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刀と銃

作者: 長万部三郎太

大衆娯楽のなかで映画が台頭してきた20世紀。

興奮冷めやらぬ様子で帰宅した兄弟は、早速観てきた映画の真似事に興じた。


「やい、先に抜け」


エアガンをズボンに差し、ガンマンに扮した兄が挑発する。

弟も負けじと反撃。


「アニキこそ、先に抜け!」


この西部劇お馴染みのやり取りには諸説あるが、簡単に言うと『自発的な動作』よりも『反射的な動作』のほうがわずかに早いため、相手が抜くのに反応して銃を撃ったほうが勝つという理屈だという。もちろん、こちらの弾が当たればの話になるが。



ここではっと気づいたのは弟。


「ねぇ、そういえば時代劇でも似たような台詞が出てこなかった?

 抜け、抜け~い! みたいな感じでさ」


先月観に行った『KUROSAWA』でも、追い詰められた悪役がそう言い放っていた。


「あれは武士道だ。相手が刀を抜けば、正当防衛が主張できるからじゃないかな」


兄の解説にある程度の納得感は得られたものの、弟はまだ少し引っかかるようだ。

しばし考えたあと、再びこう訪ねた。



「それにしても……。

 この台詞が出た時って、刀も銃も先に抜いたほうが負けている気がする」



「敵に先に抜かせて、不利な状況から逆転勝ちしてこそ主人公だからだよ。

 いわゆるハリウッドの “暗黙の了解” ってヤツかな」



さすが一日の長。兄のエンタメに対する鋭い考察に弟は感心するばかりだ。

しかし、弟が憧れるハリウッドスターは違った。



「でも、セガールは刃物を持って背後から不意打ちもするし、銃も先に撃つよね?」



「それはきっと、 “沈黙の了解” ってヤツだろうな」





(筆休めシリーズ『刀と銃』 おわり)

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