませんわ。村中で香代子さんを庇っているのでふ!」


 語尾、噛んだな──

 そう思いながらも、西園寺は真面目な表情を崩せなかった。


「村中で香代子さんを庇っているのです」

 言い直しながら、伯爵令嬢は続ける。

「その最たる証拠といえるのが、時間証言の『一斉修正』にあります。複数人が同時に証言を変更し、しかも変更後は、『酒が届いたのは、西山が来る直前』という、警察に都合のいい時間に揃っています。これは村中で示し合っていることの証拠に他なりませんわ!」


「ふむ……。それで、西山が、香代子の身代わりになった理由は?」


「彼がお優しいからですわ」

 

「なるほどな」

 なんか前の探偵さんと一緒だな、と思いながら、西園寺がさらに聞く。

「大岩香代子の動機は?」


「嫁の松子さんへの怨恨がよほどお強かったのでしょう。ですけど、松子さんだけを殺害したのでは、恨みをもっていた自分だけが疑われると思った──集団中毒事件なら、葉を森の中に隠せますわ。まぁ……、女の浅知恵で起こした事件を、村中で隠そうとしたといえますわね」


 確かに──

 本当に『自由に毒を入れられた人物』は誰か?

 5時間、酒は組長宅にあった。しかも、土間に置かれていた。

 管理者である組長の妻・松子は死亡している。

 嫁姑仲が最悪なのは周知の事実だ──

 辻褄は合っていると思った。

 しかし、問題は──


「ありがとうございました。参考にします」

 ぺこりと丁寧に頭を下げると、西園寺は立ち上がり、出口を手で示した。

「お帰りはあちらです」


「お役に立てて、嬉しいですわ」

 伯爵令嬢も立ち上がると、優雅なカーテシーを繰り出す。

「それではごきげんよう」


「ところで──」

 西園寺がずっと気になっていたことを彼女に聞く。

「戦後、財閥は解体され、日本に貴族制度はなくなったはずですが、貴女のその格好は、一体──?」


「あぁ……」

 伯爵令嬢は頬を赤らめ、答えた。

「これはコスプレですわ」


「こすぷれ?」


 聞き慣れない言葉に首をひねっている西園寺に、くすくすと意味不明の笑いを横顔で残し、伯爵令嬢は部屋を出ていった。


「ふふふ」

 直感探偵オカルト伯爵令嬢がいなくなると、松露子が、西園寺も思っていた彼女の推理の問題点に、ズバリとツッコんだ。

「前のおばちゃん安楽椅子探偵とほぼ一緒の推理でしたね。むしろ犯人の動機が前のひとよりも安易で、劣化版を聞いているようでした」


 それだ、と西園寺は思った。


 なんだか時間の無駄だった。

 同じ推理を二人続けて聞かされたような──


 ばん! と扉が開き、真っ赤な顔をした伯爵令嬢が再び顔を覗かせると、吠えるように言った。


「わたくしの直感ですと、今、お二人でわたくしの悪口を言ってらっしゃいましたわね!? ぷんぷん!」



 ▼しいな ここみ さんの後書き

じつは事件の内容が私の悪すぎる頭ではチンプンカンプンでしたので、推理は全面的にAIさんにお願いしました。

AIさんの推理を参考に、私は探偵のキャラを描くことに専念しました。

AIさんの推理がかわかみれいさまの推理とほぼ同じだったので、度肝を抜かれました。かわかみさま、すげぇ!

ちなみに探偵キャラのモデルは私……ではなく、ココミック星の女王シーナ・ド・ココミックさんです。


 ▼Ajuの後書き

うおおおおお! きました! さすがの速さです。しいなさん。

しかし‥‥逃げましたね?(^▫︎^) AI に。。。

いや、いいんですよ。別に。創作方法はなんでもアリですから。

直感、なかなかすごいです!


ところで。やらかしましたね?(←容赦無く突っ込むAju)

昭和30年代に「中二病」なんて言葉、ありましたっけ?

昭和30年代に「コスプレ」なんてありましたっけ〜〜〜??? (^皿^)

ファーストと並んで新たな謎が現れてしまいました。

この時代背景と乖離したようなピースが突如現れてくるのは、なぜ?

これって‥‥榊さんと並んでアンカー候補の要素だと思いますが、どうでしょう?

(ややグレーゾーンですが)

参加者の皆さん、どう思いますか?

しいなさんは榊さんとアミダやるべきでしょうか?

しいなさん以外の参加者の方、ここの感想欄に「YES」or「NO」で投票を書き込んでください。

Ajuは「YES」です。(^◇^)/

まあ、こういう面白さもないと『駅伝企画』の行き先不明感の楽しみも減りますからねー。。(^^)/


次はアミダでAを選んだ5人目の「名探偵」、かぐつち・マナぱさんです。

締め切りは2月2日。

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
流石女王さま! 昭和30年代とは別の時空を生きているんだな! ……………で、いいのかな?(;^_^A
この令嬢、勘が凄いな……とか思っていたら、四股までしたことがある、だと……!?なんてやつだ! ラストがさらに楽しみですわ!と、最後を書く誰かさんにプレッシャーをかけてみる。
まず。主催者様アンケートの回答は「YES」!  大沢在昌さんの「売れる作家の全技術」という本に、「ぎりぎりまで自分を追い込む」という心得が書かれていたので、しいな ここみ様がもっとギリギリまで追い込…
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