ループスの金策を求めて
今回から第六章が始まります。
ループスが加わったハルトの旅の行方は……
ループスを加えたハルトの旅の道中、二人はとある共通の事項に頭を悩ませていた。
「稼ぎが……ない」
二人の共通の悩み、それは収入が少ないことであった。
決して稼ぎがないわけではない。二人の収入のほぼすべてはハルトが道中でこなしてきた機械修理によるものである。ただ仕事数そのものが少なく、収入以上に支出が多いのが現状であった。
「まずいな。このままだと近いうちになくなる」
二人でソルシエールを出発したときには十数万あった資金も気が付けば半分ほどになっていた。旅を始めて数か月、訪れた方々でループスが様々な理由で散財していたのが原因である。
「どうするよ?このままじゃ俺たち二人揃って根無し草だなぁ。まあそうなれば俺はお前を置いてまた一人で旅するんだけどな」
「そんなこと言わないでくれよ!?」
ハルトがわざとらしくループスを煽るとループスは必死になって縋りついた。金銭感覚が庶民とかけ離れている上に自身の収入がない彼女にとってハルトがいなくなることは自身の破滅を意味していた。
そして何よりも寂しがりの彼女は自分が独りぼっちになってしまうことに耐えられなかった。
「じゃあ自分でお金を稼ぐ方法を考えてみるんだな」
ハルトに自分の収入を確保するように忠告されたループスはどうにか自力で収入を得る手段を模索した。しかし純粋な身体能力と魔法以外に技能のない彼女は手に職をつけられるような人物ではなかった。
「わからない。いったいどうすれば……」
「男相手に媚でも売ってみるか?動物好きな奴相手なら耳とか尻尾でも触らせとけばいいし、そのデカい胸でも触らせればたいていの奴は喜ぶだろ」
ハルトはループスの背後を取り、両足を組みつかせて背中にしがみつくと正面に手をまわしてループスの豊満な胸をまさぐった。無論本気でそんなことをさせるつもりなど毛頭ない、ループスに決起を促しているつもりであった。
「揉むな!俺だって望んでこんな外見になったんじゃないんだぞ!」
「それはお互い様だろう」
背中に張り付いたハルトを引っぺがそうとループスは抵抗した。
そんな時、彼女はハルトと再会して間もないころに交わしたやり取りのことをふと思い出した。そしてそこにはループスが今するべきことへの『答え』があった。
「冒険者だ!冒険者になればいい!」
「冒険者?」
ループスの言葉に耳を疑ったハルトは一瞬のうちに振りほどかれ、背中を地面に叩きつけられた。
「前に言ってたよな?冒険者になれば稼げるんじゃないかって」
「えっ。まあ確かに言ったけどアレはその場のノリで……」
「そんなことはどうでもいい、冒険者登録をするぞ。もちろんお前も一緒だ」
ループスは腰を擦るハルトの首根っこを後ろから掴むとそのまま次の街へと突っ走っていった。特別な技能がなくても依頼をこなせば報酬を得られる冒険者になればループスでも収入を得られる可能性があった。彼女は一抹の希望に賭けたのであった。
「えーっ!?俺もやるのか!?」
「当然だ。ちなみにだが冒険者になれば割引になる宿があるらしいぞ」
「よし、やるか」
ハルトは最初は冒険者になることに対して面倒くさそうな反応を見せたものの、ループスから割引の情報を耳打ちされると一瞬で手のひらを返してそれを快諾した。基本的に決まった拠点を持たない彼女にとって日々の宿代が安くなる可能性があるのは大きな利点であった。
「さっきはよくも俺の胸を揉んでくれたな。あとでお前の耳をまさぐってやるから覚悟しておけ」
「ひえっ……すみませんでした」
道中、ループスは脅しをかけるように睨みを利かせながらハルトに宣告した。ハルトにとって彼女の耳は尻尾以上に敏感な部位であった。それについてはループスも理解しているだけにさっきのことをかなり根に持っていることがハルトには容易に想像できてしまった。
こうして二人は冒険者になるべく、冒険者ギルドのある街へと向かうのであった。
次回、ハルトとループスが冒険者デビュー!?
二人の旅は早くも波乱の予感が……




