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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
6章 ケモミミ少女、冒険者になる
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最悪な冒険者デビュー

 互いの口車に乗り、冒険者登録をすべくハルトとループスは最寄りの街クラフテアへと訪れた。景観などには目もくれず、二人は街の冒険者ギルドを探した。


 「この街の冒険者ギルドを探している。どこに行けばいいか知らないか?」

 「知ってますよ。依頼を出しに行くのですか?」

 「いや、冒険者になりたくてな」


 ループスが道中、通りかかった女性に冒険者ギルドへの道順を尋ねると女性は驚いたような表情を見せた。まるで冒険者ギルドに依頼以外の用がある人物を見るのが珍しいと言わんばかりであった。


 「俺何か変なことでも言ったか?」

 「さぁ?ただ女の冒険者ってあんまり聞かないから珍しいんじゃないか?」


 ループスたちは女性の眼差しの意味を理解できなかった。一方ハルトは冒険者志望の女性というのが珍しいのだろう程度に解釈していた。


 「この通りをまっすぐ行けば青色の屋根をした大きな建物があります。そこが冒険者ギルドですよ」

 「そうか。教えてくれて感謝する」

 「くれぐれも、お気をつけて」


 女性は意味深な言い回しを残してループスたちと別れた。二人は顔を見合わせながら女性の言葉通りに通りをまっすぐに進んでいった。何分か進み続けると、そこには女性の言っていた通りの青い屋根をした大きな建物があった。どうやらここが冒険者ギルドのようである。

 ハルトたちは冒険者の肩書に対する期待を胸に二人で建物の入り口の扉を開いた。


 入り口を開くと、そこには冒険者たちが思い思いに時を過ごす空間があった。

 たむろしてくつろいでいるロビー、依頼が張り出された掲示板、それとは別に設けられた窓口。内部を見渡して自分たちが向かうべき場所が窓口であることを見抜いたハルトはループスの手を引いて窓口へと足を運んだ。


 窓口にたどり着くまでの間、二人は冒険者たちからの注目の的となった。二人は視線を浴びることはすでに慣れていたものの、ハルトの耳には自分たちを揶揄する声が聞こえていた。


 「おい嬢ちゃんたち。貴族のペットにしてもらう依頼ならここに来るべきじゃないぜ」

 

 中にはわざわざこちらに聞こえるように野次を飛ばしてくる男連中もいた。それに同調して笑う輩までいる始末である。

 風紀の悪さと自分たちへの悪口に腹を立てたハルトは懐から銃を取り出し、弾を最大まで装填すると無言で野次の聞こえた方へと発砲した。弾は野次を飛ばした連中の横を一瞬で通り抜け、その向こうにあった壁を容易く貫いて隙間風が通るほどの穴をあけた。

 弾の軌跡から迸る紫電状の魔力の余波を受けて全身に痺れを感じた連中はそれに気圧されてすごすごと退散するように場所を変えていった。

 

 「気にすんな。さっさと登録しようぜ」


 ハルトは銃を懐に納めると再び窓口へと向かった。あんな連中が常駐する場所にしばらく通い詰めることになるのかと思うと早くも先が思いやられた。


 「冒険者登録をしたいんだが手続きはここでやればいいのか?」

 「はい、冒険者登録ですね。ここで合っていますよ」

 

 ループスが窓口に問い合わせると受付嬢は穏やかな物腰で対応した。やり取りに参加しようとハルトはループスの背に飛びついて肩から顔を覗かせる。


 「今回冒険者登録をされるのはどちら様ですか?」

 「俺とコイツだ」

 「二名様ですね。今から準備をいたしますので少々お待ちください」


 ハルトたちは受付嬢から待機を言い渡された。どうやら登録には少し時間がかかるようであった。待ち時間を潰すべく二人はロビーの空いている席に腰を下ろした。

 するとどこからともなく屈強な男が数人こちらへと接近してきた。さっきの体験からハルトはすぐに嫌な予感を感じ取る。


 「お前たち。登録も済んでないのにここに座るんじゃねえよ」


 男から発せられたのはさっきのとほぼ変わらないレベルの理不尽な物言いであった。

 それに対して今度はループスが食い下がった。ハルトはループスの後ろに隠れるように距離を取った。


 「済んでなければどこで待っていればいいんだ」

 「知るか。立って待ってりゃいいだろ」


 男は無理やり席から退かそうとループスの腕を掴もうとするがループスは即座にそれを払いのけた。男たちはループスたちに対して明らかにナメた態度を取ってきていた。


 「随分と生意気じゃねえか。あんまり生意気だと女だろうが容赦しねえぞ」


 腕を払いのけられた男は逆上してループスに凄みを利かせるがループスは動じない。喧騒な雰囲気を感じ取ってか外野が距離を置いて状況を静観し始めていた。


 「今のは『ケンカを売られた』と認識してもいいんだな?」


 ループスは確認を取るように男を睨み返すと立ち上がって腰に下げた剣に手をかけた。


 「上等だ。どっちが上か思い知らせてやる」


 男もループスの動きを見て剣を抜いた。いつ戦いが始まってもおかしくない状態であった。


 「ハルト、ちょっと下がっててくれ」

 「言われなくてもそうするっての」


 ループスが警告するとハルトは身を翻してテーブルの裏へと身を隠した。銃を抜き、自分に火の粉が降りかかったときに払えるように体制を整える。


 「こんのクソアマがぁ!」


 男は悪態と共に剣を振りかぶってループスへと襲い掛かった。対するループスは剣を抜き、魔力を込めて刀身を白熱化させると男の剣とその刃を交わらせた。


 「……ッ!?ハァ!?」


 男の持っていた剣はループスの剣に触れた瞬間に溶断され、持ち手から離れた刃が床に落下して金属音を響かせた。

 切り結ぶことすらなく一方的に剣を折られたことに対して男は驚愕の声を漏らした。

 

 「で、どっちが上だって?」


 男の剣を折ったループスは白熱化したままの剣の切っ先を男の眼前に突きつけた。このまま押し当てれば人体の貫通も容易であった。

 ナメてかかった相手に圧倒的な力の差を見せつけられ、その様を他の冒険者の前で晒してしまった男はこの上ない屈辱を味わう羽目になったのであった。


 「あのー……冒険者登録の準備ができたのですが……?」


 頃合いを見計らっていたのか、窓口の受付嬢がおどおどした様子でハルトたちに声をかけに来た。それを受けたループスは剣の白熱化を解除し、魔法で水を生成して刃を冷やすと滴る水を振るい払って鞘に納めた。


 「退け」


 ループスは耳を伏せて不機嫌そうに男たちを睨み返した。彼女の持つ剣に切り伏せられる可能性を危惧したのか、難癖をつけに来ていた男たちはすっと引き下がって道を空けた。



 「行くか」

 「……あぁ」


 ループスは呆然とするハルトの手を引いて冒険者登録の手続きへと向かった。ハルトはループスの物怖じしない胆力と腕っぷしの強さを改めて見直したのであった。

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