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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
6章 ケモミミ少女、冒険者になる
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レナの家族の謎

 マーキス家の所有する山の中でハルトとループスはレナのお目付け役としてクエストをこなしていた。レナの想像を絶するほどのお転婆ぶりに二人はただ振り回されるばかりであった。


 「この木になる木の実が美味しいの。採ってくれる?」


 レナはとある樹木を指さしてハルトたちにその実の採取を要求した。行動力もさながら、人使いの荒さもかなりのものであった。


 「しょうがないなぁ……」


 ハルトは懐から銃を取り出し、弾を一発詰め込むと高く伸びた木の上に銃口を向けて引き金を引いた。弾から放たれた魔法は枝同士の隙間を通り抜け、衝撃の余波で枝についていた木の実を次々と地上へと落とした。

 ハルトが起こした一連のアクションをレナは目を輝かせながら見ていた。


 「ほら。これでいいか?」

 「すごいわ!今のどうやったの?」


 レナはハルトの使った術に興味津々であった。ハルトは子供には理解できないだろうと諦観しつつも種明かしをすることにした。


 「お姉ちゃんは魔法使いなんだ。で、これは魔法を使うための道具」

 「それを使えばレナにも魔法が使える?」

 「どうだろうなぁ。やってみるか?」

 「やる!」


 ハルトは銃の中を折り、空になった弾薬を排出して新しい弾を一発詰めると持ち手をレナに握らせると反動が生じる可能性を考慮し、彼女の後ろに着いて一緒に持ち手を握った。弾の推進力にはハルトの魔力を使用しているため、レナ一人では使用できないことを隠すためである。


 「撃ちたい場所をしっかり狙って……あとはこの引き金を指で引くだけだ」


 レナの後ろに着いて一緒に照準を合わせると、ハルトはレナに追従するようにゆっくりと引き金を引いた。発射の反動でレナがほんのわずかに後退するのをハルトが支え、二人で弾道を見守る。

 発射された弾は再び枝の間を通り抜け、衝撃の余波で赤い木の実を無数に落下させた。


 「すごい!本当にレナにもできたわ!」

 

 落ちてきた木の実を拾い集めながらレナはまた目を輝かせていた。自分にも魔法が使えたことが信じられないといった様子である。


 「な、すげえだろこれ」

 「レナも魔法使いになれるかな?」

 「どうだろうなぁ。レナちゃんに魔法使いの血が流れてればなれるんじゃないかな」


 ハルトは適当に聞き流しながら答えた。魔法使いになれるかどうかはその血統によって決まるものであり、才能や努力などではどうにもならない先天的なものであった。


 「はいどーぞ!これ美味しいのよ!」


 レナは両腕いっぱいに拾い集めた木の実を持ってハルトとループスに渡そうと試みた。今のところ発言や行動に嘘はついていないことから偽りはないと判断したハルトはその中の一つを受け取った。

 木の実の果肉は柔らかく、ハルトの握力でも本気を出せば形を変えられそうなほどであった。木の実から仄かに甘い匂いを感じ取ったハルトは木の実に歯を立ててその果肉を噛みちぎった。


 「どう?美味しい?」

 「うん。甘くて美味いな」

 

 ハルトは初めて口にした木の実の味を素直に称賛した。その様子を見ていたループスは木の実の匂いを何度も嗅ぐと恐る恐る手を付けた。


 「甘いな……」


 ループスの口の中にも香りに違わぬ甘みが広がった。実は彼女はハルトと違って甘いものが少し苦手であった。


 「美味しくなかった?」

 「いいや。ただお姉さんはあんまりお腹がすいてないからこれ一つで十分かな」


 反応があまりよくなかったのを察したのか心配そうに覗き込んだレナに対してループスは遠回しに遠慮する姿勢を見せた。空腹度合いについては完全に嘘であったが相手の善意を無碍にするようなことはできなかった。


 「ふわぁ……!」


 木の実を拾い食いして小腹を満たしたレナは大きな欠伸をすると木陰に腰を下ろすとそのまま木にもたれかかって寝息を立て始めた。彼女は息を入れることなく溌溂に動き回っていたのもあって体力を無意識に消耗していた。

 ハルトとループスは寝息を立てるレナの傍に寄り添い、彼女が目を覚ますまでしばしの休息となった。


 「恐ろしい子供だな」

 「まったくだ。今まで見てきたどんな子供よりも破天荒だ」


 出会ってから数時間、二人はレナを見ながら戦慄していた。行動原理が理解不能、支離滅裂で数秒先に何をしているかまったく予想ができない。

 大人しくなるのはそれこそ眠っているときぐらいであった。


 「ママ……」


 寝息を立てているレナは寝言を零した。どうやら夢の中で母親を呼んでいるようである。しかしその声はどこか寂しそうであった。


 「なあハルト、この子のお母さんってどんな人なんだろうな」

 「確かに気になるな。そういえばそれっぽい人を見てない……」


 ハルトはだんだんと違和感を覚え始めた。レナの母親の姿を見ていない、それどころか世話係と思わしき人の姿も見ていない。

 この広大な屋敷の中にはシーラとレナ以外の誰も住んでいないようであった。



 ハルトとループスはレナの世話を焼く中でマーキス家にどこか胡散臭さを覚えるのであった。

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