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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
6章 ケモミミ少女、冒険者になる
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昼間の仕返し

 冒険者となったその日の夜、ハルトとループスは早速冒険者の特典を利用して割安でクラフテアの宿を取った。二人はこの街でのこれからについて話をしていた。

 

 「依頼は明日からでも受けられるわけだがどうする?」

 「もちろん受けに行く。だが何を受けに行くかだな」


 二人は明日から依頼を受ける気満々であった。しかしループスには一つ懸念していることがあった。


 「討伐や護衛はまだ無理だろうな」


 ループスの懸念事項、それはほぼ確実に受けられない依頼が存在することであった。討伐ならまだしも、護衛の依頼はまだ冒険者としての実績がない二人が受けられるはずがなかった。

 だがそれ以上に大きいのは昼間に絡んできたガラの悪い冒険者たちの存在であった。ロビンたち曰くクラフテアの冒険者ギルドに舞い込んでくる討伐や護衛任務は彼らが総なめにしているようであり、昼間の一件もあってハルトたち、特にループスとの関係は最悪である。そんな彼らから依頼を奪いに行くのは流石に気が引けた。

 

 「報酬高そうなんだけどなぁ……」

 「こればかりは仕方ない。また明日掲示板を見て考えるしかないだろう」 

 「だな」


 ハルトたちは明日のことは明日考えることにして話題を切り上げた。冒険者としてのスタートは順風満帆……というわけにもいかず不安も多かった。


 「まあ、それはそれとしてだな」


 ループスはハルトの腕を掴むとそのまま腕を引っ張って自らに密着するように引き寄せた。またいつもの寂しがりから来る触り癖かとハルトは考えていたがどうも今回は少し違うようであった。


 「昼間はよくも俺の胸を触ってくれたな」

 「ふやっ!?」


 ループスは恨み節と共にハルトの耳に手を触れた。不意に耳に触れられたハルトは素っ頓狂な声を上げ、身体は反射的に伸び上がる。ループスと距離を取ろうと足掻くがループスの強靭な腕力にホールドされて脱出は不可能であった。


 「やり返される覚悟はあったんだろ?」

 「んやっ!?あの時謝ったじゃん……」

 「ダメだな。俺は絶対にやりかえすって決めてたから」


 ループスは両足でハルトを挟み込んで逃げ道を塞ぐと存分に彼女の耳をいじり倒した。普段はハルトに握られている主導権もこうなってはその持ち主が見事に逆転している。

 ループスが指を動かすたびにそれに連動してハルトの耳はピコピコと動き、時々跳ねるように揺れる尻尾がループスの脇や背中をくすぐった。


 「んんっ……!やっ……」


 ハルトは身をよじりながら嬌声を漏らした。普段の強気な振る舞いからは信じられないような弱弱しい声にループスは諧謔心をそそられる。


 「許してほしいか?」

 「……ッ!?」


 ループスが誘うようにハルトの耳元でそう囁くとハルトは小刻みに何度も首を縦に振った。すでにハルトは耳を触られ続けたことで高揚感と羞恥心が入り混じって心がどうかしてしまいそうであった。

 そしてそれはループスにとっては周知のことであり、それを利用してハルトの心理を掌握したも同然であった。

 

 「じゃあ今日抱き枕になってくれたら許してやる」


 ループスはスキンシップをやめるための条件をハルトに提示した。その条件はハルトにとってはかなり馴染み深いものであった。ループスはこれまで何度もハルトと密着した姿勢で夜を過ごしていたのである。しかも夜中に目が覚めたときに距離を離しても朝にはまた密着している。

 要はいつもやっていることに大義名分をつけているだけであった。


 「じゃあそれでいい……」


 ハルトはどうせいつものことであると開き直って条件を飲んだ。いずれにせよ意地を張ってこのままま耳を触れ続けたら本当にどうにかなってしまいそうな状態であった。


 

 「明日もまた頑張ろうな。おやすみ」


 ループスはハルトを後ろからがっちりと抱きしめると上機嫌な様子でそのまま眠りについた。


 (うぅ……どうしてこうなった……)


 ハルトはループスの腕に拘束されて身動きがとれないまま一夜を過ごすのであった。

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